下血は肛門から血液成分が出る異常です。 下血 の 原因 には上部から下部までの消化管の各部位に起こるさまざまな病気を原因として生じます。
食道静脈瘤破裂、胃の病気(胃潰瘍、胃癌、胃静脈瘤破裂)、十二指腸潰瘍、大腸疾患(潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎、感染性大腸炎、大腸癌、大腸ポリープ)、大腸憩室出血などの病気にともなって下血が起こる場合があります。
下血の原因となる病気
下血とは
下血(げけつ)は肛門(おしりの穴)から血液成分が出る異常です。医学的に正確な定義では胃や食道など上部消化出血を原因として肛門から血液成分が出る状態を下血と呼び(ちなみに口から出ると吐血と言います)、大腸など下部消化管出血を原因とする場合は血便と表現されます。
さらに血便は黒色便、粘血便などのように表現される場合もあります。しかしながら両者を併せて下血と表現している本も多いので、この項では上部も下部消化管も含めた“広い範囲での下血”の原因となる病気について説明します。
下記をごらんいただくとわかるように、様々な部位に起こる多彩な病気が下血の原因となります。
食道・胃静脈瘤破裂
食道静脈瘤、胃静脈瘤は肝硬変(肝硬変の詳細については別項を参照してください)などが原因で、門脈圧亢進症(門脈の圧が著しく上昇する状態。門脈は消化管から吸収した栄養素を肝臓へ運搬する役割をしている血管です。)を生じた結果、食道や胃の粘膜の下にある静脈が異常に拡張して瘤をつくる病気です。
この瘤が破裂するものが食道静脈瘤破裂、もしくは胃静脈瘤破裂で、大量に食道や胃の中に出血するために吐血、下血、さらには出血性ショックを起こします。無治療の場合、致死率は50%程度にまで達するこわい病気です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍については他項で詳しく説明していますので、ここでは簡単に記載しておくにとどめます。
胃や十二指腸の表面(食物が通過する側)がえぐれる病気です。典型的な症状として心窩部痛、腹部膨満感、吐き気や嘔吐、胸やけ、食欲低下などがあります。さらに吐血、下血、そして貧血や出血性ショックを起こす場合があります。
ただし胃潰瘍や十二指腸の患者さん全員に吐血や下血が起こるわけではありません。
吐血は“コーヒ残渣様(ざんさよう)”、下血は“タール便”と称されるいずれも黒っぽい血液が出ることが多いのですが、出血量が多い、あるいは現在も出血が続いている場合には“新鮮血(しんせんけつ)”と呼ばれる真っ赤な血液が口や肛門から出る場合もあります。
胃癌
胃癌の詳細については他項をごらんください。
胃癌は無症状のことも多い病気ですが、進行すると体重減少、腹部不快感、心窩部痛、食欲不振、悪心・嘔吐などの症状ともに下血を認めることがあります。ただししばしば下血ではなく“黒色便”と表現されています。“下血”よりも出血量が少ないイメージです。
大腸炎
大腸炎は文字通り大腸に炎症を生じる病気です。さまざまな種類の大腸炎を原因として下血が起こります。潰瘍性大腸炎は10歳代後半から30歳代前半の若年者に好発する大腸の難治性の炎症性疾患です。粘血便や下痢・軟便、腹痛がおもな症状です。
他の症状や合併症など詳細に関しては他項に詳しく記載しています。
一方、虚血性大腸炎は高齢者や普段から便秘ぎみの人に多い病気です。突然左下腹部に痛みが起こり、その後下痢や下血が出現するパターンが典型的な経過です。薬剤性大腸炎や下記の感染性大腸炎との鑑別が重要です。
感染性大腸炎は有名なO157(オー・イチ・ゴー・ナナ)などの病原性大腸菌をはじめ、赤痢アメーバ、赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなどの病原体が原因となる病気で、やはり下血をきたす場合があります。
大腸癌、大腸ポリープ
大腸癌や大腸ポリープで下血が起こる場合がありますが、いずれもある程度癌やポリープが大きくならないと出現せず、小さい間は通常、無症状です。
大腸癌についての詳細は他項をごらんください。
大腸憩室出血
大腸憩室(だいちょうけいしつ)は大腸の一部が少し外側に飛び出す異常で、高齢者の大腸にはしばしば存在します。そこから出血する病気が大腸憩室出血で、典型例では痛みをともなわずに下血が出現します。
また一度この病気で出血したことがある人では、その後も再発しやすい傾向があり、約30%に再発すると言われています。
まとめ
下血の原因となる病気
下血とは
食道・胃静脈瘤破裂
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃癌
大腸炎
大腸癌、大腸ポリープ
大腸憩室出血