肺気腫の症状 (現在はCOPDという病名で呼ばれています)には持続する咳や痰、徐々に進行する呼吸困難などがあります。しかし咳や痰はカゼやタバコ、高齢のためと誤解され、放置されてしまうことが少なくありません。
呼吸困難は初期にはないことも多く、階段などでの息切れ、進行すると階段などでの息苦しさ、最終的にはゆっくりと動いただけでも呼吸困難が出現します。
進行する前に肺気腫を発見し、治療することが重要です。
肺気腫の症状は気づかれていないことが少なくありません
COPD
以前に肺気腫と呼ばれていた病気は現在ではCOPD(シー・オー・ピー・ディー。Chronic Obstructive Pulmonary Disease。日本語では慢性閉塞性肺疾患と言います)と呼ばれています。COPDは慢性肺気腫と慢性気管支炎をまとめたものと理解すればよいでしょう。
いずれの病気も長期間にわたって喫煙した高齢者に多い病気です。肺気腫と慢性気管支炎の両方を患っている人が多いこと、さらには治療法も共通であることから、以下ではCOPDの症状について説明していきます。
なお肺気腫についてインターネットで検索したいときにはCOPDと入力するとよいでしょう。
COPDの症状は気づかれにくい
COPDの症状は徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳や痰が特徴です。しかしこれらの症状が乏しい場合や、症状が存在しても患者さんが病気だと気づいていないことが非常に多いと言われており、発見や治療開始が遅れがちになることが現在大きな問題になっています。
特に咳や痰については“カゼが長引いている”、“タバコの吸いすぎが原因”、“年をとったため”と自己判断し、放置している人が少なくありません。咳や痰は胸が悪くない正常者では(たとえ高齢者でも)出ません。
咳や痰が慢性的に出ている人は、世の中の人は皆咳や痰が(量や頻度に差はあるにしろ)あるものだと思っている人がいますが、大きな誤解です。
咳や痰が長期間ある人、特に喫煙者(以前喫煙していた人も含みます)は医療機関受診をおすすめします。COPDや他の病気になっている可能性があります。
慢性の咳、慢性の痰
咳はCOPDの早期から出現することが多い症状ですが、COPD診断に必ず必要な条件ではありません。COPDが進行するにともなって、時折であったもの(何となく咳が出やすい)が、毎日の咳へと変化することがあります。痰をともなうことも多いのですが、咳だけのケースもあります。
ただし慢性的な咳の原因はCOPDだけではありません。詳しくは【咳が止まらない】の項を参照してください。
COPD患者さんの痰は粘っこくて少量であり、咳をした後に出ることが一般的です。膿性の痰である場合は感染症(たとえば肺炎)、多量の痰が持続する場合は気管支拡張症など他の病気を鑑別する必要があります。
呼吸困難
最初に記載した“労作時の呼吸困難”とは体を動かした際に感じる息苦しさのことですが、ある程度COPDの病状が進行しないとふつう呼吸困難は出現しません。
初期では上に記した慢性の咳や痰のみが自覚症状であることが少なくありません。次いで体を動かしたときに息切れを感じるようになる、あるいは息苦しくなるために同年代と同じように歩くことができなくなります。
さらに進行すると階段を上ったときや坂道で息苦しくなり(労作時の呼吸困難)、いよいよ病状が悪化するとゆっくり動いたときにでも息苦しさを感じ、最終的には動くと症状が出るのでなるべくじっとしているようになります。
以上の経過は“徐々に”、すなわち長期間でゆっくりゆっくりと進行していきます。
このことも医療機関の受診が遅れる大きな要因だと考えられています(突然息苦しくなると(例えば肺炎)、ほとんどの人は病院に行きます)。また患者さんが自分でも意識せずにエレベ-ターを使ったり、坂道を避けたりしているために息切れや呼吸困難に気づいていない場合があることに注意が必要です。
補足
医療機関でCOPDと診断されると、まず禁煙が指示されます。この場合、より軽症のCOPDのほうが禁煙継続による肺機能の改善効果が高いことがわかっています。
また、中等症や50歳以下のCOPDではある種の薬剤(長時間作用性気管支拡張薬)を使用することで呼吸機能が年ごとに低下していくことにブレーキをかけることが可能であることがわかってきました。
したがってできるだけ初期あるいは早期のCOPDを発見し、治療することが重要です。この項で説明した症状にこころあたりがある人は、是非病院を受診するようにしてください。
まとめ
肺気腫の症状は気づかれていないことが少なくありません
COPD
慢性の咳、慢性の痰
呼吸困難
補足