「腹水とは何かな?(前編)」では、 腹水とは どのようなものなのかご説明いたしました。後編では、腹水の症状や検査方法、また治療方法についてご説明いたします。腹水が長引くと全身の機能低下が起こります。
腹水とは何かな?(後編)
腹水の症状
腹部の膨満感、胃や肺の圧迫による食欲不振や呼吸困難、むくみ、血行不良などが主な症状です。呼吸困難の継続は全身状態の悪化を招き、血行不良では細胞状態が悪化します。腹水が長引くと全身の機能低下が起こります。
腹水の治療
腹水の原因である肝硬変やがん性腹膜炎などの疾患の治療が優先的で、腹水の治療は対症療法的になります。血中アルブミン濃度を高くする利尿剤は、最も治療に多く使用されます。
しかし、それでも腹水が増加する場合は腹腔穿刺を行い、直接、腹水を抜きます。利尿剤の使用より、腹腔穿刺で腹水を抜いた方がQOLを向上させるとする報告もあります。
低アルブミン血症などでは、利尿剤を併用しながらアルブミンを投与することで、腹水を血管内に戻すことができます。
がんにより腹水が生じた場合、腹腔内への抗がん剤の注入は腹水の減少に効果があります。電解質出バランスの改善や腎血流量の増加などのため、腹水中の栄養分を静脈に灌流する腹水濾過濃縮再静注法は有効な治療手段です。
がん性腹水の治療
がん性腹水は腹中のがん細胞が炎症を起こし、腹腔内に水分や血液成分が滲出した状態です。腹水濾過濃縮再静注法(CART)は、必要な成分を濃縮して静脈に注入し戻す積極的な治療法です。QOLの改善と延命効果が期待できます。
CARTは保険適用されている治療法で、主に肝硬変などの肝性腹水の治療に使用されております。最新のCARTは、フィルターの目詰まりの改善などで、血球成分やがん細胞が含まれるがん性腹水の治療に活用されています。
腹水検査
腹水の生化学検査や腹部外観検査、腹部超音波検査、腹部CT検査により、異常な腹水か否かを判定します。生化学検査では電解質濃度、タンパク量、LDHなどを測定し、細胞検査で腫瘍細胞の有無を調べます。白血球の増加では、感染症やがんの病気などが示唆されます。
漏出液が認められれば、肝硬変、ネフローゼ症候群などが疑われます。滲出液なら急性膵炎や腹膜炎が考えられます。漏出液の細胞診の結果は5段階で表され、IV、V段階はがんが疑われ、腫瘍マーカーや生検、画像診断などの精検が必要となります。
腹水の鑑別診断
腹水になる原因は、腹水の色や性状で鑑別診断が可能です。
腹水の色:透明~淡い黄色
- 漏出性腹水で、肝硬変、門脈亢進、心不全、ネフローゼ症候群など
赤色
- 滲出性腹水の血液の赤色で、結核・がん性腹膜炎、急性膵炎、腹腔内出血など
暗いオレンジ色
- 滲出性腹水で、化膿性腹膜炎など
暗褐色
- 滲出性腹水の胆汁の色で、胆汁性腹膜炎、胆嚢胆管穿孔など
白色
- 滲出性腹水で、リンパ管の詰まり、フィラリア症など
まとめ
腹水とは何かな?(後編)
腹水の症状
腹水の治療
がん性腹水の治療
腹水検査
腹水の鑑別診断