貨幣状湿疹 形状は外観で分類された湿疹の1つで、かゆみのある小さな赤いブツブツではじまり、次第に大きくなってコインや円形に近い形の湿疹がいくつも出現します。すねにできることが最多です。原因はさまざまですが、中高年の方ではしばしば皮脂欠乏性皮膚炎に併発します。
皮脂欠乏性皮膚炎は皮脂欠乏による痒みのために掻くことで生じる湿疹で、改善するためには掻くことを止めることが不可欠です。
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)とはどんな病気?
貨幣状湿疹とは
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)は湿疹の1種で、病名というよりは形状(外観)によって分類された湿疹です。
かゆみのある小さな赤い丘疹(きゅうしん。小さなブツブツのことです)ではじまり、次第に大きくなってその名前のように貨幣(コイン)、あるいは円形や円形に近い形の湿疹がいくつも出現します。病変部の表面はじゅくじゅくすることやかさぶたになること、あるいはその両者を繰り返します。
かゆみは非常に強いことも多く、夜間の睡眠が妨げられることも少なくありません。
部位は下腿伸側(かたいしんそく。いわゆる“すね”の部分です)に出現することが多いですが、前腕伸側(ぜんわんしんそく。肘より手指に近い部分で日焼けする側です)や手指背側(しゅしはいそく。手や指の日焼けする側です)、さらに体幹に出る場合もあります。
貨幣状湿疹の原因
上記のように貨幣状湿疹はあくまでも見た目の所見ですから、原因はひとつではありません。若い人ではアトピー性皮膚炎、中高年以降の方では皮脂欠乏性皮膚炎(ひしけつぼうせいひふえん)に併発することが多いとされています。
その一方で歯周病や扁桃腺炎などの細菌感染が関係している可能性も指摘されており、貨幣状湿疹が成立する仕組みについては不明な部分も多いのが現状です。
確実に言えることとして貨幣状湿疹そのものは感染症ではありません。したがって人にうつっていくことはありません。以下では高齢者に多い貨幣状湿疹の原因である皮脂欠乏性皮膚炎について説明します。
皮脂欠乏性皮膚炎とは
皮脂の減少のために皮膚が乾燥すると(この状態を皮脂欠乏症、あるいは乾皮症と呼びます)、皮膚に本来備わっているバリア機能が低下するために、痒みの閾値が低下する(=些細なことで痒みを感じてしまう)ようになります。
痒みのために皮膚を掻くと湿疹ができます。これが皮脂欠乏性皮膚炎で、貨幣状湿疹と同様に下腿伸側に多くできますが、上肢や体幹に出ることもあります。
皮膚の乾燥を起こしやすい要素として年齢、季節、生活習慣の3つがあり、中高年の方、そして冬場に皮膚は乾燥しやすくなります。
生活習慣としてはお風呂に入ったときのこすりすぎが誘因となっていることが多いと言われています。
ナイロンタオルなどの「使用上の注意」の項に“長時間こすりすぎるとお肌をいためることがあります”と記載されていることがありますが、この“お肌をいためる”が皮脂欠乏性皮膚炎のことだと理解していたければよいと思います。
皮脂欠乏性皮膚炎の治療
保湿薬やステロイド外用薬などの塗り薬を使用しますが、いちばん大切なことは生活習慣の改善です。生活習慣の改善がうまくできていない場合、薬を使用しても治らないことがほとんどです。
具体的な生活習慣の改善点としては「掻く、こする。温める」の3つを禁止することです。人体で最も外界に近く刺激を受けやすい皮膚(表皮)の炎症が湿疹であり、掻くことによって湿疹は悪化します。
すなわち、湿疹→痒みの出現→掻く→湿疹悪化→痒みの増強→さらに掻く・・・という悪循環に入ってしまいます。この悪循環を断ち切るために、冷やす、あるいは痒みを感じるたびに薬を塗って、極力掻かないように我慢する必要があります。
しかしながら、なかなか掻くことを止めることができない人も多く、特に「夜間眠りながら掻いている」、「習慣で無意識のうちに掻いている」、「掻くと気持ちがいい」などがあると、掻き続けてしまうことが多いとされています。
こすることをやめることについては、ナイロンタオルなど硬い素材で体を洗うことは避けてください。また体が温まると痒くなりますから、お風呂の温度は39℃程度のぬるめにするとよいでしょう。
まとめ
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)とはどんな病気?
貨幣状湿疹とは
貨幣状湿疹の原因
皮脂欠乏性皮膚炎とは
皮脂欠乏性皮膚炎の治療