咳が止まらない が8週間以上続くものを慢性咳嗽と呼びます。慢性咳嗽を生じる原因にはさまざまなものがありますが、こわい病気がいくつか含まれています。
肺癌、COPD(肺気腫)、結核が代表的で、とくに喫煙者(以前喫煙していた人も含む)や結核の既往がある人・結核患者と接触歴がある人は注意が必要です。間質性肺炎なども咳が止まらないときに考慮するべき病気です。
咳が止まらないときに考えるべきこわい病気(前編)
咳が止まらないとき
病院を“咳が止まらない”との訴えで受診される患者さんは大きく2つに分類することができます。ひとつめは咳が激しすぎるためにつらい状態で、咳のために夜間眠ることができない、咳をしすぎて胸が痛いなどの訴えが典型的です。
もうひとつは咳が持続している期間が長い状態で、はじめはカゼかと思っていたが何週間も咳が持続している、タバコのためだと思っていたが禁煙しても1ヶ月以上咳が持続している、などがあります。
この長期間持続する咳は医学用語では遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)や慢性咳嗽と呼ばれ、それぞれ3週間以上持続して8週未満で治まる咳と8週間以上続く咳と定義されています(咳嗽についての詳細は他項をごらんください)。
特に慢性咳嗽を起こす病気には危険なものがいくつも存在し要注意です。この項では慢性咳嗽を起こす危険なこわい病気について代表的なものを説明します。
なお長期間持続している咳が全て危険な病気とは限らないこと、反対に短期間あるいは起こり始めたばかりの咳であっても危険な場合もありうることをお断りしておきます。
ポイントは喫煙歴と、以前に結核にかかったことがあるか(結核既往歴の有無)、もしくは周囲(家族や職場)に結核患者がいるか(あるいは存在したか)です。
これらに1つでも該当し、かつ咳が数週間にわたって止まらずに持続している人は、たとえ程度が軽くても医療機関を受診することをおすすめします。開業医さんでもかまいませんが、総合病院では呼吸器内科を予約するとよいでしょう(呼吸器内科についての詳細は他項を参照してください)。
肺癌
喫煙者(以前喫煙していて現在は禁煙している方も含みます)で咳が止まらずに持続している場合、必ず肺癌を鑑別する必要があります。喫煙と肺癌になるリスクについては、非喫煙者と比較して喫煙者が肺癌になるリスクは男性で4.4倍、女性で2.8倍ほど高くなるとされています(非喫煙者にも肺癌は起こりえます)。
さらに喫煙開始年齢が若いほど肺癌のリスクが高くなることが知られています。一方で喫煙者が禁煙すると喫煙を継続した場合に比べて肺癌のリスクが低下することが示されています。
ちなみに日本人が生涯のうちに肺癌にかかる割合は男性で7.4%、女性で3.1%とされ、かかる可能性が高い癌の1つである考えられます。咳や痰が止まらずに持続する場合や全身倦怠感(だるさ)、食欲低下、体重減少などが肺癌の典型的な症状ですが、個人差がかなりあります。
COPD
COPD(シー・オー・ピー・ディー。Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)も喫煙者(やはり以前喫煙していて現在は禁煙している方も含みます)に多い病気で、特に高齢になるほど増加します。
以前に肺気腫と呼ばれていた病気も現在はこのCOPDに含まれています。持続して止まらない咳や痰、体を動かしたときの息切れなどが代表的な症状ですが、詳しいCOPDの症状については肺気腫の項をごらんください。
ひどくなると呼吸困難となり、ちょっとした体調の悪化(例えばかぜをひいたとき)でも呼吸状態が大きく悪化し、非常につらい思いをします。しかも年齢を重ねるにつれてますます呼吸状態は悪化し、入退院を繰り返した後、最終的に死亡することも少なくありません。
2010年のWHO(世界保健機関)の統計ではCOPDは死因の4位となっており、2011年の日本の研究では死因の9位(男性7位、女性16位)となっています。
この記事をごらんになってこわくなった喫煙者の方は今すぐ禁煙しましょう。
まとめ
咳が止まらないときに考えるべきこわい病気(前編)
咳が止まらないとき
肺癌
COPD