減少はしているものの、日本では年間に2万人以上が新しく結核を発症しています。そのうち半数以上が70歳以上の高齢者です。感染力のある肺結核は人にうつす危険があるために、専門の結核病棟に入院した上で治療されます。
高齢者の 肺結核 では若い人に比べて咳や痰、発熱、喀血は少ない傾向があります。逆に脱力感や体重減少の頻度が多くなっています。
高齢者の肺結核
日本は結核大国
肺結核は結核菌が肺に感染することによる感染症です。咳、熱など風邪や細菌性肺炎と同じ症状を呈することも多いので、肺炎だと思っていたら実は肺結核だったというケースも少なくありません。
日本において結核は発症数こそ減少傾向ではあるものの未だに過去の病気ではなく、年間に2万人以上が新しく結核を発症しています。これは先進国の中でも多い数値となっています。
高齢者は肺結核の好発年齢であり、日本の新規発症者の全国集計によると、70歳以上の高齢者での発症が過半数を占めています。
特に以前に肺結核にかかったことがある高齢者では、再発や再燃する場合があるので要注意です。注意が必要な点として、“肋膜炎”、“肋膜浸潤”、あすいは“肺浸潤”といった病気で治療を受けたことがある、あるいは入院したことがある人が実は肺結核だったというケースがあることです。
数十年前はこういった名称が肺結核に対して使われていた、もしくは患者さんがそのように解釈していたことがあるようです。
結核病棟
喀痰塗抹検査が陽性の肺結核と診断された場合は、通常結核病棟を有する専門病院に入院して治療されます。これは患者さんが咳をすることで空気中に排出、浮遊した結核菌を他の人が吸い込むことでうつってしまうためです(空気感染と言います)。
また喀痰塗抹検査とは患者さんの痰を検査することでその感染力を調べる検査です。肺結核の人が病院を受診するまでにある程度時間がたっていることも多いために、肺結核と診断された時点で、患者さんの周囲の人(家族や学校の同級生など)にもうつってしまっている場合も少なくありません。
専門病院で治療にあたる医師や看護師はN95マスクと呼ばれる特殊なマスクを装着して結核菌を自分の肺に吸い込まないようにしながら治療にあたります。
なお結核治療は公費負担の対象になっています。入院勧告の対象となる喀痰塗抹検査陽性の肺結核患者には感染症法第37条が適用され、同法第37条の2ではそれ以外の結核治療を行う患者に適用されます。
申請は患者またはその保護者が居住地の保健所を経由して都道府県知事(政令市では市長)に申請することになっています。人にうつる、特定の専門病棟での入院・治療が必要、そして法律にも絡んでくるというイメージをもっていただけるとよいかと思います。
高齢者肺結核の症状
高齢者の肺結核では若い人に比べると咳が少ない傾向があります。2005年のLeeらの報告では65歳未満の肺結核患者の75.8%が咳や痰を訴えたのに対して、65歳以上では67.2%にとどまっていました(J Korean Med Sci. 20(5): 784-789, 2005)。
さらに上記の報告では喀血(32.9%と14.3%)、熱感(45.9%と32.8%)、寝汗(5.3%と3.4%)、37.5度以上の発熱(55.1%と44.5%)といった症状において高齢肺結核患者は若年患者よりも頻度が少なくなっていました。
逆に高齢患者で多かった症状は呼吸困難(22.2%と38.7%)、脱力(24.6%と50.4%)、体重減少(25.6%と36.1%)、食欲低下(18.8%と31.4%)などでした。
したがって脱力感(体に力が入らない、シャキッとしない、など)倦怠感(なんとなくしんどい、身のおきどころがない感じ、など)や体重減少、食欲低下をともなう微熱や咳があれば、肺結核を考慮する必要があります。
また肺結核は一般的に数週間くらいの比較的長い経過をとることが多いので、いつから諸症状があるかをはっきり答えることができない場合が多いです。余談になりますが、細菌性肺炎でも高齢者は若年者に比較して咳が少ないことが知られています。
まとめ
高齢者の肺結核
日本は結核大国
結核病棟
高齢者肺結核の症状