“ 立ちくらみ ”(起立性低血圧)を“ めまい ”として訴える人がいます。その原因となる病気を放置しておくと重症化する場合があり、危険なめまいとして対処する必要があります。特に原因として多いのは消化管出血、脱水、くすり、感染症などです。
立ちくらみによるめまいの原因となる病気
起立性低血圧
さまざまな病気の患者さんがめまいを主訴として医療機関を受診されます(めまいの原因となるさまざまな病気については他項で詳しく説明しています)。そのなかにはいわゆる“立ちくらみ”を“めまい”として訴える人がいます。
“立ちくらみ”は医学的には起立性低血圧と言いますが、医療機関では、起立性低血圧はめまいを起こす種々の病気のなかでも見逃してはいけない危険なめまいとして取り扱われています。
めまいの原因として有名な良性発作性頭位めまい症(この病気の詳細については他項をごらんください)やメニエール病とは異なり、起立性低血圧の原因疾患を放置しておくと意識障害(失神)を起こす、あるいは重症化する場合があるからです。
この項では立ちくらみ”、すなわち起立性低血圧を起こす病気について説明します。
消化管出血
自分では気づかない間に少しずつ出血を起こしていて、その結果貧血となり、立ちくらみが起こる場合があります。
特に頻度が多いのが消化管(胃や十二指腸、大腸)からの出血です。なかでも胃潰瘍や十二指腸潰瘍は特に多い病気です(十二指腸潰瘍については他項で詳しく説明しています)。
これらの潰瘍を以前にわずらったことがある人、真っ黒な便が出ている人(医学用語ではタール便と呼びます)、腹痛特にみぞおちに痛みがある人は胃潰瘍や十二指腸潰瘍を生じている可能性があります。
ただし高齢者では胃潰瘍や十二指腸潰瘍があっても、腹痛などの症状に乏しいことがあることに注意が必要です。
また高齢者はいわゆる“がん年齢”となるために、胃がん(詳細は他項をごらんください)や大腸がんが存在し、そこから出血しているケースもあります。長らく胃カメラや胃のバリウム検査、あるいは検便(便潜血)や大腸カメラを施行されていない人は特に注意してください。
脱水
脱水でも立ちくらみが起こります。夏場では汗などで水分を失うために、特に脱水傾向になります。高齢者は“のどが乾いた”と感じる力が低下していることや、トイレが近くなることを嫌がって水分をあまり摂取しないなどの理由で脱水になりがちです。
“のどが乾いていなくても”こまめに水分を補給するように心がけてください。また熱中症に関する報道でも知られていることすが、最近の日本では家の中にいても脱水症や熱中症になるケースが増加しています。なるべく冷房を使用することをおすすめします。
利尿薬(リニョウヤク。尿を出させる薬剤で腎不全や心不全の人に使用されます)を処方されている人は、脱水気味になっていてもさらに薬が体の水分を尿として排出させてしまうので要注意です(通常では脱水傾向になると腎臓が尿量を減らして水分を体の中に蓄えようとします)。
夏場の水分摂取を増やした方がよいかを主治医の先生に確認しておいた方がよいでしょう。
くすり
病気ではありませんが、他の病気に対して処方されている薬が立ちくらみの原因となっているケースは少なくありません。特に高齢者は持病が多くなるために、どうしても服用している薬剤の種類や数が増加する傾向があるので注意が必要です。
具体的にはα遮断薬(アルファ・シャダンヤク。前立腺医大症や高血圧に対して使用されます)、ニトロ(狭心症の薬です)、降圧薬(血圧の薬)、抗パーキンソン薬、睡眠薬、メジャートランキライザーとマイナートランキライザー(いずれも精神病に対して使用されます)抗うつ薬などがあげられます。
これらの薬剤が必ずめまいの原因になっているとは限りませんが、心当たりのある人は処方している先生と相談するとよいでしょう。
感染症
厳密には起立性低血圧ではない場合もありますが、感染症を起こした高齢の方がいわゆる“ふらつき”を“めまいがする”と訴える場合があります。
高齢者に特に多い感染症は肺炎(特に誤嚥性肺炎)と尿路感染症であること、一度尿路感染症や誤嚥性肺炎を起こすと2回目や3回目を起こしやすいこと、高齢者の感染症では必ずしも熱が出ないことは覚えておかれるとよいでしょう。
捕足
この項では高齢者に関する話題を中心に説明していますので、詳しくは記載しませんが、立ちくらみに伴うめまいで絶対に見逃しが許されないものの1つに妊娠に伴う貧血があります。特に子宮外妊娠の鑑別が必要です。
まとめ
立ちくらみによるめまいの原因となる病気
起立性低血圧
消化管出血
脱水
くすり
感染症
捕足