咳嗽とは 咳を表す医学用語で、その持続期間により急性咳嗽、遷延性咳嗽、慢性咳嗽に分類されています。慢性咳嗽の原因となる病気の1つに胃食道逆流症と呼ばれる消化器の病気があり、胸やけや呑酸などの症状とともに咳嗽を生じることがあります。
胃食道逆流症は10人に1人程度と有病率がとても高い病気で、胃酸をおさえる薬で治療します。咳止めでは咳嗽は治まりません。
咳嗽とは咳のことです。消化器の病気も咳嗽の原因になります
咳嗽(がいそう)って何?
咳嗽(がいそう)とは咳を表す医学用語で、その持続期間によって急性咳嗽(3週間未満で治るもの)、遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう。3週間以上持続して8週未満で治まるもの)、慢性咳嗽(8週間以上続くもの)に分類されています。
慢性咳嗽の原因となる病気には肺結核や肺がん、COPD(シー・オー・ピー・ディー。以前は肺気腫と呼ばれていた病気です)などがあります。
これはいずれも呼吸器と呼ばれる肺や気道の病気ですが(したがって呼吸器内科が担当します。なお肺結核と肺気腫については他項で詳しく説明しています)、消化器内科の守備範囲である病気も慢性咳嗽の原因になることがあります。
胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)がそれで、本項ではこの病気について説明します。
胃食道逆流症って何?
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD。医療関係者は“ガード”と呼んでいます)は酸性の胃内容物が食道や口の中に逆流してしまうことが原因で、胸やけや呑酸(どんさん。すっぱいものが口の中に上がってくる症状)を生じる病気です。
胸やけ、呑酸以外にも咳嗽や胸痛、のどの違和感、耳痛、嗄声(させい。声がかすれる感じ)などさまざまな症状を訴える場合があります。症状の出現具合には個人差が大きく、胃食道逆流症の患者さん全員がこれらの症状全てを自覚するわけではありません。
胃食道逆流症は近年増加しており、有病率は10人に1人程度はこの病気を(本人は胃食道逆流症であると自覚していなくても)有しているのではないかと推定されています。
逆流性食道炎とNERD
胃食道逆流症は内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)によって、びらん性GERD(逆流性食道炎)と、非びらん性GERD(NERD(ナード)と呼ばれています)の2つに分類されています。胃食道逆流症の1/3程度がびらん性GERD(逆流性食道炎)、2/3が非びらん性GERDです。
びらん性GERDは内視鏡検査で粘膜障害を認めるもので、上記の自覚症状は必ずしも存在しなくてもかまいません。男性、高齢者、肥満症の人、食道裂孔ヘルニアがある人などに多いとされています。
非びらん性GERDは強い自覚症状があるものの内視鏡検査では粘膜障害を認めないタイプです。女性、若年者、非肥満者が典型的です。
胃食道逆流症の治療
当たり前ですが、咳嗽の原因が胃食道逆流症であった場合、咳止めをのんでも咳嗽は治まりません。
胃食道逆流症治療の基本は薬物療法で、なかでも胃酸をおさえるプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitorの頭文字PPIから医療関係者はしばしば“ピー・ピー・アイ”と呼んでいます)あるいはH2受容体拮抗薬(H2 receptor antagonist:H2PA)が治療の主体となっています。
どちらもすばらしい薬ですが、プロトンポンプ阻害薬の方が1日1回服用でよいこと(H2受容体拮抗薬は朝夕2回服用が基本)、腎臓の機能が悪くても量の調整が不要であること(H2受容体拮抗薬は血液透析を行っている人など高度に腎機能が低下している場合には減量が必要です)、さらに胃酸分泌抑制作用がより強力であることから、プロトンポンプ阻害薬が第一選択薬となっています。
プロトンポンプ阻害薬を通常量使用することで、びらん性GERD(逆流性食道炎)の実に90%以上で改善がみられるとされています。
これに対して、非びらん性GERD(NERD)は通常量のプロトンポンプ阻害薬で改善するのは60%程度です。
改善しない場合には、プロトンポンプ阻害薬を倍量にする、プロトンポンプ阻害薬と消化管運動機能改善薬や粘膜保護薬を併用するなどの手段で対応します。
まとめ
咳嗽とは咳のことです。消化器の病気も咳嗽の原因になります。
咳嗽(がいそう)って何?
胃食道逆流症って何?
逆流性食道炎とNERD
胃食道逆流症の治療