全身性の蕁麻疹に喉頭浮腫や喘鳴・息苦しさ、ショック・血圧低下、吐き気などの消化器症状を合併している場合には アナフィラキシー を生じている場合があり、救急車で 病院 を受診して手当てを受ける必要があります。
アナフィラキシーの原因には食物や抗生物質などの薬剤がありますが、原因がわからないことも少なくありません。βブロッカーを使用している人では治療薬剤が変わる場合があるので要注意です。
救急車で病院に行かなければならない蕁麻疹があります!
アナフィラキシー
蕁麻疹(じんましん)は食物や蜂に刺されるなどのアレルギー反応にともなう皮膚症状の1つですが、このアレルギー反応が強いとショックを生じ、最悪の場合死亡することもあります。
アナフィラキシーと呼ばれる病態で、近年学校給食によって児童がアナフィラキシーショックを起こして死亡した事例をご存知の方も多いと思います。
アナフィラキシーの皮膚症状には蕁麻疹、紅斑、膨疹などがあり、アナフィラキシーが疑われた場合は例え蕁麻疹であっても、ただちに救急車を要請して、大至急病院で手当てを受ける必要があります。
この項ではアナフィラキシーについて説明します。
アナフィラキシーの診断基準
2006年のJ Allergy Clin Immunol誌では次の3つの基準のうち1つを満たした場合にアナフィラキシーの可能性が高いとしています。
①皮膚・粘膜症状(唇やまぶたが腫れる症状が典型的です)、または両方の症状が急に出現し、少なくとも呼吸障害(呼吸困難や喘鳴(ぜいめい。息をするときにゼーゼー、ヒューヒューと音がする症状で気管支喘息発作のときにも出現します))、あるいは血圧低下・虚脱・失神・失禁のいずれか1つ以上の症状が持続する。
②アレルゲン(アレルギーの原因物質)と思われる物質に曝露後に、1急激に皮膚・粘膜症状、2呼吸障害、3血圧低下・虚脱・失神・失禁、4持続する消化器症状(腹痛、嘔吐)の2つ以上の症状をともなう。
③確定しているアレルゲン物質に曝露後、数分から2~3時間後に血圧低下。ちょっと難しいかもしれませんが、わかりやすく書き直すと、全身に出現した蕁麻疹にA喉頭浮腫(こうとうふしゅ。口やのどの違和感・痒み・痛み)、B喘鳴や息苦ししさ、Cショックや血圧・意識レベルの低下、D吐き気、下痢、腹痛などの消化器症状のうち1つでも合併していたら“ヤバイ”と思っていただいてよいかと思います。
BやCは誰が見ても重症ですから、救急車を呼ぶと思いますが、AやDにも注意が必要です。特に消化器症状はご存知ない方が多いので、この機会に是非覚えておいてください。
アナフィラキシーの原因物質
アナフィラキシーの主な原因には食物(卵、乳製品、穀類、甲殻類など)や薬物(造影剤(CT検査や冠動脈造影検査(いわゆる心臓カテーテル検査)などの時に使用されます)、抗生物質、局所麻酔薬など)、虫毒(蜂刺されなど)、予防接種の時に使用するワクチンなどがありますが、原因がわからないことも多く、5人に1人程度は原因が同定できない(=今後何に気をつければよいかがわからない)と言われています。
特に注意していただきたいものは薬剤です。たとえば病院で処方された抗生物質を服用した後、あるいは歯科で歯を抜くために麻酔をした後に上記のような症状が出現したときはアナフィラキシーである可能性があります。
βブロッカーを服用している人は要注意
アナフィラキシーでショックに陥った際の特効薬はアドレナリンで、通常は太ももの外側に筋肉注射して使用します。
アナフィラキシーでは急激にショックになることもあり、救急車で病院に行っても間に合わないこともあるので、患者さんによっては自分で注射できるアドレナリン製剤(商品名エビペン)を処方されている人もいます。
ところがアドレナリンはβブロッカーという薬を服用している人では、十分な効果を発揮できない場合があります。βブロッカーは心不全や高血圧に対して処方される薬剤で、したがって特に高齢者で服用している人が多い傾向がありますので注意してください。
お薬手帳などを利用して、自分が今どんな薬を処方されているのかをすぐにわかるようにしておくことが大切です。ちなみにこの場合はアドレナリンを使用した後に、グルカゴンという薬を追加して対応します。
まとめ
救急車で病院に行かなければならない蕁麻疹があります!
アナフィラキシー
アナフィラキシーの診断基準
アナフィラキシーの原因物質
βブロッカーを服用している人は要注意