乾癬性関節炎 は乾癬患者の5~10%に生じる関節炎で末梢関節や体軸関節、付着部に炎症を生じます。診断にはCASPAR分類基準が有用です。単関節炎として発症することが多いですが、その後多関節炎に移行することも少なくありません。
初期治療として非ステロイド系抗炎症薬、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬、副腎皮質ステロイド薬などが使われます。関節変形を防止するためには生物学的製剤が有用とされています。
乾癬性関節炎とはどんな病気?
乾癬性関節炎とは
乾癬性関節炎は皮膚の慢性炎症性疾患である乾癬に合併してみられる関節炎で、乾癬患者の5~10%に生じるとされています。
70%は皮膚病変(乾癬の皮膚病変については他項を参照してください)が先行した後、10年程経過してから関節症状が出現しますが、15%は皮膚病変と関節炎が同時発症し、残りの15%は関節炎が先行します。
末梢関節(次の体軸関節以外の関節で、手指や足首などの関節です)や体軸関節(体の中心軸にある関節で脊椎や肩の関節、股関節などが該当します)、さらに付着部(腱(例えばアキレス腱)が骨と接続する部分)に炎症を生じます。
乾癬性関節炎が指に起きる場合、特にDIP関節(指の第1関節。最も爪に近い関節です)が傷害されることが特徴です。
指に生じる関節炎の原因として重要な関節リウマチでは主としてPIP関節(指の第2関節)やMP関節(指の第3関節)と呼ばれる部分が傷害される特徴があり、この相違は両疾患の重要な鑑別点になります。
DIP関節に乾癬性関節炎を生じている場合、乾癬の爪病変をともなうことがよくあります。炎症を生じた指はしばしばソーセージのように腫れてしまいます。
乾癬性関節炎の診断
2006年にTaylorによって報告されたCASPAR(classification criteria for psoriatic arthritis)分類基準がその信頼性の高さから広く使用されています。
この分類基準では末梢関節炎・脊椎炎または付着部炎を診断上必須のものとしています。その上で、以下の5項目のうち3点以上をみたすものを乾癬性関節炎と診断しています。
①乾癬の皮診の証拠がある(現在乾癬の皮疹がある(2点)、過去に乾癬の皮疹が出現した既往がある(1点)、乾癬の家族歴がある(1点))、②爪病変がある(1点)、③リウマトイド因子が陰性(1点)、④現在、もしくはこれまでに指趾炎があった(1点)、⑤関節近傍部に骨新生の画像所見がある(1点)。
乾癬性関節炎の進展と重症度
乾癬性関節炎は初期には1箇所に限定した関節異常(これを単関節炎(たんかんせつえん)と言います)として生じることが大半(およそ2/3)ですが、そのうち約半数は複数の関節病変(多関節炎)へと移行します。
さらに乾癬性関節炎のために生じた関節の変形が高度に進展すると、治療をしても正常な形に戻すことは難しくなります(不可逆的な関節変形)。
個人差はありますが、乾癬性関節炎を発症してから2年以内にこの不可逆的な関節変形へ進むことが多いとされており、乾癬性関節炎の早期発見のためのツールや有効な治療法の開発が待たれています。
海外ではPACE(psoriatic arthritis screening and evaluation。J Am Acad Dermatol,2007)などの問診による早期発見のためのツールが開発され、その信頼性が高く評価されています。今後日本における有用性など、データの蓄積が待たれます。
また現時点では乾癬性関節炎に対する確立した重症度分類は存在していません。
しかし2011年に発表された皮膚症状と関節症状を組み合わせて計算するCPDAI(composite psoriatic disease activity index。Ann Rheum Dis,2011)が活動性や重症度を適切に反映するとして注目を集めています。
CPDAIでは皮膚症状に加えて、関節症状として末梢関節炎、付着部炎、指趾炎、脊椎病炎をそれぞれ点数化して評価します。
乾癬性関節炎の治療
初期治療としては非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬、副腎皮質ステロイド薬などが使用されます。しかしこれらの薬剤では関節変形を十分に防ぐことができない場合が少なくありません。
一方で関節リウマチでも使用されることがあるTNF-α阻害薬(ティー・エヌ・エフ・アルファーそがいやく)などの生物学的製剤(化学的に合成して作った薬ではなく、生体が体内で作っている物質を薬物として使用するもの)と呼ばれるジャンルの薬が関節変形を阻止するのに有効とされていますが、副作用(要注意の副作用には感染症とアレルギーがあります)などのために使用は慎重に判断されます。
また上述したように、関節変形が不可逆的なレベルまで進行する前に使用する必要があります。
まとめ
乾癬性関節炎とはどんな病気?
乾癬性関節炎とは
乾癬性関節炎の診断
乾癬性関節炎の進展と重症度
乾癬性関節炎の治療