「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年度版」が先日発表され、広く使用され始めています。本項ではこの ガイドライン の中から 骨粗鬆症 の定義、診断基準、骨粗鬆症による骨折の危険因子とその評価、原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準を御紹介します。
ガイドラインでは健診などで測定される骨密度だけではなく、これまでの骨折の有無を重要視していることが大きな特徴と言えます。
骨粗鬆症の定義と診断・治療開始基準(前編)
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年度版
長らくわが国で広く使用されてきた骨粗鬆症のガイドラインである「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年度版」(日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団により作成)が改訂され、先日「2015年度版」として発表されました(以下“ガイドライン”と略します)。
ライフサイエンス社から出版されているこのガイドラインは、2011年度版よりもさらにボリュームが増えて全207ページからなっています。
内訳は第Ⅰ章骨粗鬆症の定義・疫学および成因、第Ⅱ章骨粗鬆症の診断、第Ⅲ章骨粗鬆症による骨折の危険因子とその評価、第Ⅳ章骨粗鬆症の予防、第Ⅴ章骨粗鬆症の治療、そして第Ⅵ章続発性骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症というのは内分泌疾患とよばれる様々なホルモンの病気やステロイドなどの薬剤のように特定の原因に伴った骨粗鬆症のことです)から構成されています。
全てを説明することはできませんので、ここでは以下の内容に限定して解説します。ただし、診断基準などでは細かい注釈が付記されている部分もありますので、詳細はかかりつけの先生に相談されるか、実際にガイドラインを読まれることをおすすめします。また骨粗鬆症の治療薬については他項を参照してください。
骨粗鬆症の定義
2000年の米国国立衛生研究所(NIH)におけるコンセンサス会議で、骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されました。さらに「骨強度」とは骨密度と骨質の2つの要因からなり、骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとしています。残り30%の骨質には微細構造、骨代謝回転、といった内容が含まれています。
骨を鉄筋コンクリート建てのビルとすると、骨密度をセメント、骨質を鉄筋と考えるとイメージしやすいと思います。セメントが薄くなっても、鉄筋が細くなってもビルは崩れる(=骨折する)危険性が高くなります。
この定義からもわかるように、骨粗鬆症の予防と治療の目標は、骨折を予防して骨格の健康を維持することにあり、わが国の診断や治療基準も骨折(既に骨折したことがある人は再骨折)の予防を念頭に置いたものとなっています。
後編では、骨粗鬆症の診断基準や骨粗鬆症による骨折の危険因子などについてまとめます。
まとめ
骨粗鬆症の定義と診断・治療開始基準(前編)
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年度版
骨粗鬆症の定義