閉塞性動脈硬化症 は狭心症・心筋梗塞、脳梗塞とともに動脈硬化性疾患の代表的な病気のひとつで、下肢の血管が狭くなる、あるいは詰まる病気です。典型的な症状に間歇性跛行があります。
これは安静時には何ともなく、歩くと下肢にだるさや痛みを感じて歩きづらくなり、歩くのをやめると数分で軽減するというものです。
検査にはABI、下肢動脈超音波検査(エコー)、CT・MRIアンギオグラフィーなどがありますが、下肢動脈造影検査により確定診断されます。
閉塞性動脈硬化症とは
下肢の動脈硬化
心臓の筋肉(心筋)に血液を運搬する冠動脈(かんどうみゃく)に動脈硬化が生じて狭くなる、あるいは詰まってしまうと心筋への血液供給が不足します。血液供給が不足して酸素や栄養が行き渡らない状態(この状態は虚血(きょけつ)と呼ばれます)に陥った心筋はダメージを受けます。
冠動脈が狭くなった病気は狭心症、詰まった疾患は心筋梗塞と言います(詳しくは狭心症の項を参照してください)。
ところが動脈硬化は冠動脈に限らず、全身の血管で起こりえます。閉塞性動脈硬化症は主に下肢が動脈硬化により虚血になってしまう病気です。
心臓とは違って、“狭くなる”場合も、“詰まる”(これが“閉塞性”と病名がついている由来です)もひとまとめにして、閉塞性動脈硬化症と呼ばれています。英語表記(Arteriosclerosis Obliterans)の頭文字をとってASO(エー・エス・オ-)ともよく言われます。
閉塞性動脈硬化症は狭心症・心筋梗塞、脳梗塞とともに動脈硬化性疾患の代表的な病気のひとつです。他の動脈硬化性疾患と同じく高齢者に多い病気で、70歳以上の人口の2割くらいは存在するという報告もあります。
しかし、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞と比較して知名度が低いためか、見過ごされていることも多いと考えられています。
閉塞性動脈硬化症の症状
狭心症の典型的な症状として、安静時には症状がなく、運動時に胸の圧迫感が出現、休むと数分で症状が消失するというものがあります(詳しくは狭心症の症状の項を参照してください)。
実は閉塞性動脈硬化症も下肢に同じような症状が起こり、これを間歇性跛行(かんけつせいはこう)と言います。
典型的な間歇性跛行の症状は、安静時には何ともなくて、歩くと下肢にだるさや痛みを感じ、歩きづらくなります。そしてこのだるさや痛みは、歩くのをやめると数分で自然に消えるか軽減します。
部位はふとももの付け根から足首までどこでもよいのですが、特にふくらはぎに感じることが多いとされています。左右どちらか一方の場合もありますし、両足に生じていることも珍しくありません。
また正確には歩くだけてはなく、下肢を動かすものであれば(例えば階段を昇るなど)どんな種類の運動でも間歇性跛行は起こりえます。
注意点として、閉塞性動脈硬化症以外にも他の足の血管病や、高齢者に多い腰部脊柱管狭窄症でも間歇性跛行が起こる場合があるため、間歇性跛行があるから閉塞性動脈硬化症であるとは断定できません。
閉塞性動脈硬化症の検査
ABI(Ankle-Brachial pressure Index、足関節上腕血圧比)や下肢動脈超音波検査(エコー)をまず施行されることが多いです。ABIは足関節と上肢の収縮期血圧の比率をみる検査です。
ABIも超音波検査も比較的手軽に施行することが可能で、検査による合併症や痛みなどの苦痛もほとんどありません。ABIや超音波検査で閉塞性動脈硬化症が疑わしい場合、CTアンギオグラフィー、MRIアンギオグラフィー、そして下肢動脈造影検査が施行されます。
下肢動脈造影検査はいわゆるカテーテル検査のことで、カテーテルという細長い管を下肢の動脈に入れておき、そこから造影剤を注射して動脈の狭窄(狭さのことです)や閉塞の部位(何カ所も狭くなっていることも珍しくありません)やその度合いを調べます。
ふつうは下肢動脈造影検査によって閉塞性動脈硬化症の確定診断がなされます。ただしきわめてまれですが、重度の合併症を生じる場合がありうる検査です。
またCTアンギオグラフィーと下肢動脈造影検査では造影剤を使用するために、造影剤にアレルギーがある人や腎臓が悪い人には行うことができません。これは造影剤(正確にはヨード造影剤)が腎臓の機能を悪化させてしまうためです。
一方、MRIアンギオグラフィーはヨード造影剤を使用しません。ただしペースメーカーが入っているなど、MRI検査を施行することができない人には行うことができません。
まとめ
閉塞性動脈硬化症とは
下肢の動脈硬化
閉塞性動脈硬化症の症状
閉塞性動脈硬化症の検査