高脂血症 (脂質異常症)は主に高LDL・低HDLコレステロール血症と高トリグリセライド血症からなります。作用の違うさまざまな 薬 がありますが、高LDL血症にはスタチン系薬が最も広く使用されており、他には小腸コレステロールトランスポーター阻害薬や陰イオン交換樹脂も処方されます。
高トリグリセライド血症にはフィブラート系薬を使うことが一番多く、他にニコチン酸誘導体やEPA製剤を用いることもあります。
高脂血症の薬(前編)
高脂血症
血液中の脂質の量が多すぎる、あるいは少なすぎる病気を高脂血症と言います。
主に高LDLコレステロール血症(いわゆる悪玉コレステロールが高い状態で、しばしばこの状態は“コレステロールが高い”と言われています)、高トリグリセライド血症(TG(ティー・ジー)や中性脂肪とも呼ばれます)、低HDLコレステロール血症(いわゆる善玉コレステロールが低い状態です)の3つの要素からなります。
1つだけの場合もありますし、3つ全てに当てはまる場合もあります。“低”HDLコレステロール血症なのに、“高”脂血症を呼ぶのはおかしい、という理由で、最近は高脂血症とは言わずに、脂質異常症と呼ぶようになりました。
脂質異常症の恐いところは動脈硬化を起こすことで、その結果、脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、あるいは下肢の閉塞性動脈硬化症といった病気の原因になります。食事や運動などの生活習慣を改めても数値が改善しない場合は下記のような薬が使用されます。
薬は主にLDLコレステロール(以下LDLと略します)やトリグリセライド(以下TG)を下げるもので、その一部にHDLコレステロール(以下HDL)を増加させる作用を兼ね備えるものもあります。ただしHDLを増加させる力は比較的弱いようです。
スタチン系薬
高LDL血症に対する治療で一番使用されている薬です。肝臓でのコレステロール合成を抑えるとともに、肝臓にLDLをたくさん取り込ませることで、血液中のLDLを少なくします。
HMG-CoA(エイチ・エム・ジー・コー・エー)還元酵素という物質を邪魔することで肝臓でのコレステロール合成を抑えているので、スタチン系薬はHMG-CoA還元酵素阻害薬とも呼ばれています。
安全性が高く使用しやすい薬ですが、副作用として、肝機能障害や横紋筋融解症(筋肉が壊れる病気です)があります。
スタチン系薬はLDLを強力に下げるとともに、(少ないながらも)HDLを増やします。さらに抗酸化作用や抗炎症作用といった脂質とは違った領域での効果を有しており、スタチン系薬の多面的効果と言われています。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
高LDL血症治療薬です。小腸の粘膜にあるコレステロール輸送体(トランスポーター)を阻害することで、食事や胆汁(消化液です。肝臓は胆汁酸という形で小腸にコレステロールを分泌しています)に由来するコレステロール吸収を減らして、コレステロール値を低下させます。
単独でもLDL低下に有効ですし、働きが異なるので、上記のスタチン系薬と小腸コレステロールトランスポーター阻害薬を併用して使用することも、非常に有用です。重度の副作用もほぼありません。
ただしこの項でご紹介する薬の中では最も新しく発売された薬であり(したがって現時点はジェネリック薬品も存在しません)、薬価が比較的高いことが難点かもしれません。
後編では、陰イオン交換樹脂やフィブラート系薬、ニコチン酸誘導体、EPA製剤についてご紹介します。
まとめ
高脂血症の薬(前編)
高脂血症
スタチン系薬
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬