胆嚢管が胆石などで詰まると胆嚢炎が起こります。突然起きる急性胆嚢炎は典型的には右上腹部に激しい痛みを感じますが、特に高齢者では痛みを自覚しない場合も少なくありません。痛み以外にむかつき・嘔吐、発熱、黄疸などを伴うこともあります。診断には超音波検査がとても有用です。
急性 胆嚢炎 では入院した上で、手術を行い、胆嚢を摘出することが治療の基本となります。
胆嚢炎
胆嚢炎とは
胆嚢で作られた胆汁は胆嚢管と呼ばれる管を通って排出されます。この胆嚢管が胆石などの原因で詰まってしまうと、胆汁が行き場を失って胆嚢が腫大し、胆嚢炎が起こります。突然起きた胆嚢炎を急性胆嚢炎、長期間継続している場合を慢性胆嚢炎と言います。
胆嚢管が詰まる原因の大多数(90~95%)は胆石です。したがって、以前に健診などで胆石があることを指摘されている人に、下記のような症状が起きた場合は急性胆嚢炎を疑う必要があります。
まれに胆石が存在しないにもかかわらず急性胆嚢炎を起こす人がいます。無石性胆嚢炎を呼ばれ、重症な病態に合併することが多いとされています。特に高齢者では胆嚢癌を合併している場合があり、60歳以上の急性胆嚢炎の約9%に胆嚢癌が合併していたという報告もあります。
この項では急性胆嚢炎を中心に話を進めていきます。
急性胆嚢炎の症状
急に起こって持続する腹痛で気づかれることが多いです。痛みの場所は右上腹部に多く、“右上腹部に棒をさしこまれるような痛み”が典型的です。ただし心窩部(みぞおち)に痛みを感じる場合や、痛みが背中に放散する場合もあります。
痛みはとても激しいことが多く、重症感がありますし、耐えきれない激痛となって救急車を要請する方も少なくありません。もちろん個人差はあるので、比較的軽い痛みの場合もあります。腹痛と同時にむかついたり、嘔吐したりすることもよくあります。
また38度以上の高熱や寒気、ふるえ、そして黄疸を伴うことも少なくありません。難しいのは腹痛を全く訴えない急性胆嚢炎の高齢者がいることです。この場合、発熱もなく、嘔吐や食欲がないこと、あるいはだるいことだけを訴える場合があります。
マーフィー徴候という急性胆嚢炎でよく見られる所見があります。これは医師が右上腹部を触診した状態で患者さんが息を深く吸うと、痛みが悪化してしまうために思わす息を止めてしまう、というものです。この所見も高齢者では認めないことがしばしばあることが明らかになっています。
急性胆嚢炎の検査
超音波検査(エコー)が急性胆嚢炎の診断に非常に有用です。代表的な急性胆嚢炎の超音波所見として胆嚢の腫大(長径>8cm、短径>4cm)、胆嚢壁の肥厚(>4mm)、胆石の存在、あるいは胆嚢の周りに液体が貯留していることが観察できます。
医師が患者さんに当てているエコーの先端(超音波プローブ)を胆嚢の上で動かすと、患者さんが痛みを訴えることがあります。エコー・マーフィー徴候と呼ばれており、急性胆嚢炎を強く示唆する所見です。
急性胆嚢炎の治療
全例入院した上で、手術を行い、胆嚢を摘出することが急性胆嚢炎の治療の基本です。また食事や飲水は禁止となり、点滴で水分や栄養を補います。急性胆嚢炎では細菌感染を合併していることも多いので、抗生物質も点滴で投与されます。
入院後早期の胆嚢摘出が推奨されており、早い場合は症状が出てから1~2日で手術となる場合もあります。ただし急性胆嚢炎の重症度や病態によって手術の方法や、手術時期は変わってきます。また患者さんのリスク(心臓や肺、腎臓に持病や不具合がある場合など)も考慮されます。
手術は腹腔鏡を使用して行われることが多いですが、状況によっては開腹手術が選択されます。何らかの理由により急いで手術を行わない場合、よく施行される治療が胆嚢ドレナージです。
これは胆嚢にチューブや針を入れて、胆嚢内にたまっている胆汁を外に出す治療です。胆嚢へのアプローチによって、治療法がいくつか存在します。主にPTGBD(経皮経肝胆嚢ドレナージ)とPTGBA(経皮経肝胆嚢吸引穿刺法)のいずれかを施行されることがほとんどです。
まとめ
胆嚢炎
胆嚢炎とは
急性胆嚢炎の症状
急性胆嚢炎の検査
急性胆嚢炎の治療