糖尿病 で 入院 すると食事療法の徹底やインスリン療法などによって血糖値を改善させるだけでなく、同時に食事療法などの糖尿病教育と、糖尿病合併症チェックなどの様々な検査が行われます。
糖尿病は生涯にわたって病気と向き合っていくことが不可欠ですので、教育により知識を得ることがとても大切です。したがって必ずしも血糖値が高くなくても、初めて糖尿病を指摘された場合などに教育目的で入院を勧められる場合があります。
糖尿病の入院
血糖コントロール目的
血糖コントロールが悪い状態が続いていると入院を勧められます。担当の先生によって若干の違いはありますが、HbA1cという血糖コントロールの指標が8%を超えてくると、入院を検討されることが多いようです。
血糖コントロール改善目的で入院した場合、食事療法を徹底することはもちろん、インスリンを使用する場合が多いです。これはインスリン注射を使用した方が、飲み薬で治療するよりも早く血糖値が下がり、結果的に入院期間が短くてすむからです。
インスリン注射をしたから必ず一生インスリンが必要になるわけではなく、飲み薬に切り替えて退院となる場合もたくさんあります。
インスリン導入目的
インスリンは自分で自分に注射する必要があります。そのため“インスリンを処方しておくから、今日から注射してくださいね”と先生に言われても、患者さんは困ってしまうでしょう。
インスリン療法を開始することを“インスリン導入”と言います。注射針の装着・外し方(注射針は1回注射するたびに交換する必要があります)や、インスリン量の設定の方法、さらには実際の注射手技などを練習して、マスターしていきます。
そして必ずしも全員ではありませんが、自己血糖測定という簡易測定器で血糖値を検査する方法も練習します。これはインスリンを使用している患者さんでは自己血糖測定をすることが保険で認められているからです(飲み薬の糖尿病患者さんでは、自己血糖測定にかかる費用は全額自己負担になります)。
インスリン導入目的での入院では、練習回数を増やせることもあって、1日4回(各食前と眠前)の頻回注射でインスリン療法を開始することがよくあります。
一方で、時間的、あるいは経済的な事情で入院することが困難であり、外来に通院しながらインスリンを導入するケーズも増えてきています。この場合は1日1回注射で導入されることが多いようです。
外来でインスリン導入した場合、しばらくは頻回に通院することが必要になりますし、血糖コントロールが良好になるまでの期間が入院よりも長くかかってしまうことが多いです。
栄養指導
現在インスリン注射や多種多様な飲み薬などたくさんの糖尿病薬が発売されています。しかし糖尿病治療の9割は食事療法で、残りが運動療法や薬物療法であるといっても過言ではありません。食事療法が上手くいかないと、絶対に血糖コントロールは改善しません。
入院すると患者さんごとに応じた糖尿病の食事が提供されます。さらには管理栄養士さんから食事療法のアドバイスを受けることができます。
特に高齢者の場合、患者さんの生活スタイルや身体の状態が様々ですので(自分が調理するのかどうか、独居か同居か、外食が多い、胃を切除している、など)、きめ細かなアドバイスが必要になります。
栄養指導は外来通院でも受けることができるのですが、実際に入院して自分の目でみて、舌で味わい、お腹で量を感じると、理解度が劇的に変わります。
糖尿病教育
糖尿病は基本的には治ることはなく、一生つきあっていく必要がある病気です。そのために患者さんやご家族の糖尿病に対する知識を深めていただく必要があります。これは“糖尿病教育”と呼ばれ、血糖値がさほど高くなくても、教育目的で入院を勧められる場合があります。
特に初めて指摘・診断された糖尿病患者さんの場合、教育効果が高いので入院する価値が大きいです。
食事療法の他に、糖尿病とはどういう病気か、糖尿病薬の種類、糖尿病の合併症、低血糖の症状とその対処法、運動療法、フットケア(糖尿病では足が腐ってしまう壊疽という病気を起こすことが少なくないので、セルフチェックが重要になります)といった内容が必要に応じて教えてもらえます。
病院によっては“糖尿病教室”という糖尿病患者さん達が集まって集団で勉強する場が設けられています。講師は医師をはじめとして、看護師、薬剤師、理学療法士などさまざまな分野での糖尿病のエキスパートが担当しています。
合併症のチェック
入院前に検査をされていない場合、糖尿病網膜症や腎症、神経障害をチェックする検査が行われます。また24時間尿をためて自分のすい臓から出ているインスリンの量を評価する場合もよくあります。
その一方で糖尿病では動脈硬化が進みやすいことから、頚動脈や足の動脈のエコー検査、あるいは心電図での狭心症のチェックなど動脈硬化に関連した検査を行います。
特に知らないうちに狭心症や心筋梗塞を起こしている人が運動療法を開始すると大変危険ですので、そのチェックは重要です。
まとめ
糖尿病の入院
血糖コントロール目的
インスリン導入目的
栄養指導
糖尿病教育
合併症のチェック