脂肪肝 は肝臓の細胞に中性脂肪が蓄積する病気の総称で、アルコール、肥満、糖尿病、高脂血症などが原因となります。アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝(NAFLD)に大別され、さらにNAFLDは単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類されます。
NASHは肝硬変、そして肝細胞癌に進む場合があります。検査として採血検査や超音波・CT検査、場合により肝生検が行われます。
脂肪肝とはどんな病気?
脂肪肝とは
脂肪肝は肝臓の細胞に中性脂肪(トリグリセライド)が蓄積する病気の総称です。急性妊娠脂肪肝やRey(ライ)症候群などの特殊なタイプを除けば、ふつう脂肪肝で症状が出ることはなく、超音波検査(エコー)やCT検査のときに指摘されるケースがほとんどです。
脂肪肝はアルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease。ナッフルドと呼ばれます)に大別されています。
非アルコール性脂肪肝の有病率は日本を含めて全世界的に増加傾向であり、最近の報告では日本人の有病率は29.7%とされています(J Gastroenrerol 47,2012)。
さらに非アルコール性脂肪肝は脂肪沈着のみを認める単純性脂肪肝と後述の非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis。ナッシュと呼ばれます)の2つに分類されています。
脂肪肝の原因
さまざまな原因により脂肪肝を生じますが、アルコール多飲、肥満、糖尿病(糖尿病の詳細については他項をごらんください)、高脂血症(脂質異常症、特に高中性脂肪血症。詳しくは他項で説明しています)、薬剤(特に副腎皮質ステロイド)などが重要です。
このうち肥満(内臓肥満)、糖尿病、高中性脂肪血症はメタボリックシンドロームの診断基準(詳細は他項に記載)に含まれており、実際にメタボリックシンドロームの患者さんは、しばしば脂肪肝を合併しています。ただしメタボリックシンドロームの診断基準に脂肪肝の有無は入っていません。
どれだけ飲酒すると脂肪肝になるか、あるいはどれだけ肥満が進むと脂肪肝になるかについては個人差があり、明らかに基準のラインを設定することは困難です。ただし肥満については、メタボリックシンドロームの基準であるが参考になると思います。
他には栄養失調、テトラサイクリン系抗菌薬やエストロゲン製剤などの薬剤、クッシング症候群や甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患(内分泌疾患とはいわゆる“ホルモン”の異常を生じる病気のことです)、そして急性妊娠性脂肪肝やReye症候分などが原因となります。
脂肪肝の検査
血液検査でASTやALT(この2つをトランスアミナーゼと言います)の軽度の上昇を認めます。
アルコール性脂肪肝ではASTがより高値となることが多く、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)ではALTが有位となる傾向にあります。またしばしばChe(コリンエステラーゼ)や中性脂肪(トリグリセライド。しばしばTGと表記されます)、総コレステロールの値が高くなります。
医療機関を受診した際には、他の肝臓の病気を除外することが重要になるために血液検査でHBs抗原、HCV抗体、各種の自己抗体などがチェックされます。ふつう脂肪肝ではこれらが異常となることはなく、逆に異常値を示した場合はウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎などが疑われます。
また脂肪肝は超音波検査(エコー)でbright liverと呼ばれる明るい画像で描出されます。単純CTでは、正常の肝臓では脾像と比べてやや高吸収に描出されますが、脂肪肝の場合は逆に低吸収に描出される特徴があります。
なお脂肪肝の診断に通常は肝生検(肝臓の組織の一部をとって標本を作製し顕微鏡で検査すること)は行いませんが、次項の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と単純性脂肪肝を鑑別するためには肝生検が必要になります。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis。ナッシュと呼ばれます)は非アルコール多飲者の脂肪肝(NAFLD)のうち、組織所見(肝生検で得た組織を顕微鏡で検査すること)でアルコール性肝炎での組織所見と同様の炎症細胞の浸潤や肝臓の線維化を認めるものを呼びます。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を非アルコール性脂肪肝(NAFLD)から区別している理由は、非アルコール性脂肪肝炎がアルコール性肝炎と同じように肝硬変に進展し、最終的には肝細胞癌に進むケースがあるからです。
非アルコール性脂肪肝炎の患者のおよそ50%がメタボリックシンドロームを合併しており、したがって非アルコール性脂肪肝炎の治療は減量や運動などメタボリックシンドロームの治療と共通する点が多くなっています。
まとめ
脂肪肝とはどんな病気?
脂肪肝とは
脂肪肝の原因
脂肪肝の検査
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)