食事療法と運動療法で減量がうまくいかない場合の次の一手として減量手術があります。そのうち腹腔鏡下で行うスリーブ状胃切除術は日本でも2014年から保険適応が認められています。
手術により 体重減少 だけでなく、 糖尿病 患者の血糖コントロール改善も期待できます。日本肥満治療学会が2013年に肥満手術の適応基準を示しています。
肥満手術が保険適応に!体重減少できない糖尿病患者にも朗報?
肥満手術が保険適応になった!
肥満に糖尿病などの健康障害を合併した「肥満症」ではなんと言っても体重を減少させることが肝心です。内科的治療(食事療法と運動療法)が減量の基本ですが、特にBMI35kg/m2以上の「高度肥満」では食事と運動療法だけては減量がうまくいかない場合も少なくありません。
最近特に海外で、高度肥満に対して減量手術(Bariatric surgery)と呼ばれる手術が行われています。
これらの手術は体重減少だけでなく、糖尿病の血糖コントロールなど代謝機能の改善にも役立つという報告が相次いでいることから、代謝改善手術(Metabolic surgery)とも呼ばれるようになってきています。
血糖コントロール改善には体重減少だけでなく、消化管からのGLP-1やGIPなどのホルモン分泌が変化することも関係しているのではないかと考えられています。
日本ではまだ実際に手術された人の数は少ない(2011年で170例)ですが、2014年4月からは一部の肥満手術が保険適応になりました。
おおまかに表現すると、今までは美容整形手術のように費用が前額自己負担であった(実施施設や患者さんのコンディションで変わりますが日本で肥満手術を自己負担で受けた場合およそ200万円程度かかると言われています)ものが、盲腸や胃がんの手術と同じように3割など一部だけを負担すればすむように制度が変更されたのです(実際の自己負担額は各医療機関に問い合わせてください)。
したがって今後は日本でも徐々に手術件数が増加していくものと考えられます。
保険適応となった肥満手術
肥満手術には胃バンディング術、スリーブ状(袖状)胃切除術、胃バイパス術など複数の術式がありますが、日本では現在のところスリーブ状胃切除術だけが腹腔鏡下で行う肥満手術の保険適応となっています。
この手術は胃の一部を切除して細長い胃を作る術式で(切除した胃は取り出します)、高い安全性と比較的良好な体重減少効果(超過体重減少率は60%程度)と糖尿病改善効果が得られることからよく行われています。
体重減少効果と糖尿病改善効果だけを比べると胃バイパス術の方がより効果が大きい(胃バイパス術の超過体重減少率は70%程度)ですが、残った胃の部分を内視鏡(胃カメラ)で観察する際には、スリーブ状胃切除術の方が有利です。
したがって胃がんの発症率が比較的高い日本人では、スリーブ状胃切除術の方が適しているのではないかと考えられています。
手術適応基準
2013年に日本の肥満治療学会が発表したガイドラインでは原則として18歳から65歳までの肥満患者で、6ヶ月以上の内科的治療を行ったにもかかわらず、有意な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が認められず、以下のいずれかの条件を満たすものとされています。
1つめは減量が主目的の手術(Bariatric surgery)の場合でBMI35kg/m2以上が適応になります。
2つめが合併している病気(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の手術(Metabolic surgery)の場合で、糖尿病か、あるいはは糖尿病以外の2つ以上の合併する病気を有しているBMI32kg/m2以上の人が適応になります。
ただしこれらの適応基準を満たしていても、コントロール不良の精神疾患を合併している場合には手術の適応から外れるために注意が必要です。
補足
確かに肥満手術は劇的な体重減少効果が期待できますが、手術時の危険が全くないわけではありません。また問題なく手術が終了しても、例えばスリーブ状胃切除術では逆流性食道炎などの合併症が起こりやすいという欠点があります。
さらに手術が終了してから10年、20年後など長期間が経過した後の合併症や不具合についてはまだまだデータが不足していると言わざるをえません。あくまでも肥満手術は体重減少のための最終手段と考えておいた方がよいでしょう。
まとめ
肥満手術が保険適応に!体重減少できない糖尿病患者にも朗報?
肥満手術が保険適応になった!
保険適応となった肥満手術
手術適応基準
補足