多くの 糖尿病 患者が日中の 眠気 に悩んでいます。糖尿病患者は適切な睡眠時間が確保できておらず、睡眠の質も障害されています。睡眠時無呼吸症候群(SAS)や神経障害による下肢の疼痛などがその原因です。
SASは睡眠中に頻回に無呼吸となることで睡眠が障害され、日中に耐えがたい眠気に襲われる病気です。ほとんどが閉塞性SASと呼ばれるタイプで、診断にはポリソムノグラフィーと呼ばれる検査が重要です。
眠気に悩む糖尿病患者さんは少なくありません
糖尿病と睡眠障害
糖尿病は全身にさまざまな合併症をもたらすことが知られています(糖尿病の合併症についての詳細は他項をごらんください)。網膜症、腎症、神経障害、大血管障害が特に有名ですが、じつは睡眠が障害されるために日中に眠気を感じて困っている糖尿病患者さんも少なくありません。
実際に糖尿病患者では適切な睡眠時間が確保できていない傾向があることが日本から報告されています(Nakajima Hら。Sleep Med,2007)。
さらにPallayovaらは糖尿病患者では非糖尿病患者と比較して徐波睡眠が有意に減少していることを明らかにし、糖尿病患者では睡眠の質も障害されていることを報告しています(J Diabetes Sci Technol, 2010)。
反対に睡眠の質の低下が血糖コントロールを悪化させる可能性があることも報告されているために、良好な血糖コントロールを保つ上でも睡眠は重要です。
糖尿病患者に睡眠障害が多い理由
後述する睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome: SAS。“サス”と呼ばれています)、特に閉塞性SAS(OSAS)は肥満症の人にしばしば合併する病気ですが、糖尿病患者では睡眠時無呼吸症候群が健常者よりも高率に合併していることが知られています。
糖尿病患者に肥満症が多いことも理由の1つですが、糖尿病患者の睡眠時無呼吸症候群は単なる肥満による気道の閉塞では説明しきれない機序が存在すると考えられており、今後の解明が待たれるところです。
さらに糖尿病患者では神経障害による下肢の疼痛や違和感、夜間の頻尿なども睡眠障害の原因となる場合があり、実に糖尿病患者の40%が何らかの睡眠障害を生じていると言われています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に無呼吸や低呼吸の状態が頻回に出現する病気です。そのために睡眠が障害され、日中に耐えがたい眠気に襲われます。
やっかいな点は、患者自身は自分が睡眠中に無呼吸や低呼吸にはなっていることに気づいておらず、むしろ“睡眠時間がしっかりと確保しているのにどうして自分はこんなにいつも眠くてたまらないのだろう?”と不思議に思っている人が少なくないことです。
睡眠時無呼吸症候群は糖尿病と関係するだけでなく、心血管疾患との関連も明らかになってきていること、さらに睡眠時無呼吸症候群による眠気が運転中の交通事故の原因となることから、特に近年注目されています。
SASは閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)に分類されますが、以下には臨床的現場での問題とるケースのほとんどを占めるOSASについて説明します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstuructive sleep apnea syndrome:OSAS)は壮年~中年の肥満した男性によく起こります。日中の症状としては上述の眠気が代表的で、眠気は我慢できないくらいくらいに強くなることも少なくありません。
他には集中力低下や全身倦怠感を訴える人もいます。夜間の症状としては激しいいびきや無呼吸(数秒~数十秒呼吸が止まって、その後自然に呼吸が再開する)が典型的です。これは上記のように空気の通り道(上気道)が閉塞するためです。
他に異常な体動や夜間の頻尿を伴うケースもあります。他に起床時の頭痛を自覚する場合があります。これは睡眠中の無呼吸による高二酸化炭素血症が血管拡張を起こすことが原因です。
睡眠時無呼吸症候群を担当する科は病院によって異なりますが、睡眠外来、耳鼻咽喉科、呼吸器内科などの医師が診療している病院がほとんどです。
入院してポリソムノグラフィーと呼ばれる睡眠検査を行って診断が進められます。
まとめ
眠気に悩む糖尿病患者さんは少なくありません
糖尿病と睡眠障害
糖尿病患者に睡眠障害が多い理由
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)