採血して血糖値やHbA1c値を測定することが、糖尿病の検査の基本です。しかし 尿 検査も 糖尿病 の病態を知る上でとても重要な検査です。試験紙での尿検査によって尿糖、尿タンパク、ケトン体の有無を簡単に調べることができます。さらに精密な検査法で尿中の微量なアルブミンやC-ペプチドの量を測定する場合もあります。
これらの検査によって糖尿病の重症度や腎臓の合併症の有無、さらにはインスリンの分泌量を知ることができます。
糖尿病での尿検査
尿糖
健康な人では尿に糖があらわれることはありません。しかし糖尿病になると血液中にブドウ糖がだぶついてしまい、その結果尿糖として尿に糖が検出されるようになります(“糖尿病”という病名はここから来ています)。
尿糖検査は市販されている試験紙でも簡単に行うことができる検査ですが、注意点があります。尿糖はある程度血糖値が増えないと(だいたい血糖値170mg/dlを超えたくらい)検出されないという注意点です。
空腹時など食事から時間が経過した時点での尿では糖尿病であっても尿糖が出ないことがあります。特に高齢者の場合は腎臓の機能が衰えることもあり、血糖値が170mg/dlよりさらに高くなっても尿糖が検出されない場合もありえます。
したがって尿糖が出ていないということだけて、糖尿病ではないとか、血糖コントロールがうまくいっている、などの判断はできません。
なお最近使用することが可能になったSGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)阻害薬という糖尿病の飲み薬を服用している人では、血糖値がさほど高くなくても尿糖が検出される場合があります。SGLT2阻害薬については他項を参照してください。
尿タンパク
糖尿病の合併症の一つに糖尿病性腎症と呼ばれる腎臓の病気がありますが、尿タンパクが検出されると糖尿病性腎症を合併していると診断することができます。
ただし尿タンパクが陽性になるような糖尿病性腎症はある程度進行してしまっている状態であり、尿タンパクが検出されないということのみで糖尿病性腎症を合併していないという判断はできません。
尿タンパクは試験紙によって簡便に検査することもできますし、病院などで正確なタンパク量を測定することも可能です。尿タンパクが多ければ多いほど、腎症の進行が早く腎不全になりやすいことが知られています。糖尿病性腎症の詳細については他項をご覧下さい。
尿アルブミン
アルブミンはタンパクの1種で、糖尿病性腎症では尿タンパクが検出されようになる前のステージでも尿の中にもれだすアルブミンの量が増えていることが知られています。
試験紙では測定できず、尿中の微量のアルブミンを高感度の検査法で検出します。ちなみにこの微量アルブミン尿が陽性になる時期は腎症第2期(早期腎症期)と呼ばれます。
ケトン体検査
インスリンの作用不足で血液中のブドウ糖をエネルギー源として利用することができないときに、からだはブドウ糖の代わりに脂肪をエレルギー源として利用しようとします。脂肪がエネルギーに変換する過程で出現する物質がケトン体です。
尿にケトン体が出ているかどうかは試験紙で調べることが可能です。ケトン体陽性はからだの中でブドウ糖をエネルギー源として十分に利用することができていないことを意味しています、したがって尿中ケトン体陽性の糖尿病患者さんは重症ですし、入院対象となることも少なくありません。
C-ペプチド検査
おもに入院した上で24時間分の尿をためて測定する検査です。尿中に排泄されたC-ペプチドというタンパク質はすい臓から分泌されたインスリンの量を反映します。24時間、つまり1日に尿に排泄されたC-ペプチドをみることで、その人のインスリンの分泌能力を調べることができるのです。
C-ペプチドがたくさん測定されればインスリンは良好に分泌されている、逆にC-ペプチドの値が低ければインスリン分泌は低下していると判断されます。
インスリンは血糖値が高いときには多く、血糖値が低いときには少ししか分泌されません。したがって基準値を決めることが難しいので、24時間分のインスリン分泌、すなわちC-ペプチドを検査しているのです。
まとめ
糖尿病での尿検査
尿糖
尿タンパク
尿アルブミン
ケトン体検査
C-ペプチド検査