脳の表面を覆う膜の1つである「くも膜」の下(くも膜下腔)に出血がみられる病態を「くも膜下出血」と言います。脳動脈瘤の破裂や脳動静脈奇形からの出血、頭部の外傷などが原因で起こります。
症状としてバットで殴られたような激しい頭痛が特徴的で、嘔吐や意識障害を一緒に伴う事も多いです。くも膜下出血は命に関わる病気で、一命を取り留めても後遺症が残る場合も多くみられます。
くも膜下出血の後遺症ではどのような症状がみられるのでしょうか。ここでは くも膜下出血 による 後遺症 について書いていきたいと思います。
くも膜下出血の後遺症にはどのようなものがあるのか
運動や言語をつかさどる「神経の障害」
後遺症として最初に挙げられるのが、「神経障害」です。神経障害には感覚障害、排泄障害、視野障害などがくも膜下出血ではよくみられます。その中の言語障害は、運動性失語と感覚性失語、全失語などの種類に分類されます。
運動性失語とは、他人の言葉は理解出来るが自分で話す事が難しくなるもので、頭部の優位側の前頭葉が障害される事により起こります。
反対に感覚性失語とは自分の言葉はスムーズに出るが、他人の言葉が理解できない状態もので、優位側の側頭葉が障害される事で起こります。優位側とは、自分の利き手の反対側の脳の事を言います。(右利きの人は左脳が優位脳となります。※ただし、一部には右脳が優位脳の人も在り)
全失語は、運動性と感覚性が合わさった状態のもので、意思疎通はほぼ不可能になります。
もう1つ大きな神経障害が運動障害です。運動障害とは麻痺の事で、くも膜下出血では片麻痺が起こります。片麻痺とは右か左の身体半分が痺れたり、力が入らず思うように動かなくなる事です。
麻痺の程度はくも膜下出血の重症度により、手先が痺れる程度のものから全く動かないものまで様々です。麻痺はくも膜下出血が起こった側の頭とは反対側の身体に出ます。左側の頭部で出血が起こると右側に麻痺が出ます。
麻痺はリハビリによって回復する場合もありますが、杖や車いすでの生活を要される場合もあります。
その他、感覚障害では温度や痛みが鈍くなる症状がみられ、排泄障害では尿意が分かりにくくなるといった症状が出現します。
視野障害では、視界が狭くなったり、今まで見えていた視野の半分を欠損してしまう事があります。
記憶や行為に問題が出てくる「高次脳障害」
行動や認識の異常や記憶や学習に障害をきたしたものを総称して「高次脳障害」と呼びます。高次脳障害には様々な症状があり、衣服が着れないなど今まで学習された行動が正しく行えない「失行」や物を見てもそれが何なのか、何を意味しているのか分からない「失認」などがあります。
失行は頭頂部が障害されることにより、失認は側頭葉が障害されることにより出現する事が多いことが分かっています。その他の症状には、直前の出来事が思い出せなかったり、新しい事が覚えられないといった「記憶障害」や集中して物事を遂行出来ない「注意障害」などが挙げられます。
情緒が不安定になる「感情障害」
くも膜下出血の人にはイライラして怒りっぽくなったり、気分が落ち込んでうつ状態になってしまうような感情障害も多くみられます。これは脳の障害による影響もありますが、後遺症によって日常生活が自分の思うように過ごせなくなる事による喪失感や失望感が原因の場合も多くあります。
この気分障害は気分が落ち込むだけでなく、食欲低下、判断力の低下、不眠、意欲低下など様々な症状をもたらします。このような症状があるとリハビリの意欲も落ち、麻痺などの症状の回復にも支障をきたすため、きちんと治療することが大切になってきます。
まとめ
くも膜下出血の後遺症にはどんなものがあるのか
運動や言語をつかさどる「神経の障害」
記憶や行為に問題が出てくる「高次脳障害」
情緒が不安定になる「感情障害」