脳卒中とは 脳の血管に異常が生じる病気の総称です。異常に応じてさまざまな病名がつけられていますが、特に脳梗塞、TIA、脳出血、くも膜下出血の4疾患の頻度が多く、脳卒中という用語もこれらを示して使われることが少なくありません。
この項では特に血管が詰まることで脳の神経細胞が障害される脳梗塞とTIAについて説明します。
脳卒中とは?脳梗塞や脳出血との違いは?
脳卒中
脳卒中とは脳の血管に異常が生じる病気の総称です。したがって、“脳血管障害”とほぼ同じ意味と言うことができます。脳卒中は日本人の死因の上位を占めており、さらには死亡には至らなくても重度の後遺症が残ることが少なくないことから、非常に重要です。
血管の異常には、血管が詰まる、血管が破れて出血する、血管のこぶ(動脈瘤と言います)が破れて出血する、血管が裂ける、血管に炎症が起きるなど様々な異常があり、それぞれに対して病名がついています。
同じ脳卒中の範囲に含まれていても検査、治療法や入院期間、後遺症のあるなし、そして場合によっては生命が脅かされるか否かも病気の種類やその重症度によって大きく異なります。
日本で広く使用されている「脳卒中治療ガイドライン2015年度版」(協和企画、以下ガイドラインと略します)では脳梗塞、TIA(ティー・アイ・エー)、脳出血、くも膜下出血、無症候性脳血管障害という病気について比較的詳しく述べられています。
そして“その他の脳血管障害”という見出しで、動脈解離、もやもや病、奇異性脳塞栓症、脳静脈・静脈洞閉塞症、脳アミロイドアンギオパチー、大動脈炎症候群などが説明されています。
なおこれらの病気の中で脳梗塞、脳出血、TIA、そしてくも膜下出血の4つだけを “脳卒中”として記述されている記事もよく見かけます。
これらは他の病気に比べて圧倒的に頻度が多いので必ずしも間違いとは言えませんし、ガイドラインで詳しく解説されている理由もその症例数の多さのためだと考えられます。
ここでは特に血管が詰まる疾患である脳梗塞とTIAについてその概略を説明します。
脳梗塞
脳(正確には脳の神経細胞)に酸素や栄養を供給している動脈が詰まってしまうために、脳の神経細胞が障害される病気です。障害される部位によって手足や顔面の麻痺、意識障害などさまざまな症状が出現しますが、脳出血やくも膜下出血とは違って、基本的には頭痛はありません。
脳梗塞は脳卒中の中でもっとも多い病気であり、およそ50%程度を占めています。心筋梗塞・狭心症、閉塞性動脈硬化症と同様に動脈硬化を背景して生じたものと、心臓に生じた血栓(血のかたまり)が血流にのって運ばれ、脳の動脈を閉塞してしまうことで生じるものとがあります。
後者は心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)と呼ばれており、比較的大きな動脈が障害されることが多いために、動脈硬化を背景としたものよりも重症であることが多いとされています。
ちなみに高齢者に少なくない心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈はしばしば心臓内に血栓を生じ、その結果、心原性脳塞栓症を起こすことがあります。
したがって心房細動の患者さんにはしばしば抗凝固薬(こうぎょうこやく、血を固まりにくくする薬です)が処方されます。なお脳梗塞の症状や治療についての詳細は他項を参照してください。
脳梗塞の予防
上述したように脳卒中は時として致命的となります。また治療法が進歩した現在でも重篤な後遺症に悩まされる、あるいは寝たきりになってしまうことが少なくありません。したがって予防が重要です。脳梗塞の予防は、動脈硬化を基礎に生じるものについては動脈硬化の予防につきます。
具体的には高血圧があれば減塩や薬剤による血圧コントロール、糖尿病があれば食事、運動、薬物療法による血糖コントロール、脂質異常症(高脂血症)があれば食事療法や薬剤による管理、喫煙されている方であれば禁煙といった具合です。
特に心筋梗塞・狭心症や閉塞性動脈硬化症など、他の動脈硬化性疾患を既に起こしている人は脳梗塞を起こすリスクが高いので要注意です。また心原性脳塞栓症についてはまずは不整脈、特に心房細動を発見することが大事です。
高齢になってから新たに心房細動が出現することも多いので、毎年健診などで心電図検査を受けるようにしてください。そして異常を指摘された場合は、必ず医療機関で対応を相談してください。
TIA(ティー・アイ・エー)
TIAとはtransient ischemic attack(一過性脳虚血発作)のことで、脳梗塞と同様の症状が出現するものの、発症後24時間以内に症状が消失するものを言います。脳梗塞の前駆状態と考えられており、“脳の血管が詰まりかけている”というイメージです。
実際にTIAをそのまま放置すると3分の1は本物の脳梗塞に移行すると言われています。“治まったからもう大丈夫”と自己判断せずに、医療機関を受診することが重要です。
まとめ
脳卒中とは?脳梗塞や脳出血との違いは?
脳卒中
脳梗塞
脳梗塞の予防
TIA(ティー・アイ・エー)