小脳は協調運動の中枢であり、身体を動かしたり、身体のバランスを保つ(平衡保持)ための機能を持っています。小脳は脳幹・脊髄に繋がっていますが、この中には神経路があります。この神経路は情報を伝える連絡路の役割をしています。
情報とは、脳からは手先などの末梢部位に向けてどの程度身体を動かすか命令を出すことで、逆に末梢からはその身体を動かす細かな感覚を脳に伝えることをいいます。物を手に取るという動作1つでも手を置く位置を決めたり、指を曲げたりと実は細かな動作が連続しています。
その1つ1つの動作は脳から指令が出て、脊髄の中にある神経路を通り命令されているから出来ているのです。そのため小脳や神経路に病変が起きると運動や身体のバランスが障害されてしまいます。これらの病変の総称を「 脊髄小脳変性症 」と呼びます。
この病変では、運動やバランスが障害されると言いましたが、実際どのような 症状 なのか細かく説明していきます。
脊髄小脳変性症の症状とはどのようなものか
歩行障害がみられる「小脳型」
脊髄小脳変性症は原因不明で発症しますが、多くの型が存在します。侵される部位によって大きく「小脳型」「脊髄小脳型」「脊髄型」に分けられます。
小脳型では「歩行障害」など小脳失調の症状がみられます。歩行時は体幹のバランスを保つのが困難になるため体がグラグラと動揺します。それでもどうにかバランスを取って歩行しようとするため両足が広がり、体を揺らしながら不安定に歩きます。
酔って歩く姿に似ているため酩酊(めいてい)様歩行と呼ばれたりします。症状が酷くなると、歩行時だけでなく立位や座位の姿勢でも体幹の動揺がみられるようになります。
小脳失調の症状として歩行障害の他には「協調運動障害」がみられます。協調運動障害とは、手足などを目標の場所に持っていくことが出来ない「測定障害」、パソコンのキーボードを打ったり、ピアノを弾く際に指の細かい切り替え運動が困難になる「変換運動障害」、針を糸に通すなど手足を目標のものに近付けると不規則で速い震えが来る「企図振戦」などがあります。他に眼振がみられることもあります。
自律神経症状を伴うことが多い「脊髄小脳型」
脊髄小脳型の中で最も多くみられるのが「オリーブ橋小脳萎縮症」と呼ばれる型です。この型は中年以降に発症するもので、進行型の変性症です。
発症の初期は小脳型と同じような小脳症状ですが、数年かけて進行してくると筋肉の緊張状態が続く筋固縮や振戦などのパーキンソン症状、起立性低血圧や失禁などの自律神経症状を伴うことが多いです。
発症して3年以上経過すると呂律が回りにくくなり口頭でのコミュニケーションが困難になります。5~10年後には寝たきりになり感染症などを引き起こし予後不良の場合が多いです。睡眠中に突然呼吸が止まっている場合もあります。
骨格異常や心筋異常が出現する「骨髄型」
脊髄型は「フリードライヒ病」が典型的にみられる型です。10代の若い人に多く発症しますが、日本人への発症はほとんど確認されていません。
症状としては小脳症状もみられますが、失調性歩行に特徴がみられます。足元の位置が視覚で確認しないと分からないため、膝を高く上げ足を放り出すようにし、踵から地につけるような歩き方になります。また、脊柱が側わんしたり、心筋に異常を伴います。
脊髄小脳変性症は完治させる有効な治療法がないため、これらの症状に対して薬を投与し症状を和らげることが治療の中心となります。また、身体のバランスを保つことが困難になるため転倒などの事故に気をつける必要があります。
まとめ
脊髄小脳変性症の症状とはどのようなものか
歩行障害がみられる「小脳型」
自律神経症状を伴うことが多い「脊髄小脳型」
骨格異常や心筋異常が出現する「骨髄型」