大動脈解離 は体の中心にある太い血管である大動脈に亀裂が入り、その亀裂に血液が流れ込むことで血流が変化する疾患で、生命を失うこともある危険な病気です。突然起こる激痛や、全身のさまざまな部位の虚血症状、さらにはショック、突然死など多彩な症状が起こります。
大動脈解離とはどんな病気?
大動脈解離とは
大動脈解離(だいどうみゃくかいり)は大動脈(心臓から全身にむかう動脈血(酸素や栄養が含まれています)が流れる太い血管で体の中心にあります。この大動脈からより細い動脈に分岐して全身に動脈血が流れていきます。
高速道路で例えると東明・名神高速道路、鉄道であれば新幹線に該当します)の血管の壁が裂けて亀裂が入り、血管壁に隙間ができる病気です。
動脈血がこの隙間(専門用語で偽腔(ぎくう)と呼ばれます)に入り込むために、本来全身に流れるはずの血流が低下します。その結果、血流が低下した部位が虚血(きょけつ。虚血についての詳細は他項をごらんください)に陥るために、さまざまな症状が起こります。
また血管が裂けることによる痛みや、破れることによる出血、そしてショックも起こる場合があります。したがってしばしば生命を失う危険がある重篤な病気と言うことができます。
また大動脈解離は突然発症することが多いために、突然死の原因となります。ちなみに医療関係者はしばしばこの病気のことを“かいり”、あるいは英語表記であるAortic Disection(アオルティック・ダイセクション)から“ダイセク”と呼んでいます。
虚血による症状
上述のように全身のさまざまな部位に虚血による症状が起こりえます。これは偽腔が生じた部位と、そのことにより虚血が起こった領域で決まります。順に以下で説明していきますが、偽腔の範囲が広いと複数の領域に症状が出る場合もあります。
大動脈からは頭(脳)にいく動脈(総頚動脈)が分岐するために、これが虚血になるとめまい、頭痛、意識障害、けいれんなどの症状が出ることがあります。
上肢にむかう動脈(鎖骨下動脈)の血流が障害されると左右の血圧に大きな差が出る(例えば収縮期血圧が右腕で測定すると200mmHg、左は120mmHgの場合。この場合は左腕の血流が低下しています)、あるいは片側の腕の脈が触れないなどの症状が出ます。
大動脈解離を起こした人全てにこの上肢の血圧の左右差を認めるわけではありませんが、非常に典型的かつ有名な症状なので、医療関係者は胸痛もしくは背部痛を訴える人に上肢血圧の左右差を認めた場合、まず大動脈解離を疑います。
大動脈の起始部、すなわち心臓と大動脈の接続部が障害されると、心タンポナーデとなり突然死する場合や大動脈弁閉鎖不全症を起こして心不全症状(呼吸困難や血痰など)が出現する場合があります。
大動脈からは冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる心臓を養う動脈が分岐しているために狭心症や心筋梗塞(これらの病気については他項で詳しく説明しています)が起こるケースがあります。
よくある動脈硬化を基礎疾患として狭心症や心筋梗塞を起こした人とは治療法が全く異なるので要注意です。
大動脈からは腹部にいく血管も分岐しています。腹腔動脈病変では肝不全や胃潰瘍が、腸間膜(ちょうかんまく)動脈病変では腹痛やイレウス、虚血性腸炎などの病気が起こりえます。
腎動脈も大動脈から分岐するために急性腎不全を起こす人もいます。
さらに虚血が下肢に及ぶと間欠性跛行(かんけつせいはこう。詳細は“閉塞性動脈硬化症”の項をごらんください)や下肢の壊死(えし)を生じる方もいます。
解離による症状
虚血症状以外にも症状があります。解離、すなわち大動脈が裂けることにともなって胸部や背部に激痛が生じます。激痛であるために救急車を要請する人が多く、実際非常に重症であるために救急車で受診する必要がある病気です。
特に“はりさけるような激痛”と訴える場合には大動脈解離の可能性が高くなりますが、全員がこのように表現するわけではありません。
また最初に記したように基本的に痛みは前触れなく突然起こります。発症時が痛みは一番強いことが多く、人によっては痛みの部位が移動していくように感じることがあります。これは裂けている血管の領域が広がっていることが原因です。
まとめ
大動脈解離とはどんな病気?
大動脈解離とは
虚血による症状
解離による症状