過活動膀胱(OAB)は、まだ新しい病名で、自分の意志には関係なく膀胱が勝手に収縮してしまう病気です。日本では約800万人以上の方が過活動膀胱の症状を有している、と言われています。
高齢化により増加する高齢者の排尿に関する問題は一段と多くの関心を呼ぶ医療です。
今回は、 過活動膀胱 の ガイドライン についてご説明いたします。
過活動膀胱のガイドラインにより内科医でも診察できます
不足する泌尿器科専門医
現在、泌尿器科医は全国に約7,000人しかいません。そのため患者数の増加とともに泌尿器科専門医の不足が顕在化する可能性があります。
全国には87,000人の内科医がいます。この内科医の人達に高齢者の排尿に関する医療に参加してもらうことは急務と考えられています。こうした背景で過活動膀胱ガイドラインが作成されました。
過活動膀胱ガイドラインとは
一般内科医の人達に排尿障害で悩む患者さんの診療に参加してもらうために排尿障害診療マニュアルが2004年に発刊されています。
これをもとに多くの医師の意見を集約し、また用語も標準化され改定が行われたのが過活動膀胱ガイドラインです。編集は日本排尿機能学会過活動膀胱ガイドライン作成委員会です。
ガイドラインはより実践的な診療マニュアルとなっています。このマニュアルにより内科医の人達が過活動膀胱の診療の指針として使用できるように編集されています。
排尿トラブルに悩む高齢者が泌尿器科を受診しなくても、いつもかかっている内科のお医者さんでも診療が可能となるわけです。また、内科医院と病院の泌尿器科、泌尿器科専門医院との連携診療が可能となる。などの排尿障害に関する診療の大きな広がりが期待されています。
なお、泌尿器科領域におけるガイドラインは過活動膀胱以外にも尿失禁診療ガイドライン、前立腺肥大症診療ガイドラインなどがあります。
過活動膀胱とは、下部尿路機能障害の1つです
下部尿路機能障害とは、畜尿(尿を溜める)、排尿(溜めた尿を排出する)に関する機能の異常を生じる症状のことで、排尿後症状として残尿感、排尿後尿摘下(尿が垂れる)を加えて3つに大別できます。
過活動膀胱の症状は、頻尿(排尿回数1日8回以上)でトイレが非常に近くなる。夜間頻尿で夜寝ている間に何回もトイレに行く。
過活動膀胱の最も特徴的な尿意切迫感、週1回以上突然トイレに行きたくなる。切迫性尿失禁でトイレまで間に合わなくて尿が漏れてしまう。そして腹圧性尿失禁、くしゃみや重いものを持った時に腹に力が入って尿が漏れてしまう。などがあります。
過活動膀胱の治療について
過活動膀胱の治療は薬物による治療が一般的ですが、患者さん自らが日常生活の中で行うことができる生活・行動療法があります。1つは膀胱訓練です。排尿を感じてもひたすら我慢することです。
最初は排尿を感じてから15分我慢する、そして次は30分我慢する、さらに45分我慢する、というように出来る限り排尿するまでの時間を延ばしていく方法です。
2つ目は骨盤底筋体操といい、肛門、膣口周囲をさっと絞めて5秒間維持する方法で息を吸いながら肛門、膣を胃の方に持ち上げて、そのまま5秒間維持し、解除したらリラックス、これを繰り返します。くしゃみや重いものを持ったときの尿漏れを起こす腹圧性尿失禁にも有効な体操です。
過活動膀胱と間違いやすい病気
頻尿や尿失禁は他の病気でもその症状がみられます。
糖尿病
糖尿病はのどが渇きます。水分補給が増え、頻尿になり易い。
膀胱炎
病気や疲労によって細菌が浸入し炎症を起こして、頻尿や残尿感が出ます。
間質性膀胱炎
細菌を原因としないで、膀胱粘膜に炎症が起き、頻尿、尿意切迫感が出ますが尿が溜ると膀胱のあたりが痛くなる特徴があります。
神経性頻尿
精神的な原因による頻尿、尿意切迫感があります。
薬剤性
他の病気による薬剤が原因で頻尿となる場合があります。
その他の疾患
アルツハイマー病、膀胱がん、前立腺がん、尿路結石などを原因として頻尿、尿漏れが起きます。
まとめ
過活動膀胱のガイドラインにより内科医でも診察できます
不足する泌尿器科専門医
過活動膀胱ガイドラインとは
過活動膀胱とは、下部尿路機能障害の1つです
過活動膀胱の治療について
過活動膀胱と間違いやすい病気