変形性脊椎症 は加齢によって生じた椎間板の変形により骨棘が形成され、そのために神経や脊髄が圧迫されて痛みやしびれなどの症状が起こる病気で、主に頸椎や腰椎に生じ、それぞれ変形性頸椎症や変形性腰椎症とも呼ばれています。
変形性脊椎症は高齢者に多い頸椎や腰椎に起こる病気です
変形性脊椎症とは
脊椎(せきつい)はいわゆる“せぼね”のことで、椎体(ついたい)や棘突起(きょくとっき)と呼ばれる骨の部分と、上下の椎体の間にある椎間板(ついかんばん)と呼ばれるクッションの役割をしている部分で構成されています。
また椎体と棘突起の間には脊髄(せきずい)が通っています。年齢が進むにつれて椎間板は徐々に老化していきます。老化した椎間板はクッションとしての働きを十分行なうことができないために、周囲の関節や組織にダメージを及ぼします。
変性を生じてダメージが進行すると、椎体に負荷がかかり、やがて椎体の端に“骨のトゲのようなもの”(専門用語では骨棘(こつきょく)と言います)ができます。骨棘は神経や脊髄を圧迫してさまざまな症状を起こすようになります。
以上をまとめますと、変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)は椎間板の変形により骨棘が形成され、そのために神経や脊髄が圧迫されて痛みなどの症状が起こる病気で、基本的には高齢者の疾患です。
ただし椎間板の変形や骨棘の形成自体は多少なりとも、高齢になるとほぼ全員に生じます。軽い場合は症状がないことも多く、この場合は“病気”というよりも“老化現象”といった方がよいかもしれません。
また脊椎には7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎(きょうつい)、5個の腰椎(ようつい)、仙骨(仙椎(せんつい)と呼ぶこともあります)、尾骨がありますが、変形性脊椎症は主に頸椎と腰椎に起こることが知られています。
頸椎に生じたものを変形性頸椎症、腰椎に起こったものを変形性腰椎症と言うこともあります。
変形性頸椎症の症状
初期の場合には症状がないことも珍しくありませんが、変形が進行するにつれてさまざまな症状が出現するようになります。
変形性脊椎症はさらに2つに分類されており、脊髄が圧迫されて症状が出ているものを頸椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)、脊髄から枝分かれして出る神経の根元(神経根(しんけいこん)と言います)が圧迫されているものを頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)と言います。
頸椎症性脊髄症では手や足がしびれる、手の細かい動き(箸でものをつまむ、字を書くなど)ができないの症状が出ます。進行すると手や足の感覚が鈍くなる、さらには尿が出なくなる・尿を失禁してしまうなどの膀胱障害が起こることもあります。
頚椎症性神経根症では肩~手にかけての痛み、手のしびれ・感覚のにぶさ、手の力の入りにくさなどを生じます。
ただし以上の症状は頸椎椎間板ヘルニア(この病気については他項に記載されています)や後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)などの病気の際にも起こります。
これらの病気や変形脊椎症はすべて整形外科の先生が得意としている領域で、症状やレントゲン、MRIなどの検査によって鑑別されます。
変形性腰椎症の症状
変形性腰椎症も初めは無症状です。しかし進行すると腰痛や下肢のしびれなどの症状を自覚するようになります。
特に馬尾(ばび。脊髄からつながった神経のたばで、馬のしっぽのような形状をしているのでこの名前がついています)や神経根が圧迫されて症状が出ている変形性腰痛症は腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)という病気とほぼ同じ意味だと考えていただいてよいかと思います。
腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状に間歇性跛行(かんけつせいはこう)があります。これはじっとしている時には無症状で、歩行すると下肢にだるさや痛みを感じて歩きづらくなり、歩くのをやめると数分で自然に消えるか軽減する症状です。
ただし間歇性跛行は閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう。この病気についての詳細は他項を参照してください)でも認められる場合があることに注意が必要です。
まとめ
変形性脊椎症は高齢者に多い頸椎や腰椎に起こる病気です
変形性脊椎症とは
変形性頸椎症の症状
変形性腰椎症の症状