認知症 はその レベル や重症度を採血での数値や画像などの客観的な所見で表すことが難しい病気です。そこで、どれくらい介護の時間や労力を必要とするレベルであるのかを分類した認知症高齢者の日常生活自立判定基準が策定されています。
ⅠからⅣ、Mの5段階にランク分けされており、数字が大きくなるほど介護必要度が高くなります。医療や介護の現場で広く利用されていますが、判定者の主観に左右されるなどの欠点があります。
認知症のレベル~認知症高齢者の日常生活自立判定基準
認知症のレベル・重症度
認知症の症状は人によって大きく異なります。さらに同じ人でも日中から症状が出る人や、夜間が中心の人もいます。また、そもそもの認知症の原因も1つではありません(最も多いのがアルツハイマー型認知症ですが、認知症=アルツハイマー病ではありません)。
従って、認知症のレベルや重症度を数値で表すことは実はとても大変難しいことなのです。一方で認知症が実生活で問題になる理由は家族の援助や社会的なサポートが必要になるからです。
そこで介護の面から認知症をランク分けする、つまりその人の認知症はどれくらい介護の時間や労力を必要とするレベルであるのか、という基準が作られています。
認知症高齢者の日常生活自立判定基準がそれで、厚生労働省が平成5年に策定し、平成18年に一部が改正されています。下記のように大きく5段階(ⅠからⅣ、M)にランク分けされており、数字が大きくなるほど介護必要度が高くなることを意味します。
ただしランクMについてはⅣよりも重症であるというよりは、専門医療による治療を要する状態であることを意味しています(ちなみにMはMedicalからとっています)。この認知症高齢者の日常生活自立判定基準は要介護度の判定など医療や介護の現場で広く利用されています。
認知症高齢者の日常生活自立判定基準と各ランクで見られる症状や行動
ランクⅠは何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的に自立している状態です。ランクⅡは日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる状態です。
ランクⅡはさらに2段階に分けられており、家庭外で上記の状態がみられる場合Ⅱaと判定されます。たびたび道に迷うとか、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つなどの行動が出るようになります。
家庭内でもみられるのがⅡbで服薬管理ができない、電話の応対や訪問者の応対など一人で留守番ができない状態です。
ランクⅢは日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする状態です。
着替え、食事、排便・排尿が上手にできない・時間がかかる、やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声や奇声を上げる、火の不始末、不審行為、性的異常行為などの行動や症状を認めます。
ランクⅢも2段階に分類されており、日中を中心として症状を認める場合がⅢa、夜間を中心とした場合がⅢbです。
ランクⅣは日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状態です。症状や行動はランクⅢと同じで頻度が多くなっています。
最後のランクMは著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られる状態で、上述のように専門医療が必要になります。このランクではせん妄、妄想、興奮、自傷や他害などの精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続します。
各ランクをさらにおおまかに表現すると
ここではよりシンプルに各ランクを表現します。ランクⅠの人は一人暮らしも可能です。ランクⅡでは一人暮らしが困難なケースが出てきます。ランクⅢは介護が必要となる状態で、一人暮らしは困難です。ランクⅣは常に目が離せない状態です。
そしてランクMはランクⅠ~Ⅳと判定されていた高齢者が、精神病院や認知症専門病棟を有する老人保険施設などでの治療が必要になった状態です。
認知症高齢者の日常生活自立判定基準の問題点
この診断基準はわかりにくい、漠然としている、などの問題点があります。さらに判定する人の主観により左右されます。そもそも認知症が採血での数値や画像などの客観的な所見で表すことが難しい病気なのでやむを得ない面もあります。
あくまでもこのランク付けは要介護認定などに際しての目安であり、薬の効果判定などには不向きであることを理解しておく必要があります。
まとめ
認知症のレベル~認知症高齢者の日常生活自立判定基準
認知症のレベル・重症度
認知症高齢者の日常生活自立判定基準と各ランクで見られる症状や行動
各ランクをさらにおおまかに表現すると
認知症高齢者の日常生活自立判定基準の問題点