膵炎とは 外分泌・内分泌の働きをしている膵臓に炎症が起きる病気で、急性膵炎と慢性膵炎に大別されます。
急性膵炎は膵臓や周囲の臓器を自己消化してしまう病気で、最重症例では死亡することもあります。慢性膵炎は進行すると外分泌・内分泌機能が衰えるために消化吸収障害や糖尿病などさまざまな不具合が生じます。
自己免疫膵炎では膵臓以外の臓器にもしばしば病変を認める自己免疫の関与が疑われている病気です。
膵炎とはどんな病気?
膵炎とは
膵臓は腹部にある臓器の1つで、主に外分泌と内分泌の働きをしています。
外分泌臓器として重炭酸を分泌して胃から送られる酸性の内容物を中和する、あるいはアミラーゼ(炭水化物を分解します)、リパーゼ(脂肪を分解します)、エラスターゼ(蛋白質を分解します)などの消化酵素を分泌しています。
内分泌臓器としてはグルカゴン、インスリン、ソマトスタチンなどのホルモンを分泌しています。インスリンは細胞内にグルコースを取り込ませることにより血糖値を下げるホルモンです。このホルモンの詳細については他項を参照してください。
膵炎はさまざまな原因によりこの膵臓に炎症を生じる病気です。病態から大きく急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎の3つに分類することができます。同じ“膵炎”という病名がついていますが、3つの病気の治療法は大きく異なります。
急性膵炎
急性膵炎は中高年の男性に多く、上述した膵臓でつくられる消化酵素が急激に活性化された結果、膵臓や周囲の臓器を消化(自己消化と言います)してしまう病気です。
原因としてはアルコールが最多で3割強を占めており、特に男性の急性膵炎の原因として重要です。次に多い原因は胆石(2割5分ほど)で、女性の急性膵炎に多い原因です。
他には血清中性脂肪高値(かなり高い数値で、500~1000mg/dlくらい)、膵臓の腫瘍、膵・胆管合流異常などがあります。また“特発性”と分類されている原因がはっきりしない急性膵炎も2割強ほど存在しています。
重症度は軽症から重症までさまざまですが、最重症になるとショックや多臓器不全を起こし、最悪の場合は死に至ります。一方で軽症の場合、治癒すると上述した外分泌機能や内分泌機能は健康な人と同じレベルを保つことができる場合もあります。
重症度により選択する治療法が変わってくるために、重症度の判定基準がつくられています。
慢性膵炎
慢性膵炎は長期間にわたってアルコールを多飲した中高年男性に多い、腹痛などの症状の出現や軽快を繰り返しながら、次第に上述の膵臓の外分泌、そして内分泌機能が衰えていく病気です。男性の方が女性の3倍程度多い病気です。
原因として男性では急性膵炎と同様にアルコールが最多で、一方で女性は特発性のものが多い傾向にあります。病気は外分泌・内分泌機能がまだ保たれている代償期と、回復が期待できないレベルにまで低下した非代償期、そしてその移行期に分類されています。
禁酒や禁煙は全経過において重要ですが、他に非代償期と非代償期とでは治療方針が異なります。外分泌機能が衰えると、消化や吸収が不十分となり、下痢や体重減少が起こります。また内分泌機能の不具合、特にインスリン分泌不全が生じる結果、糖尿病となります。
慢性膵炎を背景として起こった糖尿病はよくある1型糖尿病や2型糖尿病(これらの糖尿病については他項で詳しく説明しています)ではなく、膵性糖尿病として分類されています。
多くの膵性糖尿病の方はインスリン注射を必要としますが、しばしば低血糖(血糖値が危険なレベルまで下がりすぎる状態です。詳細は他項参照。)を起こすなど血糖コントロールに難渋することが知られています。
自己免疫性膵炎
高齢男性によく起こる慢性に進行する膵臓の病気で、自己免疫の関与が強く疑われている病気です。
上記の急性膵炎や慢性膵炎とは異なり、膵臓以外の臓器にもしばしば病変を認めることから(硬化性唾液腺炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症など)、自己免疫膵炎は膵臓の病気というよりも、全身の病気の一部ではないかとする説もあります。
膵癌との鑑別が必要になる場合があり、その際には膵生検が行われます。治療は副腎皮質ステロイド薬が第一選択となります。
まとめ
膵炎とはどんな病気?
膵炎とは
急性膵炎
慢性膵炎
自己免疫性膵炎