止まらない 咳 と 痰 をともなう湿性咳嗽が3週間以上続く場合は、その原因の多くは細菌性肺炎、気管支炎、肺結核症、COPD、肺水腫、肺がん、気管支拡張症などの非感染性の疾病が考えられます。咳や痰が2週間以上続いたり、血痰・喀血がみられたり、緑色やさび色などの痰や強い粘度の痰がみられる場合は、呼吸器内科の受診が必要です。
止まらない咳、そして痰も!
咳の種類と原因
3週間以内の咳は急性咳嗽で、呼吸器感染症、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などにみられます。3~8週間の咳は遷延性咳嗽、8週間以上の咳は慢性咳嗽にわけられ、これらは非感染性疾患などにみられます。
痰をともなう湿性咳嗽の原因疾患は、風・インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、気管支炎・喘息、気管支拡張症、副鼻腔炎、慢性閉鎖性肺疾患(COPD)、肺がん・水腫などです。
今回は、止まらない咳にともなう痰と疾病についてお話します。
細菌やウイルス感染が起こると、死んだ細菌・ウイルスなどを含んだ強い粘度の気道分泌物が増加し痰になります。
痰の色が膿性で白黄色~淡黄色は、急性気管支炎や急性肺炎が考えられます。
膿性・緑色は、びまん性汎細気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症の憎悪、膿性・さび色は、肺炎球菌性肺炎、肺膿瘍、肺化膿症、粘液性・透明~白色は、非細菌性感染症、COPD、泡沫性・ピンク色は肺水腫、漿液性・透明~白色は、肺胞上皮がん、気管支喘息、血痰・茶・暗赤色は、肺がん、気管支拡張症、肺結核症、肺真菌症、肺梗塞、喀血・赤色は、肺出血、気管大動脈瘻が考えられます。
細菌や白血球、上皮細胞などの細胞成分の混入により黄・緑色などの膿性痰がでます。肺粘膜の杯細胞や気管支腺などからの分泌物が過剰になると粘液性痰、肺循環のうっ血では泡沫性の痰、毛細血管の透過性亢進では漿液性の痰がでます。
血が混じると血痰、血液を吐き出すと喀血です。
3週間以上咳と痰が続く疾病・治療
3週間以上咳と痰が続く疾病には、COPD、喘息、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、結核、気管支拡張症、肺がんなどがあります。COPDでは気管支拡張薬による治療がおこなわれます。
抗菌薬治療は感染症に、喘息では吸入ステロイド・気管支拡張薬での治療が実施されます。アレルギー性鼻炎は抗アレルギー薬と吸入ステロイド薬を併用します。
COPD
喫煙者の15~20%が発症する疾病で、慢性気管支炎と肺気腫をいいます。気道や肺に炎症が起こり、咳・痰、息切れ、風邪が治りづらいなどの症状が発現します。
気管支喘息
気管支の炎症により肺への空気の吸入・呼出が困難になる疾病で、気道が敏感になり気管支に発作的な痙攣が起こります。発作性の咳と喘鳴、呼吸困難などの症状があらわれます。
ステロイド・抗アレルギー薬と気管拡張剤で治療します。
気管支拡張症
気管支の一部が円柱・嚢状に拡張して気道分泌液が溜まり、感染により膿を含んだ痰がでます。気管支動脈が増殖し肺出血が起こる場合があります。慢性の咳や膿性痰がでて、血痰や喀血もしばしばみられます。喀痰調整薬の投与や吸入治療を行います。
マイコプラズマ肺炎
早朝や深夜に発作的に強い咳がでます。飛沫感染が強い疾病です。しつこい咳と発熱、全身倦怠感が発現します。マクロライド系抗生物質で治療します。
結核
結核菌に感染し約15%の確率で発病します。1週間以上続く咳・粘性痰のほか、微熱、倦怠感、胸の痛み、呼吸困難などがみられます。進行すると血痰がでるようになります。薬物療法を行います。
サルコイドーシス
臓器の外側に炎症細胞ができる疾病です。この細胞が肉芽腫になります。肺にできると肺が損傷、炎症を起こし、圧迫され咳がでやすくなります。胸の痛み、呼吸困難などをともないます。ステロイドを用い治療します。
胃食道逆流症
胸やけや口の中に酸・苦味を感じたら胃食道逆流症の可能性があります。咳がでて副鼻腔炎や中耳炎になる場合があります。食後1~2時間後に咳・痰がでます。プロトンポンプ阻害薬を使用します。
まとめ
止まらない咳、そして痰も!
咳の種類と原因
3週間以上咳と痰が続く疾病・治療
COPD
気管支喘息
気管支拡張症
マイコプラズマ肺炎
結核
サルコイドーシス
胃食道逆流症