“めまい”を低血糖症状だと誤解する糖尿病の人がいますが、多くの場合は低血糖ではありません。“ めまい ”を訴える 糖尿病 の人に多い原因は、起立性低血圧です。
糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬による脱水や高血圧の薬が起立性低血圧を起こすことがあります。一方で末梢性めまいや危険な中枢性めまいを起こしている場合もあります。
特に中枢性めまいに含まれる小脳梗塞や脳幹梗塞は糖尿病がリスクとなるために注意が必要です。
糖尿病患者さんが“めまい”を訴えたら?
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“めまい”は低血糖症状でないことが多い
インスリンやSU薬(エス・ユーやく)など低血糖を生じる薬剤(これらの低血糖を生じる薬についての詳細は他項をごらんください)を使用している人が低血糖についての説明をうけると、めまい症状が生じた際に低血糖が起きたと判断する人が少なくありません。
低血糖の症状には動悸や異常な空腹感などさまざまなものがありますが(詳細は他項を参照してください)、めまい症状は典型的ではありません。低血糖でないのに、低血糖に準じて糖分を摂取すると当然ですが血糖コントロールが悪化してしまいます。
ただし絶対に低血糖ではないとも断定することはできませんから、頻回にめまい症状が出現する人は、砂糖を食べる前に糖尿病の主治医の先生に相談されることをお勧めします。
起立性低血圧を“めまい”と表現する糖尿病患者さんがいます
起立性低血圧とは立ち上がったときに血圧が下がりすぎるために、脳の血流が低下する病気で、いわゆる“立ちくらみ”のことです。厳密には起立性低血圧はめまいではないのですが、しばしば患者さんは“めまいがする”と言って医療機関を受診されます。
正常の状態であれば立ち上がっても自律神経の働きで血圧はあまり下がりすぎないように調節されています。しかし、糖尿病の合併症(糖尿病神経障害)のために自律神経が障害されると、この調節ができず、血圧が下がりすぎてしまうのです。
糖尿病性神経障害の出現には個人差がありますが、ある程度の期間(例えば10年以上など)糖尿病を患った後で出現します。
また糖尿病合併症のなかでも、糖尿病神経障害は比較的早い時期から出現するために、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症など他の合併症がある人は、糖尿病神経障害を合併している可能性が高いと言うことができます。
SGLT2阻害薬による脱水に注意
脱水でも上述した起立性低血圧を生じることがありますが、糖尿病治療のための飲み薬のなかに、脱水を起こしやすいものがあることに注意が必要です。
SGLT2阻害薬(エス・ジー・エル・ティー・ツーそがいやく)と呼ばれる種類の薬で、現在複数の製薬会社からそれぞれ名前の異なる薬剤が発売されています。
SGLT2阻害薬は尿の中に糖分を強制的に出すことで血糖値を下げる薬です。この時糖分と一緒に水分も出て行く、言い換えると尿量が増加するために脱水が起こるのです。
高齢者に使用されることは少ない薬剤ですが、心当たりのある方は、主治医の先生に相談するとよいでしょう。汗で水分を失いやすい夏場では特に注意が必要です。
SGLT2阻害薬と同様に尿量を増やす作用がある利尿薬(心不全や腎不全、高血圧などの病気に対して処方される薬です)を服用している人も同様の注意が必要です。
過度の降圧に注意
糖尿病の人は高血圧も有している割合が高く、従って血圧の治療薬を処方されている糖尿病患者さんはたくさんいます(詳しくは“高血圧合併糖尿病患者の血圧管理”の項にまとめています)。
血圧を急に下げすぎると、やはり起立性低血圧が起こることがあります。特に血圧を下げる薬が始まったときや増量したときに多い傾向があるので注意してください。
また、さまざまな種類がある血圧の薬のなかでもα遮断薬(アルファしゃだんやく)と呼ばれる降圧薬は起立性低血圧を起こしやすいことが知られています。
本物のめまい、しかも危険なめまいを起こしている場合もある
糖尿病患者さんのめまいが全て起立性低血圧というわけではありません。良性発作性頭位めまい症やメニエール病などに代表される末梢性めまい(詳細は他項をごらんください)を起こしている場合や、頻度は少ないですが、危険な中枢性めまい(詳しくは他項)を生じている場合もあります。
“頻度は少ない”と書きましたが、中枢性めまいの代表的な病気である小脳梗塞や脳幹梗塞は、動脈硬化が原因で起こる病気であるために、糖尿病の方は血糖値に問題がない人に比べると多い傾向があります。
糖尿病以外の動脈硬化の危険因子(高血圧、脂質異常症、喫煙、脳梗塞の家族歴など)を有している人は特に注意が必要です。
まとめ
糖尿病患者さんが“めまい”を訴えたら?
“めまい”は低血糖症状でないことが多い
起立性低血圧を“めまい”と表現する糖尿病患者さんがいます
SGLT2阻害薬による脱水に注意
過度の降圧に注意
本物のめまい、しかも危険なめまいを起こしている場合もある