糖尿病 治療薬のなかには低血糖といって危険なレベルにまで血糖値を下げてしまうものがあります。低血糖が起こると空腹感などの症状が出現しますが、個人差があります。
ただし 空腹感 は必ずしも低血糖を意味せず、血糖値の測定が必要です。食事・運動療法のみの人や、低血糖リスクがほとんどない薬で治療している人は空腹感に神経質になる必要はありません。
ただしまれですが、糖尿病薬以外の薬でも低血糖を生じる場合があります。
糖尿病患者さんが異常な空腹感を感じるときは要注意!
糖尿病治療薬と低血糖
糖尿病の人が食事療法(糖尿病の食事療法については他項を参照してください)や運動療法で十分に血糖値が下がらないときにはさまざまな内服薬や注射(自己注射薬と言って自分で自分に注射します。
インスリンとGLP-1(ジー・エル・ピー・ワン)受容体作動薬)の2種類があります)が用いられます。
糖尿病治療薬については他項で詳しく説明していますが、このうち内服薬のSU(エス・ユー)薬、速効型インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、そして注射薬のインスリンは低血糖と呼ばれる血糖値が下がりすぎてしまう状態になる危険があります。
低血糖を起こすとさまざまな症状が出現しますが、“異常におなかがすく”と訴えるケースがあります。低血糖は血液中の糖が不足している非常事態で、特に脳への糖の供給が不足すると脳にダメージが生じる場合があります。早急な対応が必要な状態です。
低血糖の症状
低血糖の症状は、低血糖に体が反応するアドレナリンなどの作用による自律神経症状と、脳の糖不足による中枢神経症状とに分類することができます。
まず自律神経症状が先行し、さらに低血糖が進む(=血糖値がいっそう低下する)と中枢神経症状が出現します。
上述した空腹感は自律神経症状の1つで、他には発汗、動悸、手のふるえなどがあります。症状は1つだけのこともありますし、複数が同時に出ることもあります。
どの症状が出やすい、あるいは気づきやすいかについては個人差があります。なかには自分では全く症状を自覚していない低血糖の人も存在します(無自覚性低血糖)。
ただし以前の低血糖の際に空腹感を自覚したことがある人では、次に低血糖になった時もやはり空腹感が前面に出る可能性が高いです。
なお中枢神経症状としては錯乱、眠気、異常行動、言葉が不明瞭になるなどの症状があります。
空腹感=低血糖でありません
低血糖は適切に対処することが必要な緊急事態ですが、空腹を感じたときに必ず低血糖になっているとは限りません。単におなかがすいているだけかもしれないのです。
低血糖の有無を確かめるには、現時点では実際に血糖値を測定するしか方法がありません。医療機関で血糖を測定してもらうか、自分で血糖値を測定する(自己血糖測定と呼ばれます)ことになります。
ただし医療機関での採血時に必ず空腹感が出現しているとは限らないので、自分で血糖値を測定する方が実際的です。
上記のインスリンあるいはGLP-1受容体作動薬を処方されている人は自己血糖測定が保険適応になります。処方されていない人でも自費にはなりますが、薬局で自己血糖測定の器財を購入することができます。
低血糖を起こす薬剤を使用していない人は神経質になる必要はありません
食事療法や運動療法、あるいは低血糖がほぼ起こらない糖尿病治療薬(DPP-4(ディー・ピー・ピー・フォー)阻害薬、ビグアナイド薬、インスリン抵抗性改善薬、SGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)阻害薬、GLP-1受容体作動薬)で治療されている人は空腹感を感じても低血糖である可能性はほとんどないといってよいでしょう。
主治医の先生との相談は必要ですが、かえって高血糖になる可能性が高いので、空腹感を自覚しても砂糖を摂取するなどの対応はやめておいた方がよいでしょう。
ただしこれらの薬剤を上記の低血糖を起こす薬剤と併用している場合(例えばSU薬とDPP-4阻害薬との併用)は低血糖が起こる危険性があることに注意が必要です。
糖尿病治療薬以外にも低血糖を起こす薬剤があります
一部の抗不整脈薬(シベンゾリンなど)や抗生物質(ニューキノロン系抗菌薬)などでは低血糖を起こす場合があります。起こしたときの諸症状は糖尿病治療薬で起こった場合と同様です。
頻度は少ないのですが、特に高齢者や腎臓の機能が低下した人に起こりやすいとされています。心当たりがある場合は、かかりつけの先生に相談されることをお勧めします。
まとめ
糖尿病患者さんが異常な空腹感を感じるときは要注意!
糖尿病治療薬と低血糖
低血糖の症状
空腹感=低血糖でありません
低血糖を起こす薬剤を使用していない人は神経質になる必要はありません
糖尿病治療薬以外にも低血糖を起こす薬剤があります