帯状疱疹 はどの知覚神経の領域でも起こりますが、 顔 に生じる三叉神経領域の帯状疱疹はさまざまな眼合併症やRamsay Hunt症候群を合併することがあり、注意が必要です。特に鼻背部から鼻尖の皮膚症状はHutchinson徴候と呼ばれ、高率に眼合併症をともなうことが知られています。
顔面の帯状疱疹に対しては入院の上で抗ウイルス薬を点滴で使用します。
顔に生じた帯状疱疹は要注意です
帯状疱疹の好発部位
帯状疱疹は数日~1週間程度の片側神経痛が先行した後に紅斑や皮疹、水疱が出現する病気です。原因は、神経の脊髄後根神経節(せきずいこうこんしんけいせつ)と呼ばれる部分に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)です。
加齢(帯状疱疹の好発年齢は50歳以上です)、病気、ストレス(年末年始やお盆明け、連休明けなど多忙な時期の疲労が出る頃にしばしば発症します)などで免疫力が低下することで、水痘・帯状疱疹ウイルスが増殖して知覚神経に沿って感染し帯状疱疹を発症します。
どの知覚神経においても起こりえますが、最も多いのは胸髄領域と呼ばれる部分で、胸や背中に帯状疱疹が発症します。次いで多いのが顔面の知覚をつかさどる三叉神経(さんさしんけい)領域です。
顔面に生じた帯状疱疹は専門医の受診が必要
帯状疱疹はときに重篤な合併症を起こします。頭や首では脳炎、上述の胸髄領域では脊髄炎や排尿障害、腰仙髄領域では排尿障害を合併する場合があります。
そして三叉神経領域=顔面に生じた帯状疱疹は眼の合併症やRamsay Hunt症候群(ラムゼイ・ハントしょうこうぐん。めまい、難聴、顔面神経麻痺などが出現します)を起こす場合があり注意が必要です。
一般的には帯状疱疹は皮膚科が担当することが多い病気ですが、これらの合併症が出た場合には眼科や耳鼻科(Ramsay Hunt症候群)、泌尿器科(排尿傷害)など専門医の受診が必要になります。
ちなみに顔面に生じた帯状疱疹は入院した上で抗ウイルス薬を点滴で使用することが一般的です。詳しくは「帯状疱疹の薬」の項をご覧ください。
帯状疱疹の眼合併症
三叉神経第1枝領域の帯状疱疹は顔面のうち特に額やまぶた、鼻尖部に皮膚症状を生じます。
その一方で三叉神経第1枝は、前頭神経、涙腺神経、鼻毛体神経に分かれ、そのうち鼻毛体神経は鼻尖領域とともに眼球、角膜、結膜などに分布するために、三叉神経第1枝領域の帯状疱疹は角膜炎、結膜炎、虹彩毛様体炎(こうさいもうようたいえん)、強膜炎、視神経炎、眼筋麻痺などさまざまな眼症状を合併することがあります。
そのためにこの三叉神経第1枝領域の帯状疱疹は眼部帯状疱疹とも呼ばれています。頻度が高いものは角結膜炎で50~60%とされています。特に重篤な合併症としては続発性緑内障、視神経炎などがあります。緑内障で視力が障害されると、治療を行っても回復しない場合もあります。
また視神経炎合併は5%未満と頻度は少ないものの、比較的急に視力や視野が障害される特徴があります。
Hutchinson徴候
上記のように鼻毛体神経が支配している鼻背部から鼻尖に皮膚症状が出現している場合には、水痘・帯状疱疹ウイルス感染が鼻毛体神経に波及していることを意味します。この場合、上記の眼合併症を高率に引き起こすために、特に注意が必要です。
鼻背部から鼻尖に帯状疱疹の皮膚症状を認めることをHutchinson徴候(ハッチンソンちょうこう)と言います。
その一方で鼻部に水疱などの症状を生じていても、三叉神経第2枝領域の帯状疱疹の場合は、眼合併症は少ないとされています。これは三叉神経第2枝の分枝が第1枝のように眼球内に分布していないためと考えられています。
Ramsay Hunt症候群
耳介(じかい)の知覚の一部は三叉神経の第3枝が支配しています。Ramsay Hunt症候群は顔面神経麻痺、耳帯状疱疹、第Ⅷ脳神経症状(難聴、めまい、耳鳴)を3主徴とする一連の症候群ですが、3主徴すべてがそろうのは全体の60%程度にすぎません。
顔面神経麻痺についてベル麻痺との鑑別が重要です。Ramsay Hunt症候群やベル麻痺については他項で詳しく説明しています。
まとめ
顔面に生じた帯状疱疹は要注意です
帯状疱疹の好発部位
顔面に生じた帯状疱疹は専門医の受診が必要
帯状疱疹の眼合併症
Hutchinson徴候
Ramsay Hunt症候群