脳血管障害 とは脳の血管に異常が生じることが原因で起こる病気の総称で、脳卒中とほぼ同じ意味です。脳血管障害にはたくさんの病気が含まれますが、特に脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、TIAの4つを意味して使用されることが多いです。
この項では特に血管が破れて出血することで発症する脳出血とくも膜下出血について説明します。
脳血管障害とは
脳血管障害
脳血管障害とは文字どおり脳の血管に異常が生じたことが原因で起こる病気の総称で、いわゆる“脳卒中”とほぼ同じ意味です。脳血管障害はしばしば致命的となり、生存が可能であった場合でもしばしば重度の後遺症が残ります。
血管の異常には、血管が破れて出血する、血管が詰まる、血管が裂けるなど様々な種類があり、それぞれに対して病名がついています。したがって同じ脳血管障害であっても、その病気(=その病気の原因となった血管の異常)によって治療法は全く違ったものとなります。
具体的な脳血管障害の病名は非常にたくさんあるのですが、特に脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、TIAという病気は患者数が多く、広く知られていることから、脳血管障害や脳卒中という言葉がこの4つの病気をイメージして使われることも少なくありません。
この項では血管が破れて出血する病気である脳出血とくも膜下出血について説明します。なお症例数が多い疾患残り2つである脳梗塞とTIA(いずれも血管が詰まる病気です)についての詳細は脳卒中の項を参照してください。
脳出血
脳の血管(正確には脳の動脈)が破れて脳の内部に出血した結果、脳に障害が出現する病気です。多くの例では頭痛を伴います。ちなみに結果が詰まった結果脳が障害される脳梗塞や、TIAでは基本的には頭痛は起こりません。
頭痛以外には手や足の動かしにくさ(麻痺)、感覚障害、眼症状(両側の目玉が左右や上下に寄るなど。これは共同偏視(きょうどうへんし)と呼ばれる症状です)などがあるのですが、これらの症状は脳のどの部分に出血したかによって異なります。
少し専門的になりますが、1番多い出血部位は被殻(ひかく)出血で約40%、以下視床(ししょう)出血約30%、橋(きょう)出血約10%、小脳出血約10%と続きます。他には皮質下(ひしつか)出血などがあります。
治療法や治療成績も出血部位により異なっていて、被殻出血、小脳出血、皮質下出血では手術適応があります。脳出血や次のくも膜下出血の診断にはCTが有用です。
余談ですが、脳出血やくも膜下出血は脳神経外科や脳血管外科の医師が担当する場合が多く、脳梗塞やTIAは内科系(神経内科や脳卒中内科など)の医師が主治医となるケースが多いようです。
脳出血の予防
上述のように脳出血などの脳血管障害では死亡する、あるいは重度の後遺症が残るケースが少なくありません。したがって予防がとても大切です。
脳出血の予防は何と言っても血圧のコントロールです。脳出血を起こした人の約8割に高血圧が合併しています。健診や人間ドックで血圧が必ず検査項目に入っていることや、しばしば減塩のキャンペーンが行われている目的の1つに、この脳出血を減らすことがあります。
残念なことですが、健診などで高血圧を指摘されていても、“自分としては何も異常を感じていない”、“痛くもかゆくもない”といって放置している人がたくさんいます。脳出血など大きな病気を起こす前に医療機関を受診しましょう。また、健診を受けていない方は是非受けるようにしてください。
くも膜下出血
くも膜下出血も脳の動脈が破れることが原因で起こる病気です。脳出血との違いは、破れる血管が脳表面を走行している動脈で、血管の一部が膨れて瘤のようになったもの(脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう))が破裂して起こるところにあります。
破裂すると、脳の表面をカバーしている薄い膜(これがくも膜です)の内側に出血します。くも膜下出血は血管障害のおよそ10%程度を占めると推定されていて、脳血管障害の中で最も死亡率が高い病気であることが知られています。
くも膜下出血は突然の激しい頭痛で発症することが典型的で、痛みの強さに関してしばしば医学書では“バットで殴られた様な(!)痛み”と表現されます。嘔吐や意識障害をしばしば伴いますが、意識障害の有無や程度は出血量によって様々です。
脳出血とは違って普通は麻痺症状を認めません。比較的若い人にも起こることがあり、くも膜下出血の最も多い原因(約70%)である上記の脳動脈瘤破裂は40~60歳に生じることが多く、次に多い原因(約10%)である脳動静脈奇形(英語表記の頭文字をとってAVM(エー・ブイ・エム)ともよく呼ばれます)は20~40歳に多く発症します。
まとめ
脳血管障害とは
脳血管障害
脳出血
脳出血の予防
くも膜下出血