肺炎球菌は肺炎などの感染症の原因となる細菌です。肺炎の原因としてはもっとも多いことから、少しでも肺炎を予防するために高齢者などでは 肺炎球菌 感染症の 予防接種 を受けることが勧められています。
定期接種が制度化され、基準に該当する人は市町村から接種費用の助成を受けることができるようになりました。ただし該当しない人も任意接種として接種を受けることができます。
肺炎球菌感染症の予防接種
肺炎球菌感染症とその予防接種
感染症とはからだに何らかの微生物が入ることによって起こる病気のことです。原因微生物には細菌、ウイルス、真菌などがあります。肺炎球菌は細菌の一種(ちなみにインフルエンザはウイルスです)で、その名前のとおり肺に感染して肺炎を引き起こします。
ただし肺以外にも髄膜炎、中耳炎、あるいは副鼻腔炎といった病気の原因にもなる場合があります。日本人の成人にふだん起こる肺炎の原因菌としてはこの肺炎球菌がもっとも多く、およそ30~40%が肺炎球菌によるものであるとされています。
また肺炎球菌性肺炎は非常に重症化する場合があることが知られています。現在高齢者で肺炎球菌感染症の予防接種が推奨されているのは、肺炎球菌による肺炎を予防することが目的で、およそ80%の肺炎球菌性肺炎に予防効果があるとされています。
言い換えると、完全に予防接種で肺炎球菌性肺炎を予防することができるわけではありません。さらに予防接種では他の細菌・ウイルス感染症による肺炎や他の原因による肺炎(例えば高齢者に多い誤嚥性肺炎など)を予防することはできません。
肺炎球菌感染症の予防接種は約5年間効果が持続し、5年毎に新たに接種することが勧められています。
肺炎球菌感染症の予防接種が勧められる人
日本呼吸器学会は肺炎球菌感染症の予防接種が勧められる人として、まず65歳以上の高齢者を挙げています。また、64歳以下の人であっても、慢性疾患がある人、感染症を起こしやすい持病がある人、そして感染症を起こしやすい薬剤を使用している人にも接種を推奨しています。
慢性疾患の具体例として心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性呼吸器疾患、糖尿病、アルコール中毒、肝硬変などの慢性肝疾患、髄液瘻といった病気が挙げられています。
また感染症を生じやすい病気としてHIV感染症、白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、全身性の悪性腫瘍が示されています。感染症を起こしやすい薬剤とはステロイドの全身投与や、臓器移植や膠原病などの治療のために免疫抑制剤を使用している人たちです。
こういった病気を有している、あるいは薬剤を使用されている方は、主治医の先生に肺炎球菌の予防接種を受けたほうがよいかどうかをたずねてもよいかもしれません。さらには養護老人ホームや長期療養施設などで暮らしている人に対しても肺炎球菌予防の接種が推奨されています。
高齢者の肺炎球菌感染症の定期接種制度
平成26年10月から高齢者の肺炎球菌感染症の定期接種が開始され、平成30年度までの間に1回は予防接種を受ける機会があるように制度化されました。定期接種とは法律に基づいて市町村などが行う予防接種のことです。
対象者はその年(例えば平成27年度なら平成27年4月1日から平成28年3月31日までに)65、70、75、80、85、90、95、100歳になる方で、しかもそれまでに成人用の肺炎球菌ワクチンを接種したことがない人です(つまり定期接種では1度しか受けることができません)。
対象に当てはまる方は、定期接種としての公費助成が得られる、つまり安く肺炎球菌感染症の予防接種を受けることができます。ただし、助成は対象となる期間だけに限定されこと、そして助成の有無やその内容などについては自治体によって差があることに注意が必要です。
接種の具体的な受け方も含めて詳しくはお住まいの市町村に問い合わせてください。また制度化されたといっても、義務化されて必ず受けなければならなくなったわけではありません。あくまで安く注射を受けることができるようになったと考えればよいと思います。
任意接種
定期接種に該当しない方でも、肺炎球菌感染症の予防接種を受けることができます。ただしこの場合(任意接種と呼ばれます)では自治体の助成はなく、また健康保険も対象外(例外として脾臓を摘出されている方は健康保険が対象になります)になります。
およそ8,000円から9,500円くらいかかることが多いようですが、詳しくはかかりつけの先生、あるいはお近くの医療機関にたずねてください。
悩ましいのが例えば現在73歳で、任意接種で早めに受けた方がよいのか、それとも75歳まで2年間待って定期接種で受けた方がよいのか、といったケースです。
当然ですが2年間待っている間に肺炎球菌肺炎になるかどうかは誰にもわかりません。迷った場合はやはりかかりつけの先生に相談するのがよいでしょう。
まとめ
肺炎球菌感染症の予防接種
肺炎球菌感染症とその予防接種
肺炎球菌感染症の予防接種が勧められる人
高齢者の肺炎球菌感染症の定期接接種
任意接種