高血圧 を合併している 糖尿病 患者は数多く存在し、糖尿病合併症の発症や進行を防ぐために血圧の適切な管理がとても大切です。血圧の目標値として診察室血圧で130/80mmHg未満、家庭血圧で125/75mmHg未満にすることが推奨されています。
降圧薬としてまずACE阻害薬かARBを使用しますが、これだけで血圧目標も達することが難しい場合も多く、複数の種類の降圧薬を必要とする場合も少なくありません。
高血圧合併糖尿病患者の血圧管理
糖尿病と高血圧
糖尿病がある人では、糖尿病がない人と比べて高血圧を有する頻度がおよそ2倍程度高いことが知られています。逆に高血圧がある人では、血圧が正常である人と比較すると糖尿病に罹患する頻度は2~3倍高いとされています。
したがって糖尿病と高血圧の両方をコントロールする必要がある人は非常にたくさんいます。このことはメタボリックシンドロームの診断基準に血糖値と血圧値が入っていることからもおわかりいただけると思います。
一方で糖尿病患者において心血管疾患(大血管障害)、糖尿病性腎症、さらには糖尿病性網膜症などの糖尿病合併症の発症、あるいはその進行を防ぐためには血糖をよい数値にコントロールすることはもちろん、血圧を適切にコントロールすることがとても大切です(糖尿病性腎症など糖尿病合併症については他項を参照してください)。
この項では糖尿病がある人の血圧の目標血や、推奨されている血圧の薬について説明していきます。
糖尿病患者の血圧管理目標値
収縮期血圧(いわゆる“上の血圧”)が130mmHg未満、拡張期血圧(いわゆる“下の血圧”)は80mmHg未満にすることが推奨されています。
ただしこれは病院や診療所で測定した際の数値で(これを診察室血圧と言います)、家庭に血圧計がある場合は、家庭血圧での収縮期血圧が125mmHg未満、収縮期血圧が75mmHg未満と少し低い値を目指すように勧められています。
また特に75歳以上の高齢者ではまずは診察室圧150/90mmHg、家庭血圧145/85mmHgと少し高めに目標値を設定し、130/80mmHg未満まで下げるかは個々の患者さんの状況によって考慮する医師もいます。
家庭血圧測定の重要性
自宅では血圧が高くないにもかかわらず、病院で測定した時には血圧計の数値が高く出ることを経験した人は少なくないと思います。白衣高血圧と呼ばれる現象で、逆に自宅では血圧が高いのに診察室では正常な数値が出る人もいます(仮面高血圧と呼ばれています)。
白衣高血圧や仮面高血圧を見過ごさないためにも、自宅で血圧を測定することは大切です。さらに最近、診察室血圧よりも家庭血圧での高血圧の方が心血管疾患のより高いリスクとなることがわかってきています。
したがって、患者さんに家庭での血圧を記録して、病院での診察時に記録を持参するように指導される場合も少なくありません。
また自分で毎日血圧を測定すると、血圧に対する意識が高まり、薬の飲み忘れが減る、あるいは塩分制限を徹底する、といったメリットもあります。
ちなみに家庭血圧測定のタイミングは、朝は起床後1時間以内・排尿後・1~2分間じっと静かに座った後・朝の血圧薬服用前・朝食前、夜は就寝前・1~2分間じっと静かに座った後、がそれぞれ推奨されています。
降圧薬
現在日本ではさまざまな種類の血圧を下げる薬(降圧薬)が処方されています。
その中でも糖尿病を有する人にはRAS(ラス)阻害薬と呼ばれる薬をまず使用するように推奨されています(第一選択薬)と言います。
RAS阻害薬にはACE(エー・シー・イー。アンジオテンシン変換酵素)阻害薬とARB(エー・アール・ビー。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の2種類があり、糖尿病の有無にかかわらず、いずれも高血圧の治療に広く使用されています。
ただしRAS阻害薬は腎臓の機能が低下している場合や血液中のカリウム(電解質の1種です)値が上昇している場合は使用することが難しいケースがあります。
さらに特に糖尿病患者ではRAS阻害薬だけで血圧目標を達成することが難しい場合も多く、その場合は2種類、3種類と複数の降圧薬を使用することになります。Ca(カルシウム)拮抗薬や利尿薬と呼ばれる降圧薬を組み合わせることがほとんどです。
まとめ
高血圧合併糖尿病患者の血圧管理
糖尿病と高血圧
糖尿病患者の血圧管理目標値
家庭血圧測定の重要性
降圧薬