運動療法は食事や薬物療法とともに 糖尿病 治療 の柱です。運動療法を行うことで血糖値改善の他にもさまざまな効果が期待できます。有酸素運動でも筋力トレーニングでもよいので実行しやすいものから開始するとよいでしょう。
ただし始める前には主治医の先生に注意点などを相談してください。運動時間などを記録する、誰かと一緒に運動するといった工夫が長続きするコツです。
糖尿病の治療
糖尿病治療の柱
糖尿病合併症(詳細については他項を参照してください)の発症や進行を予防するために、血糖を適切にコントロールすることが必要です。血糖コントロールの方法として、食事療法、運動療法、そして薬物療法(くすり)の3つが柱になります。
いずれも大事なのですが、糖尿病専門の医師によると、もっとも大切なのは食事療法であるといいます。頑張ってたくさん運動する、あるいはインスリン注射など糖尿病の薬を多量に使用しても、食事療法が不適切な場合、なかなか血糖値はよくならないそうです。
この項では糖尿病の治療法3つのうちで、特に運動療法について説明していきます。なお食事療法や薬物療法について詳しく知りたい方は他項を参照していただけると幸いです。
運動療法のメリット
運動してからだのエネルギーを使うと、血糖値は下がります。さらに運動でインスリン(血糖値を下げる働きをするホルモンです)の働きが高まります。このことを専門用語でインスリン感受性が高まる、といいます。
他にも運動療法には、ストレス発散になる、血行がよくなる、からだにたまった余分な脂肪が減少する、筋肉が鍛えられる、さらには生活の活動度が高くなる、といったたくさんのメリットがあります。
長期的にはこれらのメリットによって将来の寝たきりの予防や、死亡率の低下にもつながることが期待されます。
実際に日本人の糖尿病患者さんを対象にした研究で、余暇に運動をたくさんしている人の方が、あまり運動していない人よりも、脳梗塞の発症や死亡が少なかったことが報告されています(Diabetologia、2013)。
どういった運動がよいのか
ひと昔前までは、糖尿病患者さんには筋力トレーニングよりも有酸素運動がよいとされていました。しかし最近では有酸素運動、筋力トレーニングのいずれもが血糖コントロールの改善に有効であることがわかってきています。
したがって運動メニューについては、実行しやすい運動から始めて、余裕があれば他の運動も追加するといった柔軟な取り組みでよいでしょう。足が不自由な方は上半身の筋力トレーニングだけても意味があると言えます。
ポイントは週末だけに集中して運動するよりも、できるだけ毎日行うことができる運動を選ぶことです。そういった点ではウォーキングがお勧めです。可能であれば、そぞろ歩きよりも早い、“きびきびと歩く”くらいのスピードで歩くとよいでしょう。
運動療法の注意点
特に高齢者では、心臓・肺の機能や膝などに問題を抱えている人が少なくありません。場合によっては、せっかく開始した運動療法によって、心筋梗塞や心不全といった心臓の病気や、膝や腰などの整形外科的な病気を生じる危険があります。
したがって運動療法を開始する際には必ず主治医の先生に運動療法の可否や注意点についてアドバイスをもらう必要があります。運動療法に詳しい先生であれば、運動内容についても相談にのってくれるでしょう。
さらに運動中に胸の圧迫感や動悸を感じる、あるいは足腰に痛みを感じるなど異常が生じたときには無理をせずに運動を中止し、主治医の先生に相談することも重要です。
そういった意味では、何か異常があったときに助けを求めやすい人が多い場所で運動する、誰かと一緒に運動する、携帯電話やスマートフォンを持っておく、さらにはタクシー代程度の現金はもっておく、といったことも大事になります。
当然ですが、運動前後での準備体操(ウォーミングアップ)と整理体操(クールダウン)も忘れずに行うようにしてください。
運動療法を長続きさせるコツ
行った運動を数値化して手帳やカレンダーに書き込むと、達成感が出ます。時計で記録した運動時間でもよいでしょうし、万歩計を使って歩数を測定してもよいでしょう。
主にマラソンやジョギングをしている人が使うGPS付きの腕時計では走行距離や時間はもちろん、消費カロリーまで計算してくれるものもあります。他には、ひとりでするのではなく、誰かと一緒に運動することも長続きの秘訣です。
ご家族や友人と一緒にウォーキングするのでもいいでしょうし、地域のみんなで太極拳やハイキングをするグループに参加するのもよいでしょう。時間や経済的にゆとりがあれば、スポーツジムに通うのも有効です。
このときはトレーナーさんに運動メニューを作成してもらって実行度をチェックしてもらう、あるいはヨガ教室など集団で行うプログラムに参加するようにすると、長続きします。
まとめ
糖尿病の治療
糖尿病治療の柱
運動療法のメリット
どういった運動がよいのか
運動療法の注意点
運動療法を長続きさせるコツ