肺気腫は男性死亡原因の第3位となっているほど、増加の傾向にあります。昨今の健康志向の高まりにより喫煙者は減少傾向にありますが、一方高齢化のスピードが速く、 肺気腫 は発症まで長期間要するため、逆に死亡者が増加し、 寿命 も短くなる、という現象がみられます。
肺気腫の寿命は初期であれば普通の人と変わりません
肺気腫は治ることがない病気です
肺気腫は慢性気管支炎と合わせて慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれています。閉塞性とは息を吐きだす力が衰えていくいことです。
肺気腫とは、タバコなどに含まれている有害物質によって、肺の細胞が少しずつ破壊されていき、空気を吸って、酸素を取り込み、炭酸ガスを排出する、いわゆるガス交換の機能が低下するという病気です。
少しの運動でも息切れをしたり、咳、痰などが出やすくなる、という初期症状から進行していきます。一度肺気腫にかかってしまったら、ほとんど治らない病気です。従って治療の方針は、病気の進行を遅らせるか、現状維持にとどめるかの方法しかありません。
肺気腫の重症度測定によりおおよその寿命がわかります
肺気腫になっているかどうか、肺気腫がどのくらい進行しているかを測定するスパイロメーターという機器があります。(スパイロ検査)肺活量と息を吐くときの空気の通り易さを検査する機器です。
この検査によって肺気腫の進行度(重症度)が分かりその数値によって5段階に分類(病気分類)されます。ステージ0からステージⅣまでです。重症度分類によっておおよその寿命がみえてきます。
重症度は1秒率の数値で表します。
- 1秒率(FEV₁%)=1秒量/努力肺活量(FEV₁/FVC)
- 1秒量(FEV₁)とは、息を思いきり吸い込んで、一気に吐き出した時、最初の1秒間に出せる息の量のことです。
- 努力肺活量(FVC)とは、思いきり息を吸い込んでから一気に強く最期まで吐き出した時の息の量のことです。
ステージ0 0期
1秒率80%以上、正常値ですが、咳、痰があれば肺の破壊と老化が進んでいるため予防措置の禁煙やインフルエンザワクチンの接種などが必要です。
ステージⅠ Ⅰ期(軽症)
1秒率80%から70%、息苦しさが続き、咳、痰の慢性化がみられます。息切れの改善のために気管支拡張剤などが投与されます。
ステージⅡ Ⅱ期(中等症)
1秒率70%から50%、気流制限が高度になり、服薬しても息切れがまだまだ辛い状態です。呼吸リハビリテーションを行い、腹式呼吸などを練習して残った肺の機能を上手に使うコツを覚える治療をします。
ステージⅢ Ⅲ期(重症)
1秒率50%から30%、増悪を繰り返す。吸入ステロイドを使用します。増悪(ぞうあく)とは、風邪、インフルエンザ、天候の変化、過労などをきっかけに、それまでと比べて症状が悪化することです。
ステージⅣ Ⅳ期(最重症)
1秒率30%未満、咳、痰で慢性呼吸不全状態、右心不全(合併症の1つで肺血管抵抗の増大による肺高血圧)、酸素ボンベの使用もあります。
肺気腫0期、Ⅰ期の人の寿命は健康な人と変わりません
1秒率80%以上の0期の人と1秒率80%から70%のⅠ期の人は、適切な治療を行うことによりほとんど健康な人と同等な寿命がまっとうできる、と言われています。肺気腫は進行性の病気ですから放置しておけば確実に重症度が高くなってきて、寿命は短縮されていきます。
一般的には肺気腫は5年生存率が40~60%、寿命は5年から15年くらい、10年生存率では40%くらいというデータがあります。Ⅱ期、Ⅲ期の人の生存率と寿命は、ほぼこの一般的な数値の中に入ってくると思われます。
Ⅳ期の最重症となると寿命は3年くらいと言われていますが、在宅酸素療法により寿命はより延びると言われています。
重症度は1秒率の数値により概略の目安となりますが、実際の治療に際しては、自覚症状、酸素飽和度、運動能力、栄養状態、合併症、増悪頻度などを加えて総合的に決められ、治療方針が示されます。
つまり人によって一般的な寿命より大幅に長く生きることができる場合が多々ありますし、またその逆の場合もあります。寿命はあくまでも過去の経験則ですから、参考にする程度の数値です。
まとめ
肺気腫の寿命は初期であれば普通の人と変わりません
肺気腫は治ることがない病気です
肺気腫の重症度測定によりおおよその寿命がわかります
肺気腫0期、Ⅰ期の人の寿命は健康な人と変わりません