大腸がん が進行して大きくなると 腸閉塞 を起こす場合があり、腹痛や嘔気、嘔吐を生じるために何らかの処置が必要となります。
治療法はステントを入れる内科的治療と人工肛門造設術をはじめとした外科治療に大別されますが、いずれの治療法も大腸がんそのものを治す治療ではなく、苦痛を軽減してQOLを高めることが目的で行なわれます。
大腸がんが進行すると腸閉塞となり、通過障害が起こります
大腸がんイレウス
大腸がんは初期には症状がありませんが、進行してがんが大きくなると腸閉塞(イレウス)を起こす場合があります。この状態は大腸がんイレウス、あるいは悪性大腸閉塞と呼ばれ、若い大腸がん患者よりも高齢患者に多いとされています。
別の言い方をすれば高齢者では進行してから見つかる大腸がんが多いとも言えます。大腸がんイレウスになると大腸の内容物が先に進めずに通過障害を起こし、腹痛や嘔気、嘔吐を生じます。
そのまま放置すると内容物で充満した大腸の壁が破れて、腸の内容物が周囲に漏れ出し、腹膜炎を生じることもあります。
特に高齢者の場合では、大腸がんが見つかっても手術をしない、あるいは心臓や肺など持病や全身状態が悪いために手術のリスクが大きく手術(根治手術)を行なうことができない場合があります。
しかしながら根治手術を施行しない方針の大腸がんであっても、大腸がんイレウスを生じた場合には、苦痛がとても大きいために何らかの処置が必要となります。大腸がんイレウスは大腸がんのさまざまな病態の中でも緊急処置が必要な病態の1つです。
以下では大腸がんイレウスの治療方法について説明しますが、大きく内科治療と外科治療に大別されます。いずれの治療法も大腸がんそのものを治す治療(根治術)ではありません。
したがって患者さんの苦痛を軽減してQOLを高める緩和医療の1つと言うことができます。
大腸がんイレウスに対する内科治療
以前は後述する外科治療が大腸がんイレウスの治療の基本でしたが、2012年に自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)と呼ばれる筒状の金網を大腸内に入れて閉塞部を押し広げる手技が認可(正確には保険収載と言います)されたことを機に、大腸がんイレウスに対する治療のアプローチは大きく変わってきています。
大腸癌ステント安全手技研究会のガイドラインではステントの適応を緩和治療目的の腸閉塞の解除、もしくは手術を前提とした大腸がんの狭窄解除としています。
その一方で、閉塞・狭窄している区間が長いもの、形状が複雑なもの、出血や炎症をともなっているものなどはステント治療の適応外とされています。ステント治療の利点は、全身状態が悪い場合でも手術を行なわずに閉塞を解除できることです。
また人工肛門を造らなくてもよいために、心理的・精神的な負担や、人工肛門を管理する手間を気にする必要がありません。さらに手術を行なわないために外科治療に比べて入院期間が少なくてすむことが多いというメリットもあります。
欠点として穿孔(せんこう)、逸脱、再閉塞、痛みなどの合併症が長期的にみると25%程度に生じるとされています。穿孔は最も危険な合併症で4%程度に起こると報告されており、その場合の死亡率は10%を超えるとされています。
大腸がんイレウスに対する外科治療
上記のステント治療の導入、普及によって変化はありますが、依然として外科治療、特に人工肛門を造る手術(人工肛門造設術)が大腸がんイレウスの基本的な治療手段であることに変わりはありません。
人工肛門造設術の利点は確実性が高い治療方法であること、手術侵襲が最小限で済むことなどがあげられます。
欠点としては手術にともなう合併症がゼロではないこと、人工肛門のトラブル(皮膚トラブルや傷口の感染など)がありますが、最大の問題点は患者さん本人やその家族の人工肛門に対する抵抗感であると思われます。
ただし多くの場合は人工肛門に対する漠然とした抵抗感であることが多く、人工肛門にすることでかえってQOLが向上することをご理解いただければ、クリアできることも少なくありません。
大腸がんイレウスに対する他の外科治療にはバイパス術や姑息的原発巣切除術などがあります。いずれの治療も症状の緩和を目的としている点は人工肛門造設術と同じです。
まとめ
大腸がんが進行すると腸閉塞となり、通過障害が起こります
大腸がんイレウス
大腸がんイレウスに対する内科治療
大腸がんイレウスに対する外科治療