肝硬変に合併した 腹水 は、まず塩分や水分を制限し、利尿薬(抗アルドステロン薬が第一選択。ループ利尿薬やバソプレシンV2受容体拮抗薬を併用する場合もあり)で 治療 します。
アルブミン製剤を点滴することもあります。これらで無効な場合に腹水穿刺排液や腹水濾過濃縮再静注法を行います。なおもうまくいかないときには、腹腔-静脈シャント、経頸静脈肝内門脈大循環、肝移植が検討されます。
肝硬変により生じた腹水の治療(前編)
- 目次 -
肝硬変と腹水
腹水の原因疾患は肝硬変が圧倒的に多く約80%を占めています。肝硬変の治療として、肝硬変そのものの治療(ウイルス性肝硬変に対する抗ウイルス療法、アルコール性肝硬変に対する断酒、自己免疫性肝硬変に対する免疫抑制療法など)、合併症の治療(黄疸、腹水、肝性脳症、低栄養状態、胃食道静脈瘤に対する治療など)、発癌対策(肝硬変から高率に肝臓癌が発生するために、予防、早期発見、治療が重要です)などが総合的に行われます。
さらに症例によっては肝移植が施行されることもあります。この項ではこれらの治療のうち、特に肝硬変に合併した腹水に対する治療法について説明します。
少量から中等量の腹水
腎臓や心臓の病気でむくんだときと同様に食塩や水分の摂取を制限します。さらにたまった水を尿として体の外に排出する利尿薬を内服で使用します。
数種類ある利尿薬のうちで、抗アルドステロン薬(腎臓の遠位尿細管と呼ばれる部分に位置するアルドステロン受容体のはたらきを阻害して利尿作用を発揮する薬剤で、アルドステロンはホルモンの1種です)が第一選択薬となりますが、ループ利尿薬(腎臓のヘンレ上行脚という部分に作用して利尿させます。内服薬と注射薬があります。)を併用することも少なくありません。
利尿薬が多すぎると、脱水や血圧低下を生じる場合があるために、適宜投与量を調節する必要があります。
比較的大量の腹水
上記の治療で効果不十分な場合には入院して食塩や水分制限を徹底するとともに、注射で抗アルドステロン薬やループ利尿薬を使用します(内服薬よりも注射薬の方が強力です)。バソプレシンV2受容体拮抗薬(比較的最近開発された薬剤で強力な利尿作用を有します)を用いる場合もあります。
さらに必要に応じてアルブミン製剤を点滴注射します。アルブミンは血管内の水分を保つ働きをしているタンパク質の1種です。肝硬変が進行すると肝臓でアルブミンを十分に合成することができないために、血液中のアルブミン値が下がり、血管内に水分を十分に保つことができなくなります。
アルブミン製剤は人から採血した血液中に含まれるアルブミンを原料としてつくられた薬で、日本では日本赤十字社による「献血」、海外では「献血」以外の方法による血液提供で得た血液をもとにアルブミン製剤をつくっています。
アルブミン製剤は人体からの血液を原料としているために数量には限りがあり、乱用は避け、極力使用量を少なくする必要があります。
まとめ
肝硬変により生じた腹水の治療(前編)
肝硬変と腹水
少量から中等量の腹水
比較的大量の腹水