肺の大事な機能である、二酸化炭素と酸素のガス交換は肺胞で行われています。その数は3億以上あるとされ、肺気腫はその肺胞壁が喫煙などで破壊されるために起きる疾患です。
肺気腫に罹患すると正常の肺胞の数が減り、壊れた肺胞が膨張し弾力性が低下します。そうなると、呼気時に肺がつぶれにくくなる一方で、気管支はつぶれやすくなり、空気を吐きにくくなる症状が出現します。
それに加えて、喫煙は気管支に障害を及ぼしますので、粘膜の腫れや痰などの症状が起きます。これが気管支の閉塞です。特に気管支は感染が起こりやすく、それによって気管支の閉塞が進むと、呼吸に大きなエネルギーが要ることになり、呼吸困難を感じつつ、不十分な呼吸をすることになります。
最近、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは、肺気腫と慢性気管支炎を含めて総称しています。長年にわたる喫煙が原因で、タバコ病とも言われていますが、今では、多くの病院にCOPD特別外来が出来るほど問題になっている疾患です。
肺気腫の特徴は、高齢者の男性に多く、男女比は10対1の割合になっています。これより、 肺気腫 の機序、 症状 を明らかにすることで、どんな疾患なのかを知って欲しいと思います。
肺気腫の初期症状は咳、痰、そして呼吸困難(前編)
肺気腫の原因
肺気腫の発症に関係しているタンパク質分解酵素の働きを抑える、α1-アンチトリプシンの欠損している人に多く見られることから、タンパク質分解酵素と、この酵素を抑える物質のバランスが崩れることで肺気腫になるとみられています。
このように遺伝的素因と、喫煙、感染、大気汚染、老化などの要素が相俟って、バランスを崩すことに繋がっていると考えられています。中でも、喫煙が最大の原因であることは間違いありません。
特に、70歳以降の喫煙経験者は、特に注意を要します。
肺気腫の症状
肺気腫の主な症状は、呼吸困難、咳、痰、動悸、喘鳴などですが、肺の気腫化の進行で、初めて症状が見られるようになります。特に、せきや痰などの症状はなく、労作時の呼吸困難の症状から始まる場合があります。
そのうちに階段の上り下りで息切れがしたり、風邪でもないのに咳や痰が続いたりします。これらの初期症状は比較的ありふれたものなので、自覚されないためについ見逃しがちになります。
特に、肺気腫の初期症状は風邪様の症状と似ているため、注意を要します。初期症状を見せた肺気腫は、そのままでいることはありません。進行します。壊れた肺胞は元に戻ることはないので、初期症状で適切な治療が施されないと、症状は徐々に進んで行きます。
その重症度を見てみますと、軽度の場合は咳や痰が目立ち、少しの動作で息切れをします。中程度の場合は咳や痰が持続し、日常的な動きで息切れがするようになります。そして、重度になりますと、動くことができずに寝たきりになります。
さらに病状が進みますと、肺性心、肺塞栓症などの合併症を併発するなどの症状や疾患が出現します。
後編では、肺気腫のメカニズムや治療方法についてご紹介します。
まとめ
肺気腫の初期症状は咳、痰、そして呼吸困難(前編)
肺気腫の原因
肺気腫の症状