体内に酸が異常に蓄積するアシドーシスには揮発性酸が溜まる 呼吸性アシドーシス と不揮発性酸が蓄積する代謝性アシドーシスの2つがあります。
呼吸性アシドーシスでは動脈血ガス分析においてpHが低値、PaCO2は高値を示し、原因としてCOPD、重症喘息、CO2ナルコーシス、睡眠時無呼吸症候群などの病気があります。CO2ナルコーシスは体内に高度な二酸化炭素蓄積が生じたために中枢神経系の異常を呈した状態です。
呼吸性アシドーシスとはどんな状態?その原因となる病気は?
呼吸性アシドーシスとは
わたしたちの体内では生命活動を維持する代謝の過程で、たくさんの“酸”が発生しています。酸は体にとって有害であるために体の外へ出す必要があります。
大部分の酸は糖や脂肪などを酸化する際に生じる二酸化炭素(CO2)と、それが水に溶けたH2CO3(炭酸)です。これらは肺から二酸化炭素として呼吸により放出するために揮発性酸と呼ばれます。
一方でタンパク質の代謝過程で発生するリン酸や硫酸は不揮発性酸と呼ばれ、肺からは排出されず腎臓を経て尿として体外に排泄されます。体に酸が異常に蓄積した状態をアシドーシスと呼び、血液検査のpH(ペー・ハー。動脈血で7.35~7.45が正常範囲です)が低下します。
反対にpHが正常よりも増加する病態をアルカローシスと言います。揮発酸性が蓄積した状態は肺、すなわち呼吸の異常によって起こるために呼吸性アシドーシスと呼びます。
不揮発性酸は尿中に十分に排泄されないとき、あるいは尿中への排泄能力をオーバーして過剰に生産された場合に過剰にたまります。この状態を代謝性アシドーシスと称します。
動脈血液ガス分析
一般的な採血検査、例えば健康診断の際に行う採血検査は静脈から血をとります。一方で上述のpHなどは動脈から採血して評価します。
上腕動脈(じょうわんどうみゃく。肘の内側)、橈骨動脈(とうこつどうみゃく。手首)、大腿動脈(だいたいどうみゃく。足の付け根)に針を刺します。
動脈からとった血液を分析するとpHの他に酸素分圧(PaO2)や二酸化炭素分圧(PaCO2)、酸素飽和度(SaO2)、過剰塩基(base excess:BE)、HCO3-などを評価することができます。
動脈血液ガス分析によって酸素・二酸化炭素のガス交換の状態、そして酸と塩基のバランスを知ることができます。
呼吸性アシドーシスのときにはPaCO2(正常35~45Torr)が増加し、代謝性アシドーシスの場合はHCO3-(正常22~26mEq/l)、BE(正常-3~3mEq/l)のいずれもが低下します。
動脈血液ガス分析はすぐに結果がわかること、数多くの生命維持に必要な情報を得ることができることから、特に救急の現場でよく用いられています。
呼吸性アシドーシスの原因となる病気
上記のように呼吸性アシドーシスは呼吸の異常をきたす病気が原因となって起こります。
具体的には呼吸不全(COPD(シー・オー・ピー・ディー。昔は肺気腫と呼ばれていた病気です)や重症の喘息など)、CO2ナルコーシス(シー・オー・ツー・ナルコーシス)、睡眠時無呼吸症候群(SAS。“サス”と呼ばれています)などで起こります。
一方で代謝性アシドーシスは腎不全、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)、乳酸アシドーシス、下痢などが原因となって生じます。このうち肺気腫と糖尿病性アシドーシスについては他項で詳しく説明していますので、興味のある方は参照してください。以下にCO2ナルコーシスについて説明します。
CO2ナルコーシス
CO2ナルコーシスは体内に高度な二酸化炭素(CO2)蓄積が生じたために中枢神経系の異常を呈した状態です。自発呼吸の減弱、意識障害(傾眠、昏睡)、そして呼吸性アシドーシスを3徴とします。
慢性II型呼吸不全(COPDや肺結核後遺症など)患者がかぜ・肺炎などの感染症を合併したときや呼吸抑制作用のある薬剤を投与されたとき、あるいは高濃度の酸素を投与されたときに起こります。
高濃度の酸素を投与していてCO2ナルコーシスを生じた場合、酸素濃度を減らして対応します。しかし減らしたことで、今度は低酸素血症におちいるケースがあります。
酸素濃度を増やすとCO2ナルコーシス、減らすと低酸素血症になってしまう場合、人工呼吸器での管理を検討する必要があります。
まとめ
呼吸性アシドーシスとはどんな状態?その原因となる病気は?
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CO2ナルコーシス