急に 咳 や 頭痛 が起こると「かぜ」のせいにしてしまいがちです。咳、はな、のどの3つの症状がほぼ同時に同じ程度で生じた場合には、「かぜ」である可能性がきわめて高いとされています。
しかしそうでなければ、咳であれば肺炎、頭痛であれば髄膜炎など他の病気を起こしている場合があります。肺炎の可能性についてはDiehrの予測ルールが有用であり、髄膜炎の可能性については最悪、増悪、突発の有無に着目するとよいでしょう。
咳や頭痛を安易に「かぜ」のせいにしていませんか?(前編)
- 目次 -
「かぜ」
咳や頭痛は日常的によくある症状で、特に急に生じた場合は「かぜ」のせいにしてしまいがちです(持続している咳や頭痛、すなわち慢性の咳や頭痛は「かぜ」である可能性はほとんどなく、他の病気が疑われます。慢性の咳(慢性咳嗽(がいそう)と言います)については他項で詳しく説明しています)。
一般的な「かぜ」は「せき・はな・のどの症状を主体とする自然に治る急性上気道感染症」を意味します。「急性ではない」、あるいは「上気道症状がない」場合には、「かぜ」ではない可能性あり、注意が必要です(もちろん非典型的な「かぜ」であることもありえます)。
少し古いですが、2005年に田坂佳千先生が発表された「“かぜ”症候群の病型と鑑別疾患」(今月の治療,13:1217-1221)という有名な論文があります。
この論文では「かぜ」かな?と思われる病態を①せき・はな・のど型(典型的かぜ型)、②はな型(急性鼻・副鼻腔炎型)、③のど型(急性咽頭炎・扁桃炎型)、④せき型(気管支炎・肺炎型)、⑤高熱のみ型、⑥微熱・倦怠感型、⑦発熱+関節痛型、⑧発熱+皮疹型、⑨発熱+下痢型(急性胃腸炎型)、⑩発熱+頭痛型(髄膜炎型)の10タイプに分類して考えていくアプローチが述べられています。
この項ではこれらの中から、①せき・はな・のど型、④せき型、⑩発熱+頭痛型について説明します。
せき・はな・のど型(典型的かぜ型)
咳、はな(くしゃみ、鼻水(医学用語では鼻汁(びじゅう)と言います)、鼻づまり(鼻閉(びへい)と言います))、のど(咽頭痛やイガイガする感じなど)の3つの症状がほぼ同時に同じ程度で生じた場合には、「かぜ」である可能性がきわめて高いとされています。
この場合、熱はあってもなくてもかまいません。「かぜ」には抗生物質(細菌を殺す薬)は必要ありません。「かぜ」はウイルス(ウイルスと細菌はいずれも病気を起こす病原微生物と呼ばれるものですが、生物学的には全く異なるものであり、したがって医学的な対処法も大きく変わります)が原因であることがほとんどです。
病院で「かぜ」に対して抗生物質を欲しがる患者さんがいますが、ウイルス感染症に対して抗生物質は効果がないばかりでなく、アレルギーや腸炎などの副作用を生じるリスクさえあります。
まとめ
咳や頭痛を安易に「かぜ」のせいにしていませんか?(前編)
「かぜ」
せき・はな・のど型(典型的かぜ型)