重症の 糖尿病 では糖をエネルギー源として上手に利用することができなくなるために、体内の脂肪を分解してエネルギー源とするようになります。その結果、食事をとっているのに 痩せる 場合があります。
脂肪をエネルギー源として利用する過程でケトン体と呼ばれる物質が発生しますが、たくさんケトン体が体内に蓄積したケトアシドーシスという状態にまで至ると、命を失う場合もあります。
糖尿病で痩せてきたら重症です
糖は細胞のエネルギー源です
体の中を流れる血液には糖分が含まれており、この糖分のことを血糖と呼びます。筋肉や脳など全身の細胞は活動するために、この血糖をエネルギー源として利用しています。
ところが、血液から全身の細胞に血糖が適切に移動することができなくなると、使われない血糖が血液中に増えるために、血糖の量を示す数値、すなわち血糖値が高くなります(この状態を高血糖と呼びます)。これが糖尿病の病態です。
つまり糖尿病で高血糖の人は糖をエネルギーとして上手く利用することができていない状況に陥っているのです。ちなみに血液中から全身の細胞に血糖を“適切に”移動させているのがインスリンと呼ばれるすい臓から分泌されるホルモンです。血液中から細胞に血糖が移動する結果、血糖値が下がります。
高血糖が持続すると体重が減少します
食事をきちんと食べて、適切に消化、腸から問題なく糖が吸収されて、血液として全身を循環していても、糖が細胞に到達できなければ、細胞レベルでは食事をとっていない状態と同じになってしまいます(細胞レベルでの飢餓状態)。
糖をエネルギー源として利用することができない全身の細胞は何とかして活動を維持するために、脂肪やタンパク質をエネルギー源として利用するようになります。その結果、体内に蓄えられていた脂肪が分解されていくために体重が減少していくのです。
以上が糖尿病で痩せる仕組みです。3ヶ月の間に5kg以上も痩せて“がんではないか?”と心配して病院を受診する糖尿病患者さんもいます。個人差はありますが、ダイエットをしているわけではないのに痩せてくる糖尿病の方は、高血糖が持続して細胞レベルでの飢餓状態になってしまっている場合があります。
かなり糖尿病としては重症の状態になりますし、大抵の場合、喉が渇く、水分をよくとる、尿が近い、全身がだるい、といった症状を伴います。
ただし糖尿病の治療のために食事や運動療法を頑張った結果、痩せてくることは異常なことではありません。むしろ食事や運動療法がうまくいっている証拠といってよいでしょう。
ケトン体
脂肪をエネルギー源として利用する過程でケトン体と呼ばれる物質が発生します。ケトン体が異常に出ているかどうかは、尿を検査紙でみると簡単に判定できます。
血糖値が高くて、尿のケトン体検査が陽性な場合、上記のように重症の糖尿病を意味しますので、病院の先生は入院を考慮します。なおケトン体の正確な数値を知るためには、血液検査が必要です。
ケトアシドーシス
体内にケトン体が増えすぎると吐き気や腹痛といった症状が現れます(この状態をケトーシスと呼びます)。ケトーシスもかなり重症の状態ですが、さらにケトン体が蓄積していくと血液が酸性化するケトアシドーシスという状態にまで進行します。
ケトアシドーシスでは意識が悪くなり、昏睡にまで至る場合もあります。合併症で困ることはあっても、命を失うことは少ないことが糖尿病の特徴ですが、このケトアシドーシスでは致命的となる場合があります。即座に入院して、インスリン療法を開始することが必要になります。
その他の痩せる病気
糖尿病以外にもしっかりと食事をとっているのに痩せてくる病気として、胃がんや大腸がんといった様々ながん、結核という感染症、甲状腺機能亢進症という甲状腺ホルモンが増えすぎる病気(バセドウ病も甲状腺機能亢進症のひとつです)などがあります。
糖尿病も含めてすべて早急に治療が必要になる病気ですので、心当たりがないのに痩せてきた場合は、なるべく早めに医療機関を受診して原因を調べてもらう必要があります。
まとめ
糖尿病で痩せてきたら重症です
糖は細胞のエネルギー源です
高血糖が持続すると体重が減少します
ケトン体
ケトアシドーシス
その他の痩せる病気