心房細動 は心房の電気興奮の異常により起こる高齢者に多い不整脈です。症状には動悸や脈の不整などがありますが、自覚していない人もたくさんいます。
原因でもっとも多いものは高血圧です。心房細動の状態でも心臓はポンプとして機能しますが、血栓ができやすくなり、心原性脳塞栓症など重篤な病気を誘発する場合があります。
血栓を予防するために抗凝固療法が行われます。
心房細動とはどんな病気?
心房細動とは
心房細動(しんぼうさいどう)は不整脈の1種で、心臓にある心房と呼ばれる部分の電気興奮が乱れるために心室にも電気興奮が不規則に伝導し、その結果脈のリズムも不規則になる状態で、高齢者に多い病気です。
脈が不規則になっても全身に血液を送り出す心臓のポンプとしてのはたらきは保たれるために、心房細動そのものは致死性不整脈(ちしせいふせいみゃく。心臓の動きが停止し、その結果心臓はポンプとして働くことができなくなる不整脈です。突然死の大きな原因を占めています)ではありません。
ただし脈が速い状態が長期間持続すると心不全を起こしてポンプ機能が低下してくることもあります。余談ですが医療関係者はしばしば心房細動のことを英語表記であるArterial fibrilation(AF)から“エー・エフ”と呼んでいます。
心房細動が重要な病気である理由
心房細動になると心臓内で血液がよどむために、血栓(けっせん。血のかたまりのことです)ができやすくなり、その結果血栓症や心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)を起こします。血栓は特に左心房(さしんぼう)と呼ばれる部位にできやすいことが知られています。
血栓症や心原性脳塞栓症は命を落とす、あるいは重篤な後遺症を残す場合があるこわい病気です。したがってこれらの病気を防ぐ意味で、心房細動を見つけること、そしてその管理や治療は重要です。
なお血栓症や心原性脳塞栓症については他項で詳しく説明しています。
心房細動の原因
もっとも多い原因は高血圧症にともなう左室肥大です。他には弁膜症と呼ばれる心臓の弁の異常(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症)、心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症)、心不全、狭心症、心筋梗塞などが原因になります。
心不全、狭心症、心筋梗塞については他項に詳しく記載しているので、関心のある方はご一読ください。
また先天性心疾患(生まれたときから存在する心臓の病気)に対して手術を行っている人に心房細動が起こることがあります。
さらには肺気腫(この病気の詳細は他項を参照してください)などの慢性呼吸器疾患を背景に生じる場合や、遺伝的に心房細動を起こしやすい人もいます(家族性心房細動)。
さらに甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが作られすぎて過剰になる病気)を原因として心房細動が起こることがあります。この場合甲状腺機能亢進症を適切に治療すると心房細動も治るケースがありますので覚えておくとよいでしょう。
甲状腺機能亢進症を起こす病気はひとつだけではありませんが、もっとも多い病気はバセドウ病です。動悸、発汗過多、暑がり、手の震えなどが典型的なバセドウ病の症状ですが、高齢者ではこれらの症状は自覚しにくいとされており、注意が必要です。
心房細動の症状
動悸や胸の不快感、脈の不整があげられますが、全く自覚していない人もたくさんいます。さらには心房細動を生じた初期には自覚症状があった人も、時間が経過するにつれて慣れてしまい、症状が減る、もしくは消失したと感じる場合があります。
治っているわけではありませんので注意してください。健康診断の検査項目に心電図が含まれている理由の1つは、このような自覚症状がない心房細動を発見することです。
抗凝固療法
心房細動に対して根治療法(心房細動そのものをなくしてしまう治療法。カテーテルアブレーションが代表的ですが、成功率はいまだ十分なものではありません)を行わない場合、抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)と呼ばれる血栓ができにくくする治療を行い、心原性脳塞栓症を予防する治療が行われます。
ワルファリンや新規経口抗凝固薬(NOAC(ノアック))と呼ばれる内服薬が使用されています。
まとめ
心房細動とはどんな病気?
心房細動とは
心房細動が重要な病気である理由
心房細動の原因
心房細動の症状
抗凝固療法