古くからの水虫(足白癬)に対する民間療法に酢を用いたものがあります。しかしその有効性や安全性には明確なエビデンスが存在していません。 酢 の治療や薬局で 水虫 の薬を購入する前に、本当に病変の原因が足白癬であるかを確認する必要があります。
顕微鏡検査で病変部に菌糸を確認することで、はじめて足白癬の診断が確定します。
水虫を酢で治療する前に知っておきたいこと
水虫(足白癬)と酢
水虫(医学的には足白癬(あしはくせん)が正式な病名です)は日本人の国民病と言われるほどたくさんの人が罹患しています。
患者数が多いこともあり、古くからさまざまな民間療法(たとえば第2次世界大戦のときは硫黄島の地中から出る蒸気を患部に当てる、当時使用され始めていたレーダー(電探と言われていました)が水虫に効くとされたこともあったようです)が行われてきました。
現在でもインターネット上にさまざまな治療法が紹介されています。酢もその1つで、古くから足白癬に効くとされてきました。しかしながら酢を用いた治療法には明らかなエビデンスがないのが実情です。
つまり、何人の足白癬患者に、酢を使用した治療をどのような方法で、どれくらいの期間行い、その有効性はどれほどであったか、という客観的なデータは存在していません。
足白癬のタイプ別の有効性(タイプについての詳細は後述します)や重症度で分類したときの有効性、さらには副作用の情報も乏しいと言わざるをえません。
たとえ友人の水虫に効果があったとしても、あなたには効果があるとは言いきれないのです(確立論的にはおそらく効果はないでしょう)。酢によって皮膚を傷めてしまう可能性もあるために、酢を使った治療はあまりおすすめではありません。
薬局で薬を購入すればよい?
TVのCMではさまざまな水虫の治療薬が宣伝されており(足白癬は夏季に患者数が増加するためにCMも同時期に多くなります)、薬局に行くとそれらの薬を購入することができます。
しかし薬局に行く前にしておかなければいけない大切なことが1つあります。それはあなたの足の“水虫のように見える病変”は本当に足白癬かという問題です。言い換えれば足白癬の(自己)診断は正確であるかが問題なのです。
結論から言いますと、足白癬は症状だけでは掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう。この疾患については他項で詳しく説明しています)など他の病気と区別することがプロの皮膚科の先生であっても難しいのです。
皮膚科では病変部の鱗屑(りんせつ。角質が厚くなって剥がれたもの)を採取して顕微鏡による水酸化カリウムを用いた検査で菌糸(足白癬は皮膚糸状菌(Trichophyton rubrumやTrichophyton mentagrophytesなど)による真菌感染症です)を検出することで、診断を確定しています。
当然ですが、足の症状の原因が掌蹠膿疱症など他の病気であった場合には市販の水虫治療薬や酢では効果が期待できません。
また他項で説明しているように掌蹠膿疱症では皮膚以外にも病変が出現してくることがしばしばあります。したがって、足に生じた異常の原因を確定させることが大切で、そのためにはやはり皮膚科を受診する必要があります。
足白癬のタイプ
足白癬は3つのタイプに大別されています。
趾間型(足の指の間がじゅくじゅくして鱗屑やびらんをともなうもの)、小水疱型(足の指や足の側縁に小水疱や小膿疱(粘性が強い内容物を含んだ水ぶくれ)が群がって生じるもの)、角質増殖型(足裏の角質が増殖して、厚い鱗屑や亀裂をともなうもの)がそれです。
水虫の外観はさまざまであることを知っておいてください。趾間型や小水疱型の白癬は抗真菌薬を外用することで改善する場合がほとんどです。
外用薬には軟膏、クリーム、液があります。これに対して角質増加型は外用薬だけでは治らないことが多く、抗真菌薬の内服や他の外用薬(尿素軟膏やサリチル酸ワセリンなど)併用をしばしば必要とします。
他に知っておいてほしいこと
たまに痒みがない足白癬が存在します。痒くないから水虫ではない、と考えるのは早計です。
また痒みがあっても比較的軽いことも多く、TVのCMほどには困らないケースも少なくありません。痒みがない、あるいは軽度であっても上記のような異常を皮膚に認めた場合は皮膚科を受診するようにしてください。
足白癬は他の人にうつることがあります。特に同居している人にはよくうつります。周囲に迷惑をかけないためにも、早めに皮膚科で相談するようにしてください。
まとめ
水虫を酢で治療する前に知っておきたいこと
水虫(足白癬)と酢
薬局で薬を購入すればよい?
足白癬のタイプ
他に知っておいてほしいこと