糖尿病 の血糖コントロール目標はHbA1cの 数値 で表されます。日本糖尿病学会は具体的なHbA1cの数値として、血糖正常化を目指す際は6.0%未満、合併症予防のための目標として7.0%未満、治療強化が困難な際には8.0%未満を目指すことを提唱しています。
ただし特に高齢者の場合は、糖尿病の罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に目標数値を設定することが重要です。
糖尿病の血糖コントロール目標
「熊本宣言2013」
糖尿病の糖尿病の血糖コントロール目標は一般的にHbA1cの数値で表されます(HbA1cについては別項を参照してください)。日本における糖尿病の専門家で構成される日本糖尿病学会は、2013年に新しい目標HbA1c数値を発表しました。
熊本で開催された会合で発表されたので、「熊本宣言2013」とも呼ばれています。具体的なHbA1cの数値として、血糖正常化を目指す際は6.0%未満、合併症予防のための目標として7.0%未満、治療強化が困難な際には8.0%未満を目指すことを提唱しています。
3段階にわけている大きな理由は、使用する薬剤の種類にもよりますが、HbA1cを下げようとすればするほど、低血糖という副作用が起こりやすくなってしまうからです。とくに意識レベルが低下するほどの重度の低血糖は認知症の発症リスクを増加させてしまうことが最近わかってきました。
血糖値が高いことはもちろん体によくないのですが、無理に下げすぎることも危険だということです。よりよい血糖コントロール(言い換えればより低めの血糖値)を目指すことと低血糖とのメリット・デメリットを天秤にかけて、治療目標数値を決めてくださいね、というのが基本的な「熊本宣言2013」のコンセプトです。
低血糖の心配がない場合はよりよい血糖値を目指す
食事療法や運動療法のみで治療している方や、低血糖を起こしにくい薬剤(DPP-4阻害薬やインスリン抵抗性改善薬など)のみを使用している方は、低血糖の心配がありません。高齢であるということだけで、高血糖を漫然と許容することも適切ではありません。
HbA1cが1%増加すると、認知症のリスクが薬1.5倍に高まるという報告もあります。低血糖の心配がない場合には、目標数値の下限を設けずに、可能な限り良好な血糖コントロールをめざす必要があるでしょう。糖尿病治療薬の低血糖のリスクについては他項を参照してください。
個別にコントロール目標を設定することの重要性
「熊本宣言2013」では上記のHbA1c数値とともに、年齢、糖尿病を発症してからの期間(罹病期間と言います)、腎臓などの臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に治療目標を設定するように強調しています。
高齢者は薬の代謝が低下して薬が体内に残りやすくなる、認知機能の低下などで薬を指示通りに飲むことができない、インスリン注射をすることができない、などの理由で治療法の選択肢が限定されることが少なくありません。
また糖尿病性腎症のような腎臓の病気や、心筋梗塞・心不全などの心臓の病気も糖尿病と同時に患っている患者さんも増えてきています。さらには核家族化による見守りなどのサポート体制にも大きな個人差があります。このような個々の患者さん背景に応じた血糖コントロールを行っていくことが大切です。
高齢者の血糖コントロール目標
現時点では日本には高齢者の血糖コントロール目標の具体的な数値は発表されていません。しかし、2015年5月18日日本糖尿病学会と日本老年医学会が「1年以内を目途に、両学会合同で「高齢者糖尿病の診療ガイドライン」を作成する」と発表しました。
おそらくは、このガイドラインで高齢者の糖尿病管理目標値が示されるものと予想されます。もちろん具体的な数値が示された後も、上記のように画一的に治療目標を設定するのではなく、あくまでも個別にコントロール目標を決めていくことが大切です。
ちなみに海外のガイドラインではおおざっぱにいって、①元気な高齢者ではHbA1c7.0±0.5%、②認知症など他の病気ももっていて生活機能が低下した高齢者ではHbA1c8.0±0.5%程度を目標数値として提唱しています。
これは生活機能が低下した方では、平均余命が短くなることが予想されるので、血糖コントロールを厳格にする意義が相対的に低くなるという考えに基づいています、高齢といっても、年齢で区切っているわけではないことがわかると思います。
まとめ
糖尿病の血糖コントロール目標
「熊本宣言2013」
低血糖の心配がない場合はよりよい血糖値を目指す
個別にコントロール目標を設定することの重要性
高齢者の血糖コントロール目標