冠動脈の血流が減る、もしくは途絶えると、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が供給されなくなり虚血という状態に陥ります。 狭心症 は冠動脈が狭くなることで心筋の虚血が起こる病気です。
狭心症の典型例では体を動かしたときに発作が出現し、安静にすると数分で症状が自然に消失します。しかし安静にしていても発作が出現するタイプもあります。心電図などの諸検査で狭心症が強く疑われると、冠動脈造影検査をして冠動脈狭窄の部位や程度を評価します。
狭心症とは
虚血性心疾患
わたしたちの心臓の周囲には心筋(しんきん。心臓をポンプとして動かしている筋肉のことです)に血液を運搬する冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる血管があります。
冠動脈の内側が動脈硬化や血栓(血液の固まり)によって狭くなる、あるいは詰まってしまうと心筋への血液供給が不足します。血液によって酸素や栄養が運ばれていますから、これらが不足した心筋は重大なダメージを受けてしまいます。
血液供給が不足して心筋に酸素や栄養が行き渡らない状態を心筋虚血(しんきんきょけつ)と呼んでいます。そして狭心症は心筋梗塞とともに虚血性心疾患の1つです。
虚血性心疾患は虚血性心臓病と呼ばれることもありますし、上記のように冠動脈の異常が原因で生じる病気であることから冠動脈疾患とも言われます。虚血性心疾患、虚血性心臓病、そして冠動脈疾患はほぼ同じ意味であり、狭心症と心筋梗塞をあわせた概念という理解でよいと思います。
狭心症
動脈硬化や血栓によって冠動脈が狭くなると冠動脈を流れる血液量が減ってしまい、心筋虚血が生じます。わたしたちが体を動かしているときには心筋はより多くの仕事をする必要があり、この際には安静時よりもたくさんの酸素や栄養が心筋に行き渡る必要があります。
しかし冠動脈に狭い部分があると心筋は十分な血流を確保できません。この場合安静にしているときには症状がなく、体を動かす(階段を昇る、比較的長い距離を歩く、力仕事をするなど)ときに症状(胸のしめつけを感じるのが典型的です。
詳しくは狭心症の症状の項を参照してください)が出ます。そして体を動かすのをやめて安静にすると、典型的には数分で自然に症状がなくなります。これが狭心症の発作です。したがって“狭”いのは心臓ではなく、冠動脈ということになります。
このような体を動かすときに起こるタイプの狭心症を労作性狭心症と言います。正確には体を動かさなくても、心臓がいつもよりも頑張って働くような状態になれば心筋虚血は起こりえますから、入浴する、あるいは興奮するといった誘因で症状が出現する人もいます。
冠攣縮性狭心症
狭心症の中には、普段はさほど冠動脈が狭くないにもかかわらず、冠動脈がけいれんした結果狭くなり、狭心症の発作が出現するものがあります。このタイプの狭心症は冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症と呼ばれています。
運動と無関係に狭心症発作が出現することから安静時狭心症、あるいは上述した労作性狭心症のような典型的なタイプとは異なることから異型(いけい)狭心症と称されることもあります。発作は午前3~5時頃の明け方に起こることが多く、欧米人よりも日本人に多いと言われています。
狭心症の検査
発作が起こっているときに心電図を記録して、狭心症に特徴的な波形が確認されれば狭心症と診断することができます。しかし狭心症の人でも発作を起こしていない場合には、心電図波形に異常を認めません。
そのために弁当箱のような記録計をぶら下げながら生活して24時間の心電図(ホルター心電図と言います)を記録する、あるいは心電図を記録しながら運動して心電図波形の変化をみる運動負荷心電図といった検査が行われます。
またマルチスライスCTといって冠動脈の写真を撮影して評価する検査もしばしば行われます。以上のような検査で狭心症が強く疑われる場合に冠動脈造影検査が施行されます。
冠動脈造影検査は、腕やふとももの付け根の動脈から細長い管(カテーテル)を冠動脈に入れて、造影剤を冠動脈に注入しながら写真を撮影していく検査です。俗にカテーテル検査とも呼ばれています。
冠動脈に狭い部分があると造影剤が十分流れることができませんから、冠動脈の狭窄の有無や部位、さらにその程度を明確に評価することができます。
さらに冠攣縮性狭心症が疑われる場合には、冠動脈のけいれんを誘発する薬を注射して冠動脈がけいれんするかしないかを、この冠動脈造影検査で評価することがあります。
まとめ
狭心症とは
虚血性心疾患
狭心症
冠攣縮性狭心症
狭心症の検査