「糖尿病の食事療法(前編)」では、糖尿病の食事療法はバランスの良い食事、つまり健康食ということと説明しました。後編では、一日に必要なエネルギー量やアルコールについてご紹介します。
糖尿病 の 食事 療法については、年齢や基礎疾患により異なりますので主治医に相談してみましょう。
糖尿病の食事療法(後編)
自分に必要な1日エネルギー量
まず身長から自分の標準体重を計算します。これは身長(m)×身長(m)×22で求めることができます。例えば160cmの人であれば、1.6×1.6×22=56.3kgが標準体重です。
次にこの標準体重に25~30をかけ算をすると1日エネルギー量(kcal(キロカロリー))となります。25から30まで幅があるのは個人個人で調整が必要なためです。
肥満症がある人や高齢者の人は25に近づけ、比較的若くてやせており、身体を動かす仕事に従事している人ならば30に近づけるとよいでしょう。
50歳以降は10歳ごとに100kcal減らすことを勧めている糖尿病の先生もいます。例えば160cm・75歳の人であれば、56.3×25=1407.5となりますから、1日の摂取カロリーはおよそ1400kcalです。
食事療法は質より量
日本糖尿病学会から出されている科学的根拠に基づく糖尿病治療ガイドライン2013(南江堂)では、三大栄養素の配分について炭水化物は1日エネルギー量の50~60%、たんぱく質は20%以下を目標とし、残りを脂質で摂取することを推奨しています。
近年、炭水化物の摂取量を減らす低炭水化物食(糖質制限食もほぼ同じ意味と考えてよいでしょう)が減量や糖尿病治療に対して効果的であると話題を集めています。
しかしながら、低炭水化物食は1~2年程度の短期間であれば血糖コントロールや減量の点で有効かもしれませんが、長期的には寿命を縮めてしまう可能性があります(Noto H, et al. PLoS One 2013)。
したがって、少なくとも現時点では低炭水化物食など三大栄養素の配分にこだわるよりも、1日の摂取エネルギー量を気にする“質より量”のスタイルで食事療法を実行されることをおすすめします。
ちなみに、日本糖尿病学会は2013年3月に「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」を発表し、その中で炭水化物のみを極端に制限することは現時点では推奨されないとしています。
アルコール
アルコールは種類によらず必ずカロリー(エネルギーと同じ意味に考えていただいてよいと思います)があります。したがって、0kcalかつアルコール度数0のビール風味の飲料はあっても、0kalでアルコール度数があり、酔うことができるビール系飲料は理論上存在しません。
また同じ理由で焼酎ならよいわけでもありません。ちなみに焼酎なら糖尿病であっても飲んでよいと誤解している人は少なくありません。また、一昔前は赤ワインなら飲酒可能と信じている糖尿病患者さんがたくさんいました。
アルコールはそれ自体で血糖値を上げてしまいますし、さらに同時に摂取するおつまみのエネルギー量や塩分も問題になります。したがって、基本的には糖尿病の人にはどんな種類であってもアルコールはすすめることができません。
ただし血糖コントロールが安定しており、肝臓の機能も問題ない場合は、“適量であれば”許可されることも少なくありません。自分がアルコールを飲んでもよいのかどうか、そしてその適量についは、かかりつけの先生に相談するとよいでしょう。
まとめ
糖尿病の食事療法(後編)
自分に必要な1日エネルギー量
食事療法は質より量
アルコール