めまいは古典的には“ 目が回る ”と表現される回転性めまいの他に動揺性めまい、そして前失神に分類されますが、急性重度めまい、反復性頭位めまい、頭位変換によって誘発されない反復性めまいに分類する方法もあります。
回転性めまいは比較的安全な末梢性であることが多いのですが、まれに危険な中枢性めまいである場合もあります。末梢性めまいには良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎などの病気があります。
目が回るめまいと揺れるようなめまい
めまいの古典的分類
同じように“めまいがする”と訴えている人でも、実は表現しようとしている症状は人によって異なります。“目が回る”と表現されるめまい、すなわち自分や周囲あるいはその両方がぐるぐる回るようなめまいは回転性めまいと呼ばれています。
これに対して海の上で波にゆられているようなめまいを平衡障害と言います。回転性めまい、平衡障害、そして前失神(presuncope。詳細は他項をごらんください)とふらつきの4つがめまいの古典的な分類です。
ただし平衡障害とふらつきは似ているので、動揺性めまい(浮遊性めまいと言うこともあります)という用語にまとめる場合もあります。
しかしながら、実際にめまいを起こしている患者さんに4タイプ(あるいは3タイプ)のどれに該当するかを聞いても、うまく答えることができない、あるいは適切に表現することができないケースも少なくありません。そこで次の新しい分類が使用されることもあります。
めまいの新分類
めまいの新分類は①急性重度めまい(脳梗塞、脳出血、前庭神経炎など)、②反復性頭位めまい(良性発作性頭位めまい症など。この病気については他項で詳しく説明しています)、③頭位変換によって誘発されない反復性めまい(メニエール病など)の3つに分類するものです。
ただしごらんいただいてわかるように、これは病名がわかった上での分類という批判があります。脳梗塞や脳出血は頭のCTやMRIを撮影しないと診断を確定することができませんし、脳梗塞や脳出血で生じるめまいは必ずしも“重度”ではありません(むしろ“軽度”の方が多いかもしれません)。
さらに新分類では前失神が含まれていないことにも注意が必要です。前失神が厳密にはめまいではないからだと思われますが、実際には多くの前失神の患者さんが医療機関に“めまいがする”という訴えで受診されます。
回転性めまいは安全なめまいが多い?
めまいを危険なものと、比較的安全なものとに分類すると、危険な場合(生命にかかわる場合もあります)がありえるのが中枢性めまい(脳出血や脳梗塞、脳腫瘍など。詳細は別項)と前失神、そして比較的安全とされるのが後述する末梢性めまいです。
以前はめまいの性質が回転性めまいならば末梢性めまいであり、動揺性めまいならば中枢性めまいである、と考えられていましたが、そういうケースは多いものの、最近ではめまいの性状で末梢性か中枢性めまいかを区別するのはほぼ不可能であるとされています。
したがって、回転性めまいであるから安全なめまいであるとは限りません。
末梢性めまい
末梢性めまいは脳以外の部位の異常が原因となって生じるめまいの総称です。多くは、体の位置や姿勢、平衡(バランス)を感じる器官である内耳(ないじ)に関連した病気が原因となります。上記のようにめまいの性状は回転性めまいとなることがほとんどです。
原因として圧倒的に多い病気は良性発作性頭位めまい症(benign paroxymal positional vertigo:BPPV)で、詳細については他項で説明しています。他には有名なメニエール病や前庭神経炎などの病気が末梢性めまいに含まれています。
メニエール病はめまいの他に難聴、耳鳴り、耳閉塞感をともなう病気で、30~40代の女性によく起こります。めまいの原因としては比較的まれな病気なのですが、有名なためか、実際にはメニエール病ではないにもかかわらず、“自分はメニエール病”と思っている方、あるいは開業医さんで“メニエール病かも(医師が“かも”とか“可能性がある”と言うときはまだ診断は確定していないことを意味しているのですが、大多数の患者さんは診断が確定したと誤解しています)”と言われた人が少なくありません。
メニエール病は基本的にはめまいを繰り返す病気ですから、一度だけしかめまいを起こしたことがない人はメニエール病ではないと考えてよいでしょう。
一方で複数回めまいを繰り返しており、耳鼻科(末梢性めまいの専門家は耳鼻科の医師です)でメニエール病と診断されている方は、本物の?メニエール病です。
まとめ
目が回るめまいと揺れるようなめまい
めまいの古典的分類
めまいの新分類
回転性めまいは安全なめまいが多い?
末梢性めまい