蜂窩織炎 の症状として発熱、局所的な皮膚発赤、腫れ、痛みなどがあります。丹毒でも同様の症状が出ますが、丹毒では発赤している部位の境界がはっきりしていることが多いことに対して、蜂窩織炎では境界が不明瞭となります。
壊死性筋膜炎、痛風発作、下肢静脈血栓症、虫刺されなどでも蜂窩織炎と似た症状が出現することがあるので鑑別が必要です。特に壊死性筋膜炎は時として致命的になる場合があり重要な鑑別疾患です。
蜂窩織炎の症状とその鑑別疾患
蜂窩織炎の症状
蜂窩織炎(ほうかしきえん)は皮膚軟部組織感染症と呼ばれる病気の1つで、やはり皮膚軟部組織感染症の1つである丹毒(たんどく)とともに発熱、局所的な皮膚発赤(全身の皮膚が赤くなっているわけではなく、例えば右足だけ赤い、左腕だけ赤い状態です)、腫れ、痛みを特徴的な症状とする病気です。
ただし蜂窩織炎であっても痛みがはっきりしない場合や、当初は発熱だけで皮膚症状が明らかではなく経過をみているうちに皮膚発赤が出現してくるケースもあります。
また丹毒は皮膚の発赤している部位とそうでない部分の境界がはっきりしていることが多いことに対して、丹毒よりも深い皮下組織に感染する蜂窩織炎では境界は不明瞭となります。
蜂窩織炎の診断に特異的な検査は存在せず、丹毒など同様の症状を呈する病気を鑑別することが不可欠です。
ここでは蜂窩織炎の鑑別疾患として壊死性筋膜炎、痛風発作、虫刺さされを御紹介します(これら以外にも鑑別が必要な病気は存在します)。なお蜂窩織炎の詳細については他項を参照してください。
壊死性筋膜炎
壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)は蜂窩織炎や丹毒をみたときに必ず鑑別しなければならない病気で、経過によっては四肢の切断を要する、あるいは命を奪われることもある重篤な病気です。
やはり軟部組織感染症の1つで、蜂窩織炎よりもさらに深い組織である筋膜が細菌に侵されます。蜂窩織炎よりも激しい痛みを伴うことが多く、皮膚症状としては、水疱、斑状出血、軟部組織のガスの存在、皮膚の知覚麻痺などが蜂窩織炎との鑑別点になります。
しかしながら深い部分の感染症であるために、痛みが強いだけで外観だけで蜂窩織炎と区別することは必ずしも簡単ではありません。慎重に経過を観察し、疑ったら皮膚を切開して筋膜の壊死がないかどうかを確認する必要があります。
また壊死性筋膜炎はしばしば全身状態が悪くなることが特徴でショック、腎不全、意識レベルの低下を来します。皮膚所見に加えてこれらの全身症状があると、壊死性筋膜炎を疑うヒントになります。
抗生物質も使いますが、蜂窩織炎や丹毒のように抗生物質だけで壊死性筋膜炎を治癒させることは困難で、外科的に感染した組織を取り除くこと(デブリードマン)が不可欠です。
痛風発作
尿酸値が高くなると、尿酸血症が析出、関節に沈着して関節炎を生じる場合があります。これが痛風発作で、激痛を伴います。したがって痛風発作は細菌感染が原因ではありませんので抗生物質は不要です。
痛風発作が起こった部位に発赤、腫れ、痛みが生じます。発熱は必ずしもあるわけではありません。足に痛風発作が起こると蜂窩織炎と間違われる場合があります。
以前にも痛風発作を起している人、関節痛を繰り返している人、尿酸値が高いことがわかっている人では診断はさほど難しくありませんが、これらの手がかりがないケース(例えば初めての発作の場合)では鑑別が難しいこともあります。
下肢静脈血栓症
足の静脈(深部静脈)に血栓(血のかたまり)ができる病気で、やはり細菌が原因ではありませんから抗生物質は使用しません。血栓で血流が障害されると腫れ、痛み・圧痛、熱感などの症状が出現する場合があります。
ただし発熱や皮膚発赤を伴うことはまれです。血栓ができる静脈の部位によって、ふくらはぎや足首、太ももなどに症状が出ます。
血栓が血の流れに乗って運搬されて肺に到達すると肺梗塞を起こし、その結果致命的になるケースがある点で重要な病気です。診断には超音波検査(エコー)が有用です。
虫刺され
刺された部位が赤くなり、時に腫れや痛みを伴います。もちろん痒みを伴う場合も多いです。蜂窩織炎で見られる発熱や採血検査での白血球増加はふつう認めません。
虫に刺されたエピソードがあれば診断は容易ですが、例えば認知症がある高齢者の方などでは、エピソードが把握できないケースも少なくありません。通常抗生物質は使用しません。
まとめ
蜂窩織炎の症状とその鑑別疾患
蜂窩織炎の症状
壊死性筋膜炎
痛風発作
下肢静脈血栓症
虫刺され