腹水とは 、何らかの原因で腹腔内の体液が通常より増加した状態をいいます。血管の水分に圧力がかかると腹腔内に滲出します。肝硬変では門脈圧亢進で血管圧力が上昇し、腹膜炎では腹腔への血管透過性が高まり、腹水になることがあります。
腹水になる原因疾患には、肝硬変、肝がん、劇症肝炎、膵臓がん、肺炎、ネフローゼ症候群、心不全、腹膜炎などがあります。
腹水とは何かな?(前編)
腹水とは
腹水とは腹腔内に通常量より多くの水が溜まった状態のことで、腹腔は胃、腸や臓器などが存在する腹膜腔と、膀胱、子宮などの後腹膜にわけられます。
腹腔内には腸などが動くときの潤滑剤として、通常20~50mlの水が入っています。腹水は腹膜から出て、腹膜から再吸収されるため、一定量に保持されています。何らかの原因で、吸収される腹水量が少なくなると腹腔内の腹水量は増えます。
腹水の溜まる理由として、腹膜からの吸収が少ない場合、生成する腹水量が多い場合、腹膜から吸収され血液水分として戻る流れの系が妨げられている場合があります。
腹膜からの吸収が少ない場合
血中にはタンパク質のアルブミンがあり、血中水分の維持の働きがあります。このアルブミンが少なくなると、血中に取り込む水分量が少なくなり、腹水が増えていきます。肝疾患になるとアルブミン量が減少します。
生成する腹水量が多い場合
細菌などの炎症や病気によって、腹膜の状態に異常が起こった場合が考えられます。
流れの系が妨げられている場合
腹膜に異常がない場合でも、この流れが妨げられると吸収ができなくなります。肝臓系、リンパ系、心臓系などの疾患は流れを妨げる原因になります。
今回は腹水の原因・種類と疾患についてお話します。
腹水の原因として、肝臓内静脈圧、門脈圧の上昇、アルブミン減少、副腎皮質ホルモンの不活性化などがあります。
心疾患、慢性肺疾患などの全身性のうっ血腹水、肝硬変などの門脈血のうっ血性腹水と、悪性腫瘍などによる栄養低下で、血漿アルブミン量の低下からくる悪液質性腹水、腹膜の炎症による滲出亢進からの炎症性腹水に分類されます。
また、腹水の性状からは、漏出液と滲出液が溜まる腹水に区分されます。漏出液は腹腔内の血管から体液が漏れ出すものです。漏出液の腹水は肝・腎機能低下、肝硬変、心不全などの非炎症性の疾患により、また、門脈圧亢進でも起こることが多いといわれています。
他に、血中アルブミン濃度の低下、膠質浸透圧の低下、血漿量の低下などでも漏出性の腹水が起こります。滲出液は濁っていて、凝固しやすいのが特徴です。
滲出液は細菌・がん性腹膜炎、急性膵炎、がんなどの炎症・腫瘍性の疾患で起こり、血管透過性の亢進やリンパ管の詰まりなどで、また、リンパの流れが悪化することで起こります。
細菌感染や悪性腫瘍がリンパ節に転移すると滲出性腹水が起こります。うっ血性腹水は漏出液で細胞成分に乏しく、炎症性腹水は滲出液で細胞成分に富むことが知られています。
まとめ
腹水とは何かな?(前編)
腹水とは